幕間 香織side(前編)

私は柊香織

北神学園高等部二年生

今私は、自宅の自分の部屋にいる

私はここ数日、あることばかりを考えてしまっている

「はぁ…」

私は思わずため息をついた

『なぜ忘れられないんだろう…。考えれば考えるほど、忘れられないなんて…』

私がこの数日考えてしまっていること

それはあのカラオケ店での一件だ



私の学園は中等部と高等部に分かれている

私は中等部から、学園に在籍している

そして中等部から高等部に進学し、その入学式の際、私は彼に出会った

『洋太君?』

小学校の時に一緒だった男子

その顔には、あの時の面影がある

そして彼は、私の初恋の人でもあった

でも彼には、仲良しの幼馴染みがいた

可愛くて元気な女の子

確か愛花という名前だった

『あの子もいるのかしら?』

そう思って、彼をずっと見ていたが、彼は一人だった

『なぜ一人なんだろう?』

そう思って、私は彼に声をかけた

「あの、もしかしてあなた、洋太君?」

人違いの可能性もあるため、私はそう言った

すると

「もしかして、君、香織…ちゃん?」

彼がそう答えてきた

「やっぱり洋太君だっだったんですね!お久しぶりです!!」

嬉しさのあまり、弾んだ声を出した

その後、洋太君と色々話をした

愛花さんとは恋人同士になったということだった

『やっぱりそういう関係になったんだ……』

二人が好き合っていたことは気がついていた

でもそういうのを聞くと、やっぱりショックだった…

だけど、そう答える洋太君の顔は複雑なものだった

わたしが「どうして一緒の高校じゃないんですか?」と聞くと

「色々あってね…」

そう言うだけで、詳しく話してくれなかった

『なんだか悲しい顔…』

そんな印象を受ける顔だった

それから私は、洋太君と友達付き合いをするようになった

知り合いが私以外いなかったこともあって、洋太君もそれをすぐに受け入れた

愛花さんとのデートの話では、少し憂鬱になるが、それは私個人の問題だ

でも、その話をする洋太君の顔は嬉しそうではなかった

事務的に話してるような、そんな印象があった

愛花さんとの交際が上手くいってないんだろうか?

もう1つ、私には気がかりなことがあった。

彼は放課後、遅くまで残って勉強している

運動系の部活に入ってからは、みんなが帰ったあとも練習している

どちらか1つならともかく、どちらもそんな感じでやっていたら、身が持たなくなる

私は洋太君が心配になってきた

だから私は彼に聞いた

「なんでそんなに無理して頑張るの?」と

そして洋太君は話してくれた

愛花さんと比較されることが苦痛になっていったこと

自信をつけるために、彼女と別の高校に行くことにしたこと

話し終わったあと、洋太君は

「情けないだろ?こんな男…」

そう、ポツリと言った

私は思わず、彼を抱きしめていた

こんなことはしちゃいけないのに

でも自分の気持ちを抑えられなかった

それから私と洋太君は、より親密な関係になった

放課後、洋太君の勉強を見てあげたり、部活が終わった後、一緒に帰ったり、お昼には彼のためにお弁当を作って、一緒に食べたりした

他の友達からは「付き合ってるの?」と言われたが、違うと言った

洋太君には、愛花さんという彼女がいる

どんなに親密になっても、それは変わらない

そう思っていた

でもある日、洋太君から

「俺のこと好きなの?」

そう聞かれた

一瞬、驚いた

でも私は無言で頷いて

「はい」

小さな声で、そう答えた

そう

私は洋太君が好き

それを聞いた洋太君は

「愛花との関係にけじめをつけるよ。返事はその後でする」

そう言った次の日、洋太君は愛花さんに『別れよう』とメッセージを送ったと私に言った

そしてその後

「俺と付き合ってほしい。香織ちゃん」

そう言われた

私は思わず

「はい」

そう答えていた

愛花さんには悪いと思ったけど、自分の気持ちに嘘はつけない

だって、ずっと好きだったんだから



そしてそれからしばらく経った頃、愛花さんから『会って話がしたい』というメッセージがきたとのことだった

愛花さんからしたら当然だろう

洋太君も、それに同意して『わかった』と返信したとのこと

その前から、愛花さんからは『別れよう』というメッセージを送ったあと、何度も彼女からメッセージや電話があったが、全て無視していたらしい

「やっぱり、会ってちゃんと謝らないとな」

洋太君はそう言った

愛花さんが『友達も一緒でいい?』と返してきたので、洋太君も『構わない』と返したそうだ

そして私も一緒に行くと言った

洋太君にだけ辛い思いをさせたくない

私も謝りたい

そう彼に言った

洋太君も、それを承諾してくれた

そして私たちは、指定されたカラオケ店に向かった

また愛花さんから、間に入ってくれる人を連れてくるとのことだった

なにかあった時のためだろう



そしてカラオケ店に着いて、彼女がいるというルームに入ると、そこには愛花さんがいた

洋太君から、愛花さんの写真を見せてもらったことがあるので、彼女だとすぐにわかった

そこには、友達と思われる二人の女子がいた

そしてもう一人、大人の男の人がいた

『この人が、愛花さんが言っていたという、間に入ってくれる人?』

愛花さんの親戚ってわけじゃない

それは洋太君の様子からもわかる

じゃあ、あの二人のうちのどちらかの知り合いということになる

でもこの人が、私にとって忘れられない存在になるとは、このときは思ってもみなかった
















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