再会編

第7話

「ふぅ」

昨夜はとんでもない目にあった

修羅場に遭遇なんて、あんなベタな展開あるか?

しかもフラれた女子に見つかって口論になるとは

『いや、口論になってないか。別に喧嘩腰になってないし』

少なくとも、俺的にはそうだった

あっちはたぶん違うだろうが

あの後、飯も食わず、風呂にも入らないまま、そのまま眠ってしまった

『あんな就寝、俺の生活スタイルに反してる』

朝、目が覚めた時、そのままの服装で眠ってしまっていたことに気がついた

慌てて服を脱ぎ、ジャージに着替えた

家にいる時は常にジャージ

それが俺だ

そのあと、顔を洗って、歯を磨き、朝食の準備をする

もっとも朝飯は、パンとインスタントのコーヒー

手のかかるような準備でもない

食べ終わった後は、また歯を磨く

朝はだいたいいつもこんな感じだ

もっとも平日の時は、そのあと仕事に行く準備をするが、今日は休日

本当なら部屋に籠って、ガンプラ制作をしてるはずなんだが……

『つや消しのスプレー缶、切らした』

だから今、俺は外出中

「昼飯は外食だな。ラーメン屋にでも行くか」

もっとも外出の際はいつもそうだが

『初夏も中盤ってところか』

季節の変化に色めき立つ歳でもない

いくらオタクでも、俺も今年で40のアラフォー

こういう時、自分はもう若くないんだなって思ってしまう

『認めたくないものだな……』

そんなことを思っていると

「きゃっ!」

「うわっ!」

誰かとぶつかってしまった

ドタッ!

俺は尻もちをつく形になったが、すぐに立ち上がると

「すいません。大丈夫……って!」

そのぶつかった相手は……

「イタタッ。ちょっと!ちゃんと前見て歩きなさいよ!…って、あんたは!!」

そこで尻もちをついて倒れているのは……

あの時の…女子?

「な、なんであんたがここに?!」

まぁ、そういう反応になるわな

『またベタな展開だな…』

そう思いながらも彼女に

「ほら。立てるか?」

そう言いながら、彼女を見るとあの時のラフな格好と違って、きちんとした服を着ている

まぁ当然だが

『いかにも今時の女子って格好だな』

意識的にではないと思うが、チラリと胸の谷間を見てしまった

『あの時は気づかなかったけど、胸でかいな、こいつ』

そんな俺の視線に気づいたのか、彼女はすくっと立ち上がると

「どこ見てるのよ!!この変態中年男!!!」

ドカッ!!

思いきり足を蹴られた

「いってぇー!!」

「なんであんたがここにいるの?!しかも今度はわたしの胸じっと見て!!今日はズボンで良かったわ!!スカートだったら、パンツまで見られてただろうし!!!そんなことになったら、わたし本当にもう終わりよ!!一生お嫁に行けなくなってたわ!!!!」

そんな大袈裟な

なんてこともないか

少なくともこいつにとっては

「なんでまたあんたに会うのよ?!もうあんたになんか会うことなんてないって思ってたのに!!あんたみたいな中年男になんか二度と会いたくなかったのに!!!」

俺だって、また会うなんて思ってなかったよ

ていうか思うわけないだろ。そんなの

「落ち着け。周り見ろ。今日はあの時とは違うんだから」

そう言われると彼女は周りを見てみた

周囲の視線が自分に集中していることに気づく

正確には俺たち二人にだが

「なんでまたこんなことに!あんたのせいよ!!この最低中年男!!!」

なんで俺のせいなんだよ

そりゃ胸じっと見たけど、そのあとのことはお前が起こしたことだろ

彼女は横にあった紙袋を持ち上げると

「場所を変えましょ。とりあえず、そうね。あそこに入りましょ」

そう言うと彼女は近くにあった喫茶店を指差した





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