第25話
模型店で買い物を済ませた俺たちは、帰り道に入っていた
天王寺は、バックに入れたガンプラを、出しては見てを繰り返している
「初めて買ってみて、どうだった?」
天王寺にそう聞くと
「普通に買えたって感じだったわね。もっと緊張しちゃうかと思ったけど、店員さんも普通に対応してたし。なんか男子も女子も関係ないって感じだった」
「そりゃそうだろ?そういうのに、男も女も関係ない。そんなこと持ち出したり、気にしてたりしてるから、距離とか偏見とかが生まれるんだよ」
「そんなもんなの?」
「そんなもんだよ」
そう答えると、俺は続けて
「でもな、それが一番難しいんだよ。気がついてみると簡単なことだったんだけど、それに気づくのが、すげぇ難しいんだよ。ホント」
そう言うと、俺は天王寺に
「天王寺、またお前が言ってくるだろうから言っとく
。俺はお前に同じ趣味を持ってほしいとか、同じものを好きになれとは言わない。だから安心しろ」
そう言ってやった
こいつ、オタクになるつもりはないって言ってたからな
「何?突然?確かにこれ一回きりだって言ったけどさ、普通、これをきっかけに、こういうの好きになってほしいとか思うもんでしょ?そういうの思わないの?」
まぁ、そう思うよな。俺もそうなってほしいとか、少しは思う
「俺はな、俺の好きなものがどんなのか興味持って、少し知りたいなって思ってくれたらいいんだよ。特に好きな人とかにはな」
なんか最後のは余計だったような…
『まぁいいか』
さらに、俺は続けて
「そういうのって、なんか相手を縛りつけるみたいな、自分好みの人間にしようとか、そんな感じがするんだよな。そんなことして、その人が辛い気持ちになったり、重い感じになったら嫌だろ?その人がその人でなくなっちまうみたいでさ」
そして最後に
「フラれるとか別れるとかより、そっちの方が辛いし悲しいんだよ、俺は」
そう言った
『今、俺はどんな顔してるかな?』
そう思っていると
「ふーん、そうなんだ。やっぱあんたって…」
天王寺がそう言ってきた
「んっ?なんかちょっと赤くなってないか?顔」
「気、気のせいよ!気のせい!!」
それならいいんだがな
「と、とにかく!今日はありがと。家に帰ったら、作ってみるわ。そうじゃないと、あんたがなんで夢中になるかわからないから!じゃあね!!」
「ああ、じゃあな。天王寺」
そう言って、天王寺は家に帰っていった
それを見送りながら、俺はふと思った
『んっ?なんだかんだで、またデートみたいになってないか?!いやいや違う違う!!』
そんな考えを振り払いながら、俺も家に帰ることにした
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