第35話

『おい、どういうことだ?』

俺は隣にいる天王寺に、小さい声で聞いた

『わたしだって知らないわよ。彼一人で来るって思ってたし』

天王寺も、小さい声で答えてきた

「どういうこと?その子は誰?そんな子来るなんて聞いてないけど」

ボーイシュの女の子が、洋太と呼ばれた男子に聞いて来た

「そっちだって、知らない人連れて来てるじゃないか。しかも大人の人を」

男子が俺の方を見て、そう言った

「間に入ってくれる人を連れて来るって、愛花に連絡するように言ったはずだけど。愛花?」

ボーイシュの女の子が、ポニーテールの女の子に問いかけた

「うん。ちゃんとそう連絡したよ。洋太、その子、もしかして、香織ちゃん?」

ポニーテールの女の子が、そう答えた

どうやら隣の女子を知ってるみたいだが、なんでこの子がここにいるのかがわからないみたいだ

混乱した顔をしている

「お久しぶりです。愛花さん。小学校の時以来ですね」

男子の隣にいる彼女は、そう言うと、軽く会釈した

黒髪ロングの清楚系

天王寺や他の二人とも違う雰囲気を持った女の子だ

『いいところのお嬢様か?』

「その制服、洋太の学校の制服だよね?香織ちゃん、洋太と同じ学校なの?」

「はい」

ポニーテールの女の子の問いに、彼女はそう答えた

『おい。ヤバいぞ。この展開』

「どうして香織ちゃんがここにいるの?ねえ、答えてよ」

ポニーテールの女の子が、震えた声で聞いていた

すると

「彼女だ」

「えっ?」

「俺の彼女だ。香織ちゃんは」

男子がそう言ってきた

ポニーテールの女の子はもちろん、天王寺もボーイシュの女の子も、その言葉に驚きを隠せなかった

俺自身もそうだ

そうかもしれないとは思ってたが、こうもあっさりと言うか?普通

「ちょっと!!どういうことよ!!もしかしてあんた、二股してたの?!」

天王寺が立ち上がって、男子に聞いてきた

当然か

「おい。とりあえず座れ」

俺が天王寺に、そう促すと

「でも!!」

「今ここで騒ぎ立てるな。今はまだ早い」

ここで騒ぎ立てたら、元も子もない

止めたとしても、色々と引きずって、結局何も解決しない

ボーイシュの女の子も俺と同じ気持ちなのか、天王寺を見て、軽く頭を振っている

『我慢して』

そう訴えてるんだろう

「………」

天王寺もそれを察したのか、再び座り直した

納得してないって顔だが、まぁいい

「そう言われても仕方ないね。でも香織ちゃんが彼女になったのは、俺が別れようって愛花にメッセージを送った後だ」

男子はそう答えた

『後付けだろ、そんなもん』

黒髪ロングの女の子は、申し訳ないような顔をしている

『イラつく…』

「どういうこと?全然わかんないよ。もしかして私と別の高校行くって言ったのって、これが理由?洋太、香織ちゃんといつから会ってたの?答えてよ」

ポニーテールの女の子は、半泣き状態の顔で、男子に問いただした

すると

「それも理由の一つだね。でも本当の理由は別にある」

「別?」

ポニーテールの女の子は『えっ?』とした顔で男子を見た

そして

「君だよ愛花。俺は君と離れたくて、別の高校に行くって言ったんだ」

男子は、ポニーテールの女の子にそう答えた



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