第4話

カチャッ

ドアの鍵を開け、部屋に入る

「ただいま」

誰もいない部屋にお帰りの挨拶

もう日常的になって、無意識に口に出てしまう

「はぁ、やっと帰ってこれた」

まさかあんな修羅場に遭遇するとは

あんなベタな展開あるか?

もしかして俺は別の世界にでも行っちゃったのか?

だとしたら元の世界に帰してくれ

俺はあんな日常望んでないんだよ

俺が望むのは静かな生活

あんなのは微塵も望んでない

「はぁ」

俺は鞄を部屋に置き、そのままベッドに倒れた

「風呂入る気にも飯食う気にもならない……」

あんな修羅場見せられて、フラれた女子のヤケの入った言葉聞かされて、その上

『中年男って……』

確かに俺は今年で40のアラフォー。それは認める

でも俺の体型はスリム。どちらかといえば痩せ型

年齢より若く見られたりすることだってある

でもあの年頃から見れば、やっぱりおじさんか……

「認めたくないものだな……」

いざ、自分がそういう歳になってみると、そう言われるとキツイな

『女の子がフラれて泣いてるのに優しい言葉もかけられないの?!』

「あれはもっともだな」

普通なら建前でも優しい言葉の1つはかけるもんだ

だが俺が言った言葉はフラれても当然というような言葉

でも俺はああいう言葉しか出なかった

「あの会話からしてあの子、もう何人かの男と付き合ったことあるみたいだな」

おそらくあのカレシ、もう元カレか。あいつと同じくらいのイケメンと

キスとかもしたことあって、しかもエッチも経験済みってことか?

『ホント今時の子って……』

俺なんてそういう経験あんまり、いや全然か?ああ、なんか自分で自分を追いつめてる感じだ

とりあえず、それは置いといて…

『あの子、色んな男と付き合ってきて、人を見る目とか養えなかったのか?』

少しでも人を見る目があったら、あんなことになってないのに

だからあんな言葉を言ってしまった

『カッコ悪いな。すげぇカッコ悪い』

『1割くらい自業自得だと思う』

あんなことしか言えないとは……

「ホントひねくれてんな俺」

恋愛に関しては特に

『イケメンと付き合って、キスして、エッチできたら大人にでもなった気分になるのか?』

「そんな単純じゃないんだよ」

俺はアラフォーのオタク

大人になりきれない子ども

そんな俺でも大人になってる部分がある

肉体的という意味ではなく、精神的な意味で

『だからファンタジーの世界に憧れたりできないんだよ』

現実を生きて、世の中を知っていくとそんな甘いもんじゃないと思い知る

『ハッピーエンドを迎えたって、そのあと幸せになれるとは限らない』

それでも俺はアニメやマンガ、特撮モノが好きだ

そんな矛盾したような考えを持って生きている。それが俺だ

「あの子大丈夫かな?マジでヤケ起こさないといいけど……」

あんな言葉を言っておきながらもあの子のことを心配してしまう

これも1つの矛盾だ

『まぁもう会うこともないだろうし。心配してもしょうがないか』

そんなことを思いながら、俺はいつの間にか寝てしまっていた

まさかあの子とまた会うことになるとは夢にも思わないまま



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る