第24話

「さぁ着いたぞ」

俺と天王寺は、あの時来た、模型店の前に来た

「ん?何だ?一度来ただろ?何緊張してる?」

横にいる天王寺は、あの時と違って、明らかに緊張した顔をしていた

「き、緊張なんてしてないわよ。一度来てるんだから!でもさ…」

「でも?」

「あの時と違って、いざ自分自身が買うってなると、なんか、こう、『おかしく見られないかな?』とか、そんなこと考えちゃうのよ!」

そうだな

服とか化粧品やら買うのとはわけが違う

ああいうところなら、天王寺も初めての所でも、緊張せずに買えるだろう

だが、ここは本来、女が1人で入れるで入れる所じゃない

前にここに来た時もこいつが言ってたが、疎外感みたいなのを感じるからだろうな

まぁわからなくもないな

『俺も、女の化粧品売場なんて、1人で入れないだろうし』

だが、いつまでもここに立ってるわけにもいかない

「さぁ入るぞ。俺がついてってやるから」

ポン

「キャッ!何、背中叩いてんのよ!!このセクハラ中年男!!言われなくても入るわよ!行くわよ!!」

そう言うと、意を決するように店に入っていった

「戦場に行くわけじゃあるまいし…」

そう、ボソッと呟くと、俺も店の中に入っていった


店に入ると、天王寺は、ガンプラが並んである場所に向かっていた

たどり着くと、あの時と同様、並んであるガンプラをまじまじと見ている

「やっぱ、どれもおんなじように見えるわね。でも微妙に違うっていうのはわかるのよね~」

『あの時と同じで、興味津々だな。まぁ微妙に違うっていうのは、わかるようになってるな』

俺から見たら、どれも違うんだが

「ねぇ木崎さん。どれがいいと思う?」

「んー、そうだな……」

こいつに作れそうなのは……

「待って!やっぱ自分で選ぶ!!」

天王寺が突然、俺にそう言ってきた

「自分が買うんだから、やっぱ自分で選ばないと。木崎さんはそこで待ってて!」

「あ、ああ」

確かに自分が買うんだから、自分で選ぶのが一番だが…

『作れるやつにしとけよ』

そう思っていると、天王寺がガンプラの箱を持ってきて

「これにする!!」

と言って、持ってきたのは

『ちょっと待て』

これって…

RGじゃないか!!

『作れないこともないだろう、人によっては。だけど……』

「それは止めとけ」

俺は天王寺にそう言った

「ええ~?!何でよ!!選んだのはわたしなんだから、いいじゃん!!」

「確かにそうだけど…。一回きりにしても、それは止めとけ。時間かかるから。お前って、根気ある方じゃないみたいだし」

ドカッ!

足を蹴ってきた

「そんなこと、何であんたにわかんのよ!!わたしのどこが根気ないっていうのよ!!」

「そうやってすぐ足蹴るところだよ。そこのどこに根気あるっていうんだ?」

「!!」

ぐうの音も出ないって顔だな

「じゃ、じゃあ、そんなこというなら、木崎さんが選んでよ!つまんないやつだったら、許さないわよ!!」

「ハイハイ」

結局、俺が選ぶのか……

でもなんだかんだでこいつ…

『結構ノリノリだな』

嬉しい気持ちはあるが、やっぱり複雑な気分だ

素直に喜べない

何故なら…

『まぁいいか。こいつに作れそうで、手頃なのは。これだな』

俺は選んだガンプラを、天王寺に渡した

それは

「何これ?ずいぶん小さいけど…。これもガンプラってやつ?SDって書いてあるわね」

そう

俺が選んだのはSD

HGでも良かったが、一回きりってことにするなら、これがいいだろ

「それはパーツ数も少ないしな。初心者向きだ。一回だけで済ませるなら、それがいいだろ」

天王寺は、なんか不満そうな顔を浮かべたが

「まぁそうね。一回きりだし、これにするわ。なんかこれ、可愛い感じがするし」

どうやら、これで納得したようだ

「じゃあ、ニッパーも買わないとな。あとシール貼る時に使うピンセットもいるな」

「へぇ~。そんなのもいるんだ」

「まぁな」

『ホント、なんだかんだ言いながら楽しんでんな、こいつ』

こいつの笑ってる見てると、そう思う

「んっ?何?」

笑ったままの顔で、そう聞いてきた

ドキッ

「いや、なんでもない」

一瞬、ドキッとしてしまった

『何ドキッとしてんだ。俺はロリコンじゃないっての』

俺は自分に、そう言い聞かせていた


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る