第5話 咲耶side(前編)

わたしは天王寺咲耶

此花大学付属高校二年生

わたしは今、人生最低最悪の気持ちで家に帰って来た

「ただいま」

ドアを開けるとお母さんが慌てて玄関まで来て

「どうしたの咲耶?!慌てて飛び出して行って。心配したのよ!何があったの?!」

「ごめん心配かけて。今は何も話したくないの。ホントごめん」

靴を脱いで家に入ると心配した顔のお母さんを尻目にゆっくりと歩いていった

「咲耶、何があった?ちゃんと話せ」

リビングからお父さんが現れてお母さんと同様、心配した顔でわたしの方を見て言った

「だから今は何も話したくないの。ほっといてよ」

あそこで気持ちをぶちまけたからなのか、それともフラれたショックからなのか、今のわたしは無気力状態だ

「お風呂入るでしょ?沸いてるわよ。さぁ」

「入りたくない。さっきから言ってるでしょ?ほっといてよ」

わたしは少し怒気がこもった声でお母さんにいい放った

階段を上がり、2階にある自分の部屋に向かった



部屋の前に立ち、ドアを少し乱暴に開けて部屋に入るとバタンとドアを閉めて鍵をかけた

「フーッ」

息を整えるとさっきまでの無気力さが失くなり、あの時の苛立ちと怒りが戻ってきた

「ふざけんじゃないわよーー-!!!!!!」

喉が壊れるんじゃないかと思うほどの大きな声をあげ、そのままベッドに飛び込んだ

「もぉ最悪!!あいつ平然と浮気認めて、わたしと別れてその子と付き合う?!ふざけんじゃないわよ!!」

その上わたしと付き合うのは一種のステータス?

別れても自慢になるから平気?!

どういうことよ?!

色々思い返してみよう

自分で言うのものなんだが、わたしは学校の女子の中でも上位に入る人気だ

そんな自分になっていったのは中学の時くらいから

メイクやファッションを自分なりに勉強して、そのうち周りから『あの子可愛い』と言われるようになっていった

胸も大きくなっていって、その当時の同級生の中では1番の成長ぶりだった

体のライン全体も大人っぽくなっていってるように感じた

それからは『可愛い』の他に『胸大きい』『スタイル良い』と言われるようになった

インスタに自分の写真を投稿し始めたのは中3くらいから

今ではかなりのフォロワー数を得ている

そういったこともあるのか、高校に入学した時はかなり注目された

男子からも女子からも

今日わたしがフラれたあいつ

浩介と付き合うまでにも、何人かの男子と付き合った

みんなそこそこのイケメン

わたしが付き合う相手なんだから、それくらい当然だ

でも大体半年。短い相手なら1ヶ月で別れた

その相手はみんなわたしからフッた

フラれたのは今回が初めてだ

『わたしがフラれるなんて想像したこともない』

それだけに今回はすごいショックだ

しかも浮気でなんて

でも今考えてみるとなんか妙な感じがする

わたしがフッた男子はショックを受けたような顔をしたかな?

なんかみんな、サッパリとそれを受け入れていたような……

自分がフラれた立場になってみると、自分がフッた男子たちには何か違和感を感じる……

『別れても自慢になるから平気』

浩介が別れ際に言ったあの言葉

まさか……

「わたしは男子たちに都合よく使われてた?」

周りに自慢できる都合のいい可愛い女

別れたとしても『わたしと付き合った』という事実があればそれで充分

もしそうなら……

「何なのよ。ふざけないでよ」

わたしはスマホを取り出すと浩介のLINEアカウントをブロック。削除した

電話番号の方も登録してあったので、それも着拒にしたあと削除

『今までのカレシのは別れた時にみんな削除だけだったけど』

もし残ってたらきっと同じようにしてただろう

『まだある。それは画像』

わたしは浩介が写った画像を全てまとめて削除した

『こんなの1つたりとも残したくない』

こういうのを何て言うんだろう?

確か……黒歴史?

どこからきた言葉かは知らないけど、確か抹消したい記憶とかのことをこう呼ぶんだっけ?

「ああ、もう!ホント最悪!!」

男子たちにいいように使われてたなんて

明日休みで良かった

明日学校だったら、どうなってたかわからない

二度と顔見せないでと言ったし、クラスも違うけど、絶対顔を合わさないという保証はない

こんな気持ちでアイツと会ったら、アイツを殺しかねない

今まで付き合ってた男子たちにしても同様だ

『こんなんで人生棒に振るなんてゴメンよ!!』

そういえばアイツ、こんなこと言ってたわね

『処女ってわけじゃないんだし』

ふざげないで!!

キスはしたことはある

アイツとも。今まで付き合ってた男子とも

でもわたしは!わたしは!!

「まだエッチはしたことないんだから!!!!」

最悪の気持ちはひとまず収まった

でもそれが収まると、もう1つの気持ちが沸き上がってきた

それは……


























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