第16話

「ホントなんなんだあいつ……」

俺は家に戻ったあと、机の前で自分のスマホの画面を眺めていた

座っている横には、今日買ってきたつや消しのスプレー缶

机の上には、家に帰る途中に買ったコンビニ弁当

俺は自炊をしないってわけじゃない

炊飯器もあるし、ガスコンロだってある

だが俺ができる自炊なんて微々たるもの

料理と呼べるかどうかわからない

だからいつの間にかコンビニ弁当主体になっていった

いや、今はそんなことはどうでもいい

『天王寺咲耶……か』

俺はスマホの画面に映る、LINEのプロフィール画像を見ていた

重度のオタクに限らず、男ならあんな女子と連絡先交換できたら、普通なら喜ぶんだろうけど

『俺は全然嬉しくない。むしろ何考えてるか、さっぱりわからねぇ』

援助交際っていう気持ちでやったわけじゃないっていうのはなんとなくわかるが、あの流れからなんでこういう展開になるんだ?

「きっとあいつ自身わかってないんだろうな。そんな感じだった」

なんか勢いでそうしたって感じだった

でもその勢いって、何の勢いなんだ?

さっぱりわからない

「まぁ、すぐに飽きるだろ。俺なんか相手にしてもしょうがないし。新しい彼氏ができるまでの繋ぎってやつだな、俺は」

そう結論付けることにした

『今度は、ちゃんとした彼氏作れたらいいけどな』

そんなことを思っていると

ピロロン

あいつ、天王寺からメッセージがきた

「んっ?ああ、家に帰ったらメッセージ送るって言ってたな」

時間的に見て、晩飯終わってからか

『俺の方はまだだが。まぁいいか』

そう思いながら、天王寺からのメッセージを見ると

『木崎さん。今日は色々とどうも。このメッセ見たら、すぐに返信して』

「まぁ確かに色々あったな、今日は。あいつにとっては特に」

そんなことを言うと、あいつからのメッセージに

『何か用か?』

そう返信した

すると

『別に用なんてない。ただの確認よ。ブロックとかしてなかったみたいね。安心したわ』

いくら何でもそこまではしないぞ

少なくても今のところは

『プロフィール画像、ちゃんと設定すること。今のままじゃ怪しい人みたいに思えちゃうから』

ハイハイ。わかりましたよ

『それからもう1つ。わたしの可愛い画像とかエッチな画像とか送られてくるとか、そういうの期待しないでよ!絶対送らないから!!変なことに使われたらたまらないから』

そんなのは全然、いや、ちょっとは期待してたかな?

『イヤイヤ。何考えてんだ俺』

そんなのを思いながら

『そんなの期待してないし、そういうのに使うつもりもない』

そう返信した

「ふぅ。やれやれ」

つや消しのスプレー缶買って、昼飯食べたあと、ガンプラ制作に勤しむはずだったのに……

『まぁ明日も休みだし、別にいいか』

ふと、今日1日のことを振り返ってみた

あいつと偶然出会って、なし崩し的にあいつが俺の買い物やらに付き合ってきて……

んっ?

ちょっと待て

今日、俺とあいつがしたことって…

「もしかして、デートってやつじゃないのか?!」

イヤイヤイヤイヤ。そういうんじゃない

あれは、あいつが勝手についてきたってだけだ!!

デートなんかじゃない!!

あいつだって、そう思ってるはずだ

「でもあいつ、やかましい奴だけど意外と可愛かったな。昨日は夜だったこともあって、よくわかんなかったけど。それに何より胸でかかったな。何カップあるんだ?」

そんなことを口走ってしまっていた

『ダメだダメだ!!俺はオタクではあるが、そういうので喜ぶとか嬉しいとか思うタイプじゃない!!相手は一回り上、親子くらいの差があるんだぞ?!そんなので喜んだり嬉しがったりしたら、本当にただの変態、ロリコンだぞ!!』

俺は頭の中で、自分で口走ってしまった邪ともいえる気持ちを振り払った

『さっさと飯食って、シャワー浴びて、少しガンプラの制作したあと、しばらくしたら寝る!そうしよう』

そう決めて、俺はコンビニ弁当を食べ始めた




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