第21話

『ピロロン』

「ん?」

仕事を終えて、家に帰ってきた俺のスマホから通知音が鳴った

「天王寺からだな」

仕事以外で、俺に連絡してくる奴などいない

それ以外で思いつく奴がいるとしたら、あいつぐらいだ

「何の用件だ?」

俺は天王寺からのLINEメッセージを見た

『メッセありがとう。学校にはちゃんと行けた。心配してくれてありがと』

ちゃんと学校には行けたんだな。なんか安心した

『それなら良かった』

そう返信した

すると

『電話してもいい?ちょっと話したいことがあるの』

俺の返信に、そう返してきた

『話したいこと?なんだ?一体?』

そう思いながらも俺は

『別に構わないぞ』

そう返した

すると

トゥルルル

天王寺からの電話がきた

『早いな』

そう思いながらも、俺は天王寺からの電話を始めた

「もしもし」

『もしもし木崎さん?お昼ありがとね。メッセくれて』

「ああ、ちょっと気になってな。で、どうだった?」

『んー、最初はちょっと憂鬱だったな。でも友達と色々話したら、なんかスッキリした。もう大丈夫かな』

「そうか」

こいつ、そういう友達いるんだな

俺には、そういうのがいないからな

『友達』っていう定義自体、よくわからないやつだし

『木崎さん、昨日メッセこなかったね。どうして?』

「どうしてって」

なんでそんなこと聞くんだ、こいつ?

『送ろうと思ったけど、送れなかった』

そんなことを言えるはずもなく

「ガンプラ制作に集中してたんだよ」

そう答えた

別にウソってわけじゃないしな

『ガン…プラ?ああ、あれか。あれってそういうんだ。ふーん』

「なんだ?興味あるのか?」

『そ、そんなわけないでしょっ?!言っとくけど、わたしをそっちの世界に引き込もうなんて思わないでよ!!』

「安心しろ。そんなつもりはない」

『へー、なんか意外』

意外…か

まぁ確かにそうだな

こういう時、オタクなら、自分の好きなものを喋りたててくるもんだと思うだろうな

だが、俺はオタクだが、そういうことはしない

少なくとも俺は

『だって、そんなことして最悪……』

いや、やめておこう

『まぁいいや。それより木崎さん、もう晩御飯食べた?』

「いや、まだだけど」

『わたしもまだなんだ。もうすぐだと思うけど。木崎さん、晩御飯、何食べるの?』

「ん?コンビニの弁当だけど」

『ええっ?!自炊とかしないの?もしかして、いつもそんなの食べてるの?!体大丈夫?』

なんでお前に、そんなこと言われないといけないんだ?

だが、こいつの言うことにも一理ある

毎年の健康診断でも、異常があるとか、そういうことを言われたことはない

だが確かに、今まで大丈夫だったっていうのは、ちょっと不思議だ

けれど、言われっぱなしっていうのも、なんか癪だ

「そうだな。こういう時、料理上手な彼女がいてくれたらいいなって思う。ちなみにお前のことを言ってるわけじゃない。料理下手そうだしな、お前」

からかい口調で、そう言ってやった

『こいつが料理できるかどうかわからないのにな』

すると

『う、うるさい!!この彼女無し中年男!!わたしが料理できるかどうかなんて知らないくせに!!誰があんたなんかに料理なんか作ってあげるもんですか!!』

「安心しろ。そんなの期待してない」

『!……』

俺がそう言って、少し押し黙ったようになると

『も、もう晩御飯の時間みたいだから、そろそろ切るわ!じゃあね、一生独身中年男!!』

「ああ、じゃあな、天王寺」

俺がそう言うと、電話が切れた

「まぁ元気そうで何よりだな。あれなら、もう大丈夫か」

でも考えてみると俺

『あんなに人と、しかも女とあんなに話したことってあったか?』

いや、昔あったな

確か……

「いや、いいか別に」

そして俺は、机に置かれたコンビニ弁当を食べ始めた



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