第6話 咲耶side(後編)
「ふっざけんじゃないわよ!!!!あの中年男!!!!!!」
バンバンバン!!
わたしは部屋に入った時と同じくらい、いやそれ以上のまさに喉が壊れんばかりの大きな声をあげながら、枕をベッドに叩きつけていた
最悪の気持ちがとりあえず収まったあとに沸き上がったもう1つの気持ち
それは最低の気持ち
「浮気されてフラれたってだけでもショックなのに、その現場をあんなおじさんに見られてたなんて!!しかも出てきた途端、わたしのことジロジロ見て!!ホンット最低!!!!」
バンバンバン!!
あの男の姿を思い出して、ふと枕を持った手を止める
『でもそんなに年取ってるって風には見えなかったわね。いいえ!あの雰囲気と態度は間違いなくおじさんよ!!ええ、間違いないわ!もう確定!!』
バンバンバン!!
そう結論づけると、わたしは再び枕をベッドに叩きつける
「あの中年男!中年男!!フラれてショック受けてる女の子にあの態度はなに?!そりゃヤケ起こして罵声浴びせちゃったけど、あれはないでしょ?!」
『カッコ悪いな。すげぇカッコ悪い』
バンバンバン!!
「落ち込んでる女の子にあんなこと言う?!普通!!それにわたしが男子に都合よく使われてたなら、あいつの言う通りじゃん!!カッコ悪いじゃん!!わたし!!」
わたしがついさっき気づいたことをあんな男に先に言われていた
わたしのことを何も知らない初対面の奴に
しかもあんなおじさんに
「中年男!!中年男!!しかもそのあと輪をかけるようにさらにひどいこと言ってきて!!」
『1割くらい自業自得だと思うぞ』
バンバンバン!!
「自業自得って何?!1割くらいって何?!その1割って何の1割?!何を基準にして1割なの?!」
バンバンバン!!
「優しい言葉の1つもかけないで!!ひどい言葉しか言わないなんて!!ホンット最低の中年男だわ!!あいつ!!」
もはや浩介のことや今まで付き合ってた男子のことなど忘れてしまっていた
あの中年男に対する怒りの方がそれを上回っていた
「ハァハァハァ」
手を止め、枕で顔を隠してそのままベッドに倒れこんだ
「ああ!!ホントむかつく!!あの最低中年男!!」
どうせあんな奴に彼女なんていないでしょうね
ましてや結婚なんてしてないわ
どうせ一生一人身の独身で終わるに決まってるわ
家に帰る時、あいつの姿が見えなくなっても、後をつけられてないか時々確かめたけど大丈夫そうだった
『フラれたうえにあんな奴にストーキングされてたらたまらないわ』
顔を覆っていた枕をポンと横に置くと
「なんか、もぉやんなってきた…」
なんかもう男子と付き合う気になれなくなってる
もっといえば、男なんてもう嫌になってきてる
「いつもならお風呂入ってサッパリして、ぐっすり眠ってるのに…」
今日は全然そんな気分になれない
「まぁとりあえず、あの最低中年男とはもう会うことはないだろうし、そこだけが唯一の救いか……」
そう思った途端、急に疲れたのか、わたしはそのまま眠りについていた
この時は、あの中年男にまた会うことになるなんて考えてもみなかった
そしてあの男との出会いがわたしを変えていくなんて、この時は想像さえしてしていなかった
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