幕間 香織side(中編)

愛花さんも、愛花さんの友達二人も、洋太君一人で来ると思っていたので、私の存在に驚いていたようだった

私が突然一緒に行くと言ったこともあるので、伝えられてなかったんだろう

「香織ちゃん?」

愛花さんが私にそう聞いてきた

昔の面影から、私のことがわかったのだろう

「お久しぶりです。愛花さん。小学校の時以来ですね」

私はそう言って、軽く会釈した

そして制服から、私が洋太君と同じ学校であると気付き、私に聞いてきた

私は「はい」と答えた

愛花さんは、どうして私がここにいるのかと問いただすと

「俺の彼女だ。香織ちゃんは」

洋太君が、愛花さんにそう答えた

愛花さんは驚いた顔をした

当然だと思った

愛花さんの友達の一人が「二股してたの?!」と立ち上がって、洋太君に問いただした

男の人が、とりあえず座るよう促すと、彼女は仕方なくといった感じで座り直した

洋太君は、そう思われても仕方ないと言ったあと、私が彼女になったのは、愛花さんに別れのメッセージを送った後だと言った

愛花さんに申し訳ない気持ちになった

そして洋太君は、愛花さんと別の高校に行った理由を話し出した

自分が愛花さんと比較されていることが辛かったことを

話してるうちに、その時の気持ちを思い出したのか、拳を握らせて震わせていた

私はその拳を、そっと握った

「…ありがとう」

洋太君はそう言った

だから別の高校に行くと決めた。自信をつけるために。

そう洋太は言った

その時はまだ、距離を置きたいだけで、別れようとは思っていなかったとも言った

そして入学式の時に、私に出会ったと伝えた

愛花さんは再び私に問いかけてきた

私は洋太君が今日、愛花さんに会うと言ったので、私もついてるいくことにしたと伝えた

「この度は申し訳ありません。愛花さん」

私はそう言って、彼女に頭を下げた

洋太君はそんな私に慰めの言葉をかけてくれた

愛花さんは嘘をついてないかと問いただした

私は洋太君とは、高校の入学式で出会ったと説明した

彼もそうだと言った

洋太君は、出会ってから今日までの経緯を話した

私は愛花さんに目を背けていた

本当に悪いことをしたと思って

そして愛花さんに、洋太君に好きかと問われた時、「はい」と答えたのは本当なのかと問われた

私は背けていた目を愛花さんに向けると、「はい。そうです…」と答えた

そして洋太君は、愛花さんとの関係にけじめをつけるために、愛花さんに別れのメッセージを送ったと彼女に言った

「申し訳ありません。愛花さん。洋太君を責めないでください。全部私が悪いんです」

私はそう言って、愛花さんに深々と頭を下げた

洋太君も続けて、愛花さんに深々と頭を下げた

沈黙が流れる

これが破られたら、洋太君はひどく責められるだろう

でも私が彼を守らないと

私が彼を支えないと

そんな時だった

「待て」

男の人の声だ

声の主は、愛花さんたちが間に入ってくれる人ということで呼んだ大人の人

洋太君が「まだ間に入るには…」と言った時、その人は「そんなのどうでもいい」と言った

『どうでもいい?どういうこと?』

私がそう思っていると、その人は「今イラついてムカついてる」と洋太君に言った

洋太君は自分のことだと思っていたし、ここにいる全員がそう思っていたはずだ

当然私も

でも違った

「俺が一番イラついてムカついてるのはお前の方だ」

その人は私を見て、はっきりそう言った










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