第33話 咲耶side④

わたしはあの時とは違う、重苦しい気持ちで登校した

あの時は、カレシ連中との縁を断ち切れた気持ちがあったからまだマシだったが、今回は違う

『愛花とどんな顔して会えばいい?』

そんなことばかり考えてしまう

その時、愛花の姿を見かけた

声をかけようとしたその時、愛花の隣に誰かがいた

卑弥呼だった

二人で何か話をしてる

わたしは、何故かそこに入り込むことができなかった

自分と二人の間に、なにか壁のようなものを感じたからだ

『わたし、ホントにのけ者にされてる感じだ…』

そんな寂しさを感じたのも生まれて初めてだ

『こんなんでわたし、頑張れるかな?』

そんな不安が胸をよぎった

昼休み

場所は中庭

わたしはまたここででお昼を食べている

でも前と違って、今回は一人だ

自分と二人に感じる壁のようなものが辛くて、二人には声をかけずに一人ここに来た

『わたしって、あの二人くらいしか友達いなかったんだな…』

こんな風に一人でいると、そんな風に思える

「寂しいなぁ…。ホント」

そんなことを口にしていると

ぶるぶる

スカートの中のスマホが震えた

『木崎さんかな?』

なんでそう思うのかはわからない

でも、少しそれを期待している自分がいる

わたしはスカートからスマホを取り出し、画面を見た

卑弥呼からだった

「卑弥呼?」

卑弥呼からのLINEメッセだった

内容は

『放課後、また屋上前の階段に来て。愛花も一緒だから。いい?』

『あれから何かあったのかな?』

そんなことを思ったが、今この機会を逃したら、一生後悔する

そう思ったわたしは

『わかった。行く』

そう返信した



そして放課後

屋上の階段前

卑弥呼と愛花はもう先に来ていた

ぎこちなくて、重苦しい空気を感じる

そんな時

「来てくれてありがと。まずは用件を話すね」

卑弥呼が口を開いて、そう言った

勘の鋭い卑弥呼のことだから、この空気を察して、自分から楔を切ったんだろう

「うん。わかった」

わたしはそう答えた

少し怖いけど、ちゃんと聞かないとわからないから

「愛花の彼氏のことだけど、あのあと愛花が彼に会って話したいってメッセ送ったらしくて。返ってくるか不安だったけど『わかった』って返信がきたって。そうよね?』

卑弥呼の隣にいる愛花が、コクりと頷いた

「そう…なんだ」

『わたしには言ってくれないんだ…』

そう思っていると

「それでね、一人じゃ不安だから、彼に『友達も一緒でいい?』って返したの。そしたら彼も『構わない』って返してきて。場所はまだ決めてないけど、今日これから会うことになって。だからあたし…」

「わたしも行く!!」

卑弥呼の言葉が終わらないうちに、わたしはそう言っていた

卑弥呼も愛花も、わたしがそう言ってくるとは思っていなかったのか、驚いた顔をしている

「わたしも一緒に行く!!連れてって!!」

わたしにできることがあるかわからない

邪魔になるだけかもしれない

でも

それでもわたしは

「お願い愛花!わたしも一緒に連れてって!!お願い!!」

わたしは愛花に、深々と頭を下げてお願いしていた

「さ…咲耶」

愛花が戸惑った口調で、わたしの名前を呼んだ

「咲耶。とりあえず頭上げて。わかったから」

それを見ていた卑弥呼が、そう言ってきた

わたしは頭を上げると

「卑弥呼。それじゃ…」

「ええ、一緒に行こ。あたしたち三人でね」

そう言われたわたしは、愛花の顔を見た

愛花は戸惑った顔をしていたが、コクりと頷いた

「ありがとう!二人とも!!」

そう言ったわたしは、思わず泣いていた

嬉しくて泣いていた

「咲耶…」

「でね、一緒に行くのはいいんだけど、ちょっと問題っていうか、不安なことがあるんだよね」

戸惑っている愛花を尻目に、卑弥呼がそう言ってきた

「何?不安なことって?」

わたしがそう聞くと

「なんかね、その彼の話の内容によっては、わたし、そいつ殴っちゃうっていうか、警察沙汰になりそうなくらいボコボコにしそうなんだよね。そんなことにならない方がいいんだけど、あたし、こういう時の勘って、必ず当たっちゃうんだよね」

卑弥呼が、指でポリポリと顔を掻きながら言った

感の鋭い卑弥呼が言うんだから、その可能性はある

わたしだって、話の内容によっては、そいつを殴るかもしれない

でも警察沙汰になることだけは避けたい

そんなことになったら、愛花がもっと可哀想だ

「だからね、間に入ってくれる人っっていうか、そういうことになる前に止めてくれる人が必要かなって。愛花とも話したんだけど」

卑弥呼がそう言うと

「私も卑弥呼もそういうこと頼める人いなくて。私もそんなことになるの嫌だし…」

ずっと黙ったままだった愛花が、ようやく口を開いた

「そうだね…」

わたしたちの学校だけかもしれないけど、ウチは男子グループと女子グループが絡むことは滅多にない

どちらかが、合コンしようとか誘ってこない限り、絡むことなんてない

男子は男子

女子は女子

そんな風になっている

『下手に適当な男子グループに頼んだら、どんな見返り求められるかわかんないし…』

そんなことを考えていると、一人思い浮かんだ

『頼りになるかどうかわかんないけど…』

背に腹は変えられない

二人に聞いてみよう

「ねぇ、その人って、別に学校の男子じゃなくてもいいんだよね?」

「う、うん」

「この際、それでもいいけど…。咲耶、心当たりあるの?」

わたしがそう聞くと、卑弥呼が問いかけてきた

まぁ当然か

「うん。すごい年上の人なんだけど。その、親戚のおじさんで、最近こっちに越して来たんだ」

すごい年上でおじさんなのはホントだけど、親戚じゃない

でも、詳しい説明とかできないし

「頼りになるかどうかはわかんないけど…」

「…まぁいいわ。その人に頼も。愛花もそれでいい?」

「うん。わかった。それでいい」

卑弥呼の問いかけに、愛花がそう答えた

二人とも、完全に納得できてないようだけど、なんとか了解してくれたようだ

「それじゃ、彼と会う場所決めないと。決まったら、その人に連絡お願いね。咲耶」

「わかった」

わたしは卑弥呼に、コクリと頷いた

わたしは思い浮かんだのは、もちろんあの人

木崎達也さんだった







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る