第43話 咲耶side(後編)

「…というわけなの。二人とも」

わたしは卑弥呼と愛花に、木崎さんとのことを話した

フラれた現場を見られたこと

その次の日に出かけた時、偶然再会したこと

その他諸々、包み隠さず全部話した

「なんかにわかに信じられない話だね」

「愛花がそう思うのも無理ないね。でも嘘をついてる感じはしないし…」

愛花の言葉に、卑弥呼がそう答えた

「嘘なんかついてないから!他に隠してることもない!!全部本当!!」

話した自分が思うのもなんだが、二人が信じられないと思うのも無理はない

わたしだって、こんなの信じられないと思うだろうし

「フラれた現場を見られて、ひどいこと言われて」

「その次の日に、元カレたちからのプレゼントを売ろうと出かけたら」

「「その人と、また偶然再会したと」」

愛花と卑弥呼が交互に言って、最後は二人とも、同じことを同時に言った

「なんだかベタだね~」

「まぁ、そう言われるとそうだけど…」

愛花の言葉に、わたしはそう答えた

確かにベタだ。言われてみたら

「しかも、自分の用事に付き合わせる代わりに、その人の買い物に付き合ってあげて、お昼も一緒に食べて…」

「なんかデートみたいになってるね。それ」

卑弥呼の言葉に、愛花がそう言った

「デートじゃない!!そんなんじゃない!!絶対違う!!」

愛花の言葉に、わたしはそう反論した

「何顔真っ赤にしてんの?」

「べ…別に真っ赤になんかなってない!怒ってるからよ。きっと!!」

そう言ってきた卑弥呼に、わたしはそう答えた

「そう…」

なに?その『そういうことにしてあげる』って顔は!

「で、売ろうと思ってたヤツを、ごみ処理場の焼却炉に捨てられたと…」

愛花がそう言ってきた

「そうよ」

わたしがそう答えると

「でもさ、わたしが一番信じられないのは、そのあと連絡先交換したってところよ。しかも咲耶が無理やりそうしたんでしょ?」

当然の疑問を愛花が言ってきた

そう思うよね。普通

「なんでそんなことしたのよ?援交するつもりでってわけじゃないでしょ?」

これまた当然の疑問を、卑弥呼が言ってきた

「わたしにもわかんないのよ、ホント。なんか勢いっていうか、いつの間にかそうしてたって感じで…」

これは本当にわからない

いまだに、なんで自分があんなことしたのか、本当にわからないのだ

「……まぁ、嘘は言ってないわね」

卑弥呼、その見透かしたような顔やめて……

「でもさ。また会ったんでしょ?二人で。しかも咲耶から誘って」

「それに関しては完全にデートだね」

「ち、違う!!あれもデートじゃない!!デートなんかじゃないからー!!!」

二人の言葉に、わたしはそう反論した

「また顔真っ赤だよ咲耶。今度のは怒るところないと思うけど」

今度は愛花にそう言われた

わたし顔真っ赤になってるの?また?

愛花にまで、そう言われたら否定しようがないじゃない

「まぁ、あんたがあの人と連絡先交換してくれてたおかげで、愛花の件も大事にならずに済んだし。その辺に関しては感謝かな」

「うん。そうだね。そういえば咲耶、ちゃんと伝えてくれた?私の伝言」

卑弥呼がそう言うと、愛花がそう聞いてきた

「うん。ちゃんと伝えといた。『ありがとう』って。あっちはなんでそう言われるかわかんないみたいだったけど」

「ああ、いいよ。わかんなくて。ありがとう咲耶。ちゃんと伝えといてくれて」

わたしがそう答えると、愛花がそう言ってきた

「まぁさ。フラれた現場見られたのが、あの人で良かったんじゃない?危ない人だったら、なにされてたかわかんないよ」

「そうだよ。甘い言葉かけられて、変なとこに連れていかれてたらどうするの?」

卑弥呼と愛花がそう言ってきた

確かに

言われてみたら、確かにそうだ

あそこで優しい言葉とか甘い言葉かけられてたら、どうなってたかわからない

相手によっては、それこそどこかに連れ込まれて、なにされてたかわからない

木崎さんはひどいこと言ったけど、そういうことはしようとしなかった

「そう、だね」

「そうだよ」

二人の言葉にそう答えると、愛花がそう言った

「でもなんだかんだ言って、あの人のこと話してる咲耶、楽しそうだね」

「そうだね。ごみ処理場から元の場所に帰ることになった時のこと話す咲耶笑ってたよ。『実は方向音痴だったなんて呆れるよね』って言った時の咲耶の笑う顔見た時びっくりした。あんな顔して笑う咲耶初めて見たから」

愛花の言葉に、卑弥呼がそう言うと、愛花が「うんうん」と言って頷いた

そんな顔して笑ってたの?わたし?

「まぁこれで咲耶の方も解決したし、お開きにしますか」

卑弥呼がパンと手を叩いて、そう言った



ファストフードを出たわたしたち三人は、それぞれ家路につくことにした

「じゃあね、二人とも。そうだ。ちゃんと直接お礼しなきゃね。木崎さんに」

チクッ

あれ?

なんかちょっとチクッとした

愛花が『木崎さん』って言った時、チクッとした

なんでだろう?

「そうだね。あたしもお礼したいし。木崎さんに」

チクッ

まただ

またチクッとした

今度は卑弥呼が『木崎さん』って言った時に

なんで?

「う、うん。わたしもお礼したいし。三人でなんか考えようか?」

なんとか平静を装って、二人にそう言った

「そうだね♪じゃあ、またね」

そう言って愛花は、自分の家に帰っていった

そしてわたしも帰ろうとすると

「ねぇ、咲耶」

「ん?」

卑弥呼が呼び止めるような感じで言ってきた

「どうしたの?卑弥呼?」

「……なんでもない。じゃあ、また」

そう言って、卑弥呼も家に帰っていった

『どうしたんだろ?なんか複雑そうな顔してたような…』

あんな卑弥呼の顔は見たことがない

なんか気になる

「…まぁいいか…。わたしも帰ろ」

そう言って、わたしも家路についた

卑弥呼があんな顔をした理由は後になってわかることになる

でもその前に、わたしは気づいてしまうことになる

二人が『木崎さん』と言った時、チクッとした、その理由を
















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