激怒編

第29話 咲耶side①

その翌日

愛花の様子は、さらにおかしくなっていた

表情は暗く、わたしと卑弥呼が朝、声をかけても、全く気づかずに、一人で行ってしまった

『いつもなら、愛花の方が真っ先に声かけてくるのに…』

いつも元気な顔しか見せない愛花が、どうしたんだろ?

それは授業中も同じで、先生の話を全く聞いておらず、怒られっぱなしだった

学級内で常に上位、学年全体でも優秀な成績なだけあって、いつも授業態度は真面目な愛花なのに

昼休み、いつも一緒にお昼ごはん食べるのに、愛花はいつの間にか姿を消していた

「なんかヤバいね。そのうちってわけにはいかない感じがする…」

「うん。そうだね…」

わたしと卑弥呼は、二人でそう話していた

昼休みが終わって、帰ってきた愛花の顔は、今にも泣き出しそうな顔だった

午後の授業も午前の授業と同様、上の空

また先生に怒られっぱなしだった

わたしも、そんな愛花が心配で様子を見てたことで、授業をちゃんと聞いておらず、先生に怒られた

まぁ、わたしのことはいいか

わたしと卑弥呼は、帰ろうとする愛花を呼び止め、強引に屋上前の階段に連れ出した

屋上は、原則立ち入り禁止

でも、「一緒に帰ろうと言っても逃げられる」と、卑弥呼が言ったので、ここに連れ出そうということになったのだ

「な、何かな?二人とも。私、早く帰りたいんだけどなぁー」

「愛花、昨日もだけど、今日はもっと変だよ?何があったの?」

わたしが、そう聞くと

「悩み事だってことはわかってる。ちゃんと話して」

卑弥呼が続けて、そう言ってきた

「悩み事なんてないって言ったじゃん。ハハハ。それにそのうちって言ってたのに、聞くの早くない?」

「そのうちじゃ取り返しつかなくなると思って、今聞いてるの。答えて」

「そうだよ愛花。わたし達友達でしょ?」

わたしがそう言うと

「………」

愛花がボソリと、何かを言った

「何?愛花。聞こえないよ?」

すると卑弥呼が、わたしを静止するような目で見た

愛花の言葉が聞こえたのか

それとも、それが何なのか察したのか

わたしは、それ以上言うのを止めた

「とにかく話して。ホントは辛くてしょうがないんでしょ?だから…」

すると、愛花の目から涙が溢れ出した

今まで我慢してたのが、一気に溢れ出た感じだ

「……たの」

「えっ?何?」

「別れようってメッセがきたの!!」

愛花の口から、一際大きな声が出てきた

それはまるで、ううん、間違いなく怒声と言えるものだった

『こんな声出す愛花、初めて見た…』

わたしは、今まで見たことのない愛花に驚いていた

「彼氏から、一方的に別れようってメッセがきたのよー--!!!!」

そう大声で叫んだ愛花は、その場に座り込んで、思いきり泣き崩れた




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