第14話 橋を見に行って……

 「お前ら本当に何も持って来なかったのかよ…」

 真実が呆れ顔で言う。


 「え?遊びに来たのに?」

 と思わず口の出してしまう。

 「玄関に忘れてきちゃった」

 と困り顔の水野さん。

 水野さんもどうやら教科書やらを持ってき忘れてしまったようだった。

 


 「まあいいけど帰ったらちゃんと課題終わらせろよ」

 真実はそう言い参考書を開く。 

 

 午前中課題をやると言う真実。

 どうしようかと水野さん話していると真実が2人で吊り橋でも見に行けばいいと言った。


 どうやら近くにちょっと綺麗な場所があるらしい。


 場所は水野さんも知っていると言うのでついていくことにした。


 真実がリュックサックを持たせてくれて、おまけに去年まで真実が来ていたと言う登山用のウエアーを譲ってくれた。



 気をつけて、とにこやかに送り出してくれる真実。


 多分真実は楽しんでいる…そう思いながらも水野さんと一緒に送り出された。





 「今日はちょっと寒いね」


 上着を着ながら水野さんを見る。

 今日はジーパン姿の水野さん。

 スカートじゃないのって初めて見た。

 

 昨日とは逆の方向に歩き遊歩道に入る。

 

 山の樹々に囲まれた岩場があったり綺麗な沢があったり歩いていて楽しい。


 水野さんと2人きりで歩いている…それだけで楽しかった。


 あちこちに眺めながら役1時間ほど歩いただろうか?


 「青海くんあれ…」


 水野さんが指さす方をみる。


 キラキラと太陽の光を受けてエメラルドグリーンに輝く川にかかる橋…。 

 穏やかな川の流れは下流に繋がりやがて海へと注がれるのだろう…。



 橋を渡ると広い草原とキラキラと輝く湖があった。


 湖面はとても静かで、空を映す鏡のようだ。

 

 「すごい…ね」

 

 何とも言えなかった。

 こんな綺麗な景色…。

 今まで見たことない。

 

しばらく時間を忘れて眺めていた。





 ゴロゴロゴロゴロ…


 どこからか雷の音が聞こえだす。

 空を見上げた。

 いつに間にかに真っ黒な雨雲がこっちに向かって流れてきていた。


 「いつの間に…気づかなかった…」

 「急いで…戻ろう…せめて雨宿り出来るところ探さなきゃ…」


 もうコテージまで戻るのは無理だ。

 くる途中にあった岩場なら雨を凌ぐ場所があるかも知れない…。


 

 慎重に、急いで下山する。

 雨雲はあっという間に近づいてくる。

 山を降りながらもどこかいい場所はないかと探すが無さそうだ。


 ポタポタと大粒の雨が降り出したと思ったら一気にバケツをひっくり返した様な雨が降り出す。


 きっともうすぐ岩場がある…。

 そう思いながら慎重に進む。

 

 雨のせいで足場が滑る様になっていた。


  

 そろそろ…!!

 岩場に着く。

 どこか…ないか?

 

 雷がすぐ側で鳴り響く。

 「っきゃっ!!」

 水野さんの小さな悲鳴が聞こえた。


 そういえば水野さん雷が……

 そう思った瞬間だった。

 泉が突然視界から消えて行く。

 「水野さんっ!」

 慌てて手を伸ばすが空を掴んだだけだった。


 「っきゃあっつ!!」

 水野さんが斜面を滑り落ちた。


 「水野さんっ!」

 滑り落ちた斜面をみる。

 3メートル程下で水野さんが座り込んでいた。

 夢中で滑り降りる。

 「大丈夫かっ!?」

 水野さんを立ち上がらせようとするが足を捻ってしまった様でびっこを引いている。


 どこか…周りを見回す。

 あった!


 ちょうど水野さんが落ちた場所から少し離れた所にぽっかりと岩が口を開けている。

 洞窟だろうか…。

 急いで見に行くと2人で入るには十分な大きさの洞窟があった。


 水野さんを支えながら中に入る。

 外では轟々と風が吹き、雨が土砂降りになっていた。

 

 「……」

 一瞬で全身ずぶ濡れだった。

 しかし透の方は真実に貰った上着が防水だった様でマシだったが泉はビチャビチャに濡れていて、おまけに泥まみれだった。


 そして濡れたせいで体温が奪われて非常に寒くなってくる。


 泉も寒いのか微かに震えている。

 

 「水野さん、濡れた服脱いだほうがいい」


 透は上着を脱ぎ中に来ていた乾いた服を水野さんに渡す。


 「それじゃ青海くんが…大丈夫だよ私…」


 水野さんはそう言い断ろうとするが女の子を濡れたままにしておけるわけがなかった。

 


 「いいから…水野さん早く服脱げって俺あっち見てるから」


 そう言いながら水野さんに服を預けて真実に借りたリュックサックの中身を確認する。


 

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