第10話

俺と咲耶。

いや、名前で呼ばないでほしいと言われてるから、彼女、もしくはこいつっていうことにしよう

今、俺とこいつがいるのは模型店

元々、俺は行くつもりだった

彼女は、ただ俺の用事に付き合ってるだけ

こっちの言い分も聞かず、強引に

「何キョロキョロ見渡してる?こういうとこ入るの初めてか?」

店に入ってからずっと、未知の領域にでも踏み入れたって感じになってるな。

「あ、当たり前でしょ?こんな男子しかいないようなところ、来たことないわよ。こんなところ女子が1人で入ったら、疎外感みたいなものを味わうわよ」

「今日は俺がいるから大丈夫だろ?だいたい俺の用事に付き合うって言ったのはお前だ」

「それはそうだけど…。買い物っていうから、晩御飯のおかずとか買いに行くのかと思ってて…。いえ、あんたみたいなオタク中年男といる時点で大丈夫じゃないわ!同類だと思われるじゃない!!」

全く、こいつは……

まぁ、こいつならそう思うんだろうな。きっと」

「えっと。あんたのスマホのホーム画面になってたロボット?いっぱいあるわね」

今俺たちがいる場所は、ガンプラが中心に並んでいる場所。当然だ

「んと、HG?RG?何これ?!あれは、MG?PGってのもあるわね?なんかみんなおんなじにしか見えないんだけど…。HGっていうのも、なんか後ろにUCだのCEだのっていうのがついてるのがあるし。あっ!目が1つだけってのもある!!でもおんなじなのが他にもあるし…」

並んでいるガンプラをまじまじと見ている。しかもなんか興味津々に

『すげぇ夢中になって見てないか?おい』

そんなことを思っていると

「で、何買うのよ?これ?それともあれ?」

いろんなガンプラを指差して訪ねてくる

『すげぇ楽しんでないか?こいつ?』

「あ、ああ。これだ」

俺は手に持っていたつや消しのスプレー缶を見せた

「えっ?!それだけ?!他に買うものないの?!」

なんか意外っていうか、なんていうか残念そうな顔で聞いてきた

『なんでそんな顔してんだお前?自分が今、どんな顔してるかわかってるのか?』

「これ切らしちゃってたからな。家には積みプラになってるガンプラとかあるし。まだ新作も出てないしな」

「ツミ…プラ?」

『何それっ?』って顔で言ってきたので

「簡単に言えば、まだ作ってないガンプラのことだよ」

そう答えてやった

「そこで待ってろ。今支払い済ましてくるから」

そう言うと、俺はつや消しのスプレー缶を2本ほど持ってレジに向かい、支払いを済ませた

「ほら、終わったから店出るぞ。いつまで眺めてんだ?」

俺がレジで支払いをしている間も、ずっとガンプラを眺めてたようだ

「買ってやろうか?」

俺がニヤリと、からかい気味に笑って言うと

「い、いらないわよ!こんなの!!あんたなんかと一緒にしないで!ほら、行くわよ!!」

そう言って、足早に店を出ていった

『まぁ、ほしいって言ってきても買ってやらなかっただろうけど』

やっぱり、ひねくれてるな俺

『でもどうしてもほしいって言うなら…』

ふと、そんなことを思いながら、俺も店を出た

店の前では、あいつが待っていた

「で、これであんたの用事は終わり?だったら…」

「いや、まだあるな。昼飯だ」

「お昼ごはん?ああ、確かにそういう時間帯ね。いいわ、わたしも食べたいし。そっちの方も付き合ってあげる」

腕時計を見ながら、そう言ってきた

「そうか。じゃあ、ついてこい」

たぶん、いやきっと、次の場所ではさすがにキレるだろうな

だが俺は自分の予定を変えるつもりはない

たとえ、こいつがついてくることになってしまっているという状況でもだ

『色々言われるだろうが関係ない』

何故なら、俺はひねくれ者だからだ













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