第22話 咲耶side②

パクパク

木崎さんとの電話を終えたわたしは、今リビングで晩御飯を食べている

電話を終えて、1階に降りた時、ちょうど晩御飯ができたところだった

『そういえば木崎さん、晩御飯、コンビニのお弁当だって言ってたわね。いつもそんなんばっかりみたいだし』

お母さんが作った晩御飯を食べながら、そんなことを考えていた

『歳、考えなさいよ。今までは大丈夫だっただろうけど、今年でアラフォーでしょ?倒れても知らないわよ?』

パクパク

『ていうか、なんであんな奴の心配してんの?わたし。関係ないじゃん』

そう。関係ない

関係ないはずなのに

『なんで気になっちゃうんだろ?』

最近は、自分でもわからないことばっかりな気がする

あんな奴

しかもアラフォーの中年男と連絡先交換なんて

『まぁ、なんとなくでしょうね、なんとなく。あんなの恋愛対象外だし、あっちだってそう思ってるはずよ。うん』

そうそう。そうに違いない。うん

『でも、また言われたわね。今度はメッセじゃなく電話で』

『そんなの期待してない』

あの時とは意味が違うだろうけど…

ピタッ

わたしは、箸を動かす手を止めた

一つの考えが浮かんだからだ

『あの時の『期待してない』ってメッセが、わたしに魅力ないって意味なら、わたしが料理できなさそうに見えたから?!今日の電話の『期待してない』もわたしが料理できないって感じたから?!』

ワナワナ

箸を持つ手が震えた

次の瞬間

バクバグバク

目の前のご飯とおかずを、勢いよく食べていた

『ふっざけんじゃないわよ!なんであんたなんかに、そんな風に思われないといけないのよ!!あのぼっち飯中年男!!!わたしだって、わたしだって…』

勢いよく食べていた手が止まった

その訳は……

『あんたの思ってる通り、料理できないわよ!!全っ然ね!!!』

そう

わたしは料理が下手だ

この上なく

家庭科の実習で

『咲耶!お塩とお砂糖、間違えてる!!』

『火が強すぎ!焦げちゃう!!ていうか、焦げてる!!』

愛花から、色々注意とかされたりするが、いつも散々な結果になる

『咲耶、あんたって、作るより食べる派?』

卑弥呼から、そう指摘された

その通りだ

料理上手の愛花はともかく、卑弥呼でさえ、ちゃんとしたのがそれなりに作れる

だけど、わたしは全然だ

以前は気にしてなかったが、今は違う

『あいつにそう思われてると思うと、すっごい腹立つ!!』

バクバグバク

『大体あんたはどうなの?!昨日メッセ送らなかった理由は、ガンプラだっけ?あれ作るのに夢中だったから?!ふざけんじゃないわよ!!』

気がつくと、ご飯とおかずを全て食べ尽くしていた

わたしは、横に置いてあるジュースを飲み干すと

バンッ

「ご馳走さま!!」

お父さんとお母さんが、目を丸くして、こちらを見ている

「あ、ああ」

「あ、あの、大丈夫、咲耶?あなた最近変よ?」

「全然大丈夫!!じゃあわたし、部屋に戻るから!!」

わたしは、スッと椅子から立ち上がると、さっさと二階の自分の部屋に向かった



バタン

自分の部屋に入って、ドアを閉めると、机に置いていたスマホを取り、ロックを外し、LINEを開いた

そしてあいつ、木崎さんにメッセを送った

内容は

『今度の休み、二度目に会った時に入った喫茶店で待ち合わせ!時間は後日改めて!!反論も断りも禁止!絶対予定空けといて!!』

送信

「既読になってるかどうかは、あとで確かめる」

トン

わたしは再び、スマホを机に置いた

「あいつは方向音痴だから、待ち合わせ場所はあそこがいいわ。下手に指定したら、道に迷って来られない可能性高いし」

そしてわたしは、自分に言い聞かせるように

「これはデートじゃない。デートじゃない。デートなんかじゃない」

そう何度も言った

あいつを今度の休みに誘った理由

それは

「わたしより夢中になる、ガンプラってやつをどんなのか知る!!」








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