第2話

「くそっ。今日は遅くなった」

定時に帰る

それが俺の仕事スタイル

それなのに今日は残業

『残業なんていつ以来だ?』

俺にとって残業なんて自分の時間を奪うだけのものだ

こんな風に思える辺り、まだ社畜になってない証拠か

明日休みじゃなかったら、こんなのやってられない

「ああ、明日は積みプラ崩しでもしよう。とりあえず帰ったら風呂入って、飯食って、そのあとは……」

そんなことを言いながら歩いてると、何か声が聞こえてきた

「ちょっと!どういうことよ、これ!!」

若い女の怒鳴り声

通り道だったので、その声の主を見かけてしまった

暗がりだが姿からして声の主は10代そこそこ

髪は短めで少し茶色いのが入ってるか?

今時の女子高生。JKってやつか?

その子はスマホを男に突きつけている

同い年くらいか。イケメンの部類に入る男子だな

『修羅場か?なんてベタな展開。勘弁してくれよ』

俺は思わず身を隠して二人の様子を見る形になってしまった

『やだなぁ。残業帰りにこんなのホント勘弁してくれよ』

そう思いつつ、出ていくと厄介なことになるからしょうがない

「この子、ウチの学校の後輩よね?何で仲良く手なんか繋いでデートしてるの?何なのこれ!!」

「うわっ。何でこんな写真取られてんの?咲耶、お前か?何してんのお前」

「わたしじゃないわよ!友達が偶然見かけて写真撮って送ってくれたの!いいから説明して!!」

「見た通りだよ。デートしてたの、その子と。ああ、ちなみに誘ってきたのその子だから。可愛いし悪くないないって思って。ちなみに帰り際にキスもしたから」

「なっ!!」

女の方の顔は見えないが、あの様子だと絶句してるな

『カレシの浮気か。まぁ予想してたがホントベタな展開だな。マジ勘弁だよ』

残業帰りで、しかもこんな修羅場に遭遇するなんて。今日はなんて日だ。厄日か?

「わたしっていう彼女がいるのに他の女の子とデートして。し、しかもキスしたですって?!よく平気な顔でそんなこと言えるわね!!」

「いいじゃん別に。お前とだってしてるだろ?キス。それに処女ってわけじゃないんだし。これくらい許せよ。なっ?」

スマホを持った手が震えてる

怒りの頂点ってやつか?

『こんなの見せられるのはアニメかマンガの中だけにしてくれ』

いつまで続くんだと思った瞬間

パチン!!

女のビンタが男に炸裂した

『うわぁ、ホントベタ』

「もう顔も見たくない!!早くどっかに行って!!二度と顔見せないで!!」

「ハイハイ、わかりましたよ。ああ、痛い。まぁそれなりに楽しんだし、これからはその子と付き合うわ。じゃあな」

男は悪びれることなく、叩かれた頬を擦りながら後ろを向いて歩きだした

そして

「ああ、ついでに言っとくけど俺、お前のこと全然好きじゃないから。知ってるか?学校じゃお前と付き合うの一種のステータスになってるんだぜ。別れてもしばらく自慢になるからってさ。そんじゃ」

そう言い残すと男はさっさといなくなっていった

『修羅場は終わったか。あとはあの子がいなくなってくれれば帰れるな。いやマジ勘弁だよこんなの。二度とゴメンだ』

そう思った瞬間

ペキッ

『ヤベッ!だから勘弁して。こういうの』

「誰?!誰かいるの?!」

案の定バレた

『しょうがない』

俺は恐る恐る姿を出した

その子の顔はやはりJK

今時の女子高生の顔だった





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