第20話 咲耶side①
わたしは今学校にいる
そして今は昼休み
いつもなら、教室で友達と一緒にお弁当を食べているが、今日は中庭だ
「ごめんね二人とも。わたしのワガママに付き合わせちゃって」
「まぁ、咲耶も思うところがあるんだし」
「そうそう。気にしない気にしない」
わたしの左右手前に座る友達二人がそう言ってくれた
左にいる子の名前は、相澤卑弥呼
ボーイッシュな髪型で、どこか王子様のような雰囲気をさせている
そのためか、男子よりも女子に人気がある
そして空手二段の有段者
ちなみに、浩介の浮気現場を写真に撮ってわたしに送ってくれたのは彼女だ
右にいる子の名前は松永愛花
ポニーテールの髪の元気な女の子
学級内でも上位の成績で料理上手
彼女が持っているお弁当も自分で作った手作り
前に食べさせてもらったけど、すごい美味しかった
別の高校に彼氏がいるらしいけど、詳しくは知らない
写真見せてほしいと言ったことがあるが、恥ずかしいという理由で見せてくれなかった
今のわたしには羨ましいかぎりだ
「なんか教室でお昼食べる気になれなくて…」
あいつ、木崎さんのおかげで元カレたちとの縁を断ち切ってスッキリした気分になったが、学校に行くと少し憂鬱になる
浩介の顔は見ずに済んでいるが、他の男子たちから自分が都合のいい女だと思われていると考えると、なんか辛い
『縁は断ち切れても、そういうしこりは残ってるな…』
わたしは意を決して二人に聞いた
「ねぇ、二人は知ってた?わたしが男子から一種のステータスで、別れても自慢できる女だって思われてたこと」
すると二人は、お互いの顔を合わせて
「まぁね。男子がそういう噂してるっていうのは聞いてた」
「うん。なんか陰でそういう話して『バカな女』って言ってる女子がいたの見たことある」
『ああ、やっぱりか……』
そう思った
その事実を知った上で学校に行くと、みんなの視線がいつもと違って感じた
入学当初は違っただろう
都合のいい女だと見られてなかったはずだ
でも今は
『そう見られてるんだな。わたし』
続けて、わたしは二人に聞いた
「じゃあさ、どうして黙ってたの?わたしに?」
すると愛花が
「話したって信じないって思ったんだよ。咲耶って何気にプライド高いし。こっちの言うこと、ちゃんと聞いてくれないと思って……」
続いて卑弥呼が
「咲耶って、良くも悪くも自分が周りにどう思われてるかとか考えないから。言っても信用してくれないと思ったんだよ」
そう言ってきた
確かにね
あんなフラれ方しなきゃ信じなかっただろうな。わたし
「ていうか咲耶、どうやってその事知ったの?あんたのカレシの浮気写真送ったあたしが言うのもなんだけど心配したんだよ。あの後、全然連絡なかったし。何かあった?」
卑弥呼がそう聞いてきた
「ああ、実はね……」
わたしはあの後、浩介を呼び出してその浮気写真を突きつけて問いただしたこと。
浮気を悪びれることなく、すんなり認めたこと
わたしをフッたあと、わたしと付き合うのは一種のステータスで、別れても自慢できると思われてると言って去っていったことを話した
ちなみに、その現場を中年男、木崎さんに見られたことは話さなかった
『さすがにこれは話せないな』
そう思ったからだ
「ひどい目にあったんだね……」
愛花が心配げにそう言ってきた
「なんだったら、あたしが正拳突き食らわせてきてあげようか?前歯の2、3本は叩き折れるよ。その気になれば鼻も」
卑弥呼が続けて、そう言ってきた
さすがは空手の有段者
「ああ、大丈夫大丈夫。アイツを含めた、これまでのカレシ連中との縁は断ち切ったから。休みの日にね。だから心配しなくていいよ」
次の日が休みじゃなかったらお願いしてたな。殺してほしいって言ってただろうな。きっと
「今日はそれ聞きたくて、教室じゃなくて中庭で食べようってことにしたの。そういうの確かめないと、縁を断ち切っても学校行きづらいから」
実際、学校に行く時、気が重かったし
でもなんか、二人と話してスッキリした
そんな気分だ
すると突然愛花が
「可哀想に。ホント辛い目にあったね。愛花ちゃんの胸でたっぷり泣いていいよ🖤」
グイッ
わたしの顔を自分の胸に押しつけてきた
「ちょっと。苦しいって。愛花」
「何よぉ。愛花ちゃんの胸じゃ不満なの?そりゃ咲耶より胸ないけど。さてはやっぱり自分の胸の方が大きいなっとか思ってるなぁ」
グイグイ
さらに胸を押しつけてきた
「思ってない思ってない。ホントに」
確かにわたしのFカップの胸には及ばないけど
ぶるぶる
突然、わたしのスカートの中のスマホが震え出した
『なんだろう?』
わたしは愛花の胸から顔を離して、少し距離を置くとスカートからスマホを取り出した
『LINEのメッセ。相手は…木崎さん?』
木崎さんからのメッセだった
『そういえば、あれ以来メッセ送ってこなかったわね。昨日も休みだったから、なんかメッセ送ってくるんじゃないかと思ってたけど全然だったし。こっちから連絡しないと相手しないってこと?!あの中年男!』
それにこのプロフィール画像に使われてるやつ…
『これ何?!あいつのスマホのホーム画面に使われてたロボットと同じ……いや、なんか違うような。ていうかプロフィール画像設定しておいてって言ったけど、もっとマシなのなかったの?!』
いや、あの人にそれを望むのは無理か…
実質二度しか会ってないが、そういうのはわかった気がする
ちなみに、わたしがプロフィール画像に使っているのは自撮りした、わたしの可愛らしい表情が写ったやつ
『何の用件だろ?』
そう思って、木崎さんからのメッセを見ると
『大丈夫か?学校行けてるか?』
だった
『わたしのこと心配してたってこと?だったらもっと早くメッセ送って来なさいよ!!』
そしてこうも思った
『そういう心配できるなら、ひどい言葉じゃなくて優しい言葉使いなさいよ!!全く…』
だけど
『ちゃんと心配はしてくれてるんだ……』
そう思っていると
「どうしたの咲耶?誰からの連絡?まさか元カレ…」
愛花がそう言ってきた
「ち、違うわよ。お母さんから。学校行く時元気なかったから、心配になって連絡してくれたんだよ」
「なんだ。そっか♪」
なんとか誤魔化せた
さすがにこれを知られるのはまずい
色んな意味で
「でも嬉しそうだったよ?なんか親からの連絡って感じじゃなかったような…」
「えっ?!気のせいだよ。気のせい」
卑弥呼と愛花が訝しげに見てる
『嬉しそう?わたし、そんな顔してたの?』
そう思った瞬間
『……………』
あの時言った言葉が頭に浮かんだ
しかも脱衣所の時に浮かんだ時とは、言葉のトーンが僅かに上がってたような…
「さぁ二人とも。お昼ごはんの続きしよ♪明日からまた教室だよ♪」
あの時の言葉を振り払うように、わたしは二人に言った
『とりあえず、夜にでもまた連絡しよう』
そう思いながら、わたしはお昼ごはんを再開した
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