第12話 泉と海へ

 「暑から海にでも行かない?」 

 真実が帰ってきた翌日朝ごはんを食べながら泉が言った。

 「嫌だよ暑いのに。俺は部活で疲れてるの」  

 真実に速攻で拒否される。

 「2人で行ってこいよ」

 真実が笑った。

 何だか泉が可哀想な気がして声を掛ける。

 「オレと2人でもよければ行ってこようか?」

 声をかけると泉はうなづく。




 ★


 

 真っ青な海と空。

 とても気持ちいい天気だ。

 

 肌を人目に晒したくなかったので海パンの上に大きめのTシャツを着る。

 多分これで身体のアザは見えないはずだ。

 着替えて更衣室から出ると泉が待っていた。


 ……。

 水着姿の泉…。

 凄く綺麗だけど…。

 見ているとドキドキする…。

 身体が熱くなってしまう。


 「変…じゃない?」

 そんな事を言い出す。

 「変なんかじゃないよ。かわいいよ」

 なんとかそう言い泉から視線を逸らす。

 やっぱり水着だと胸が強調される。

 この前見てしまった泉のおっぱいをどうしても思い出してしまう。

こんな時にまた鼻血なんか出したくない。


 「さ、いこっか」

 泉と浜に向かった。

 

 海を目の前にして大事なことに気づく。

 「水野さん、俺泳いだこと無いんだ…。」

 「ん?そうなんだ。泳ぎ方教えるよ。」

 あっさりそう言われた。


 準備運動を済ませ水の中に入る。

 少し海水は冷たいが気持ちがいい。

 

 泉に手を引かれて体を浮かせる。

 引っ張られている時はなんとかなるのだが…。

 手を離されてしまうと途端に体が沈んでいく…。

 「青海君、体の力抜いて」

 泉にそう言われるが中々難しい。


 午前中一杯教えてもらい何とか浮くくらいは出来るようになった。

 お昼ご飯をとりながらなんだか泉に申し訳ないような気になっていた。


 「水野さんごめんね。せっかく泳ぎにきたのに。これじゃ水野さん泳げてないよね…」


 泉は笑った。

 「別に泳ぎたかったわけじゃないから気にしないでいいよ。海にこれたのと水の中に入ってるだけで気持ちいいし」


 その後もしばらく泳ぐ練習をする。

 「途中で手離すよ」

 手を引いてくれていた泉が手を離す。

 …今度はうまくいきそうだ。

 体がすっと水を切りながら前に進む。

 そのままバタ足で前に進んでいると指先に何か触れる。

 そして手全体にむにゅっと弾力のある…。

 

 一瞬で何かを悟り泳ぐのを忘れた。

 水中だということを忘れて鼻から息を吸おうとしてしまった。

 一気に鼻に痛みが走る。

 驚いて立ち上がりながらむせてしまう。

 「水野さ…ごめんっ!!」

 何とか泉に謝るが痛みが強くてむせるのが止まらない。

 「青海君大丈夫?!」

 泉に背中をさすられる。

 

 その後は無理しない程度に浮き輪で泳いだり海辺を歩いたりした。

 

 「水野さん赤くなっちゃったね」

 「青海君もね」


 焼けた肌をお互いを見つめあって笑ってしまった。

 

 

 ★


 


 家に帰る。

 真実が二人の姿を見て驚いていた。

 「二人とも…赤くなったな…。」

 そう言って笑う。

 「今度は一緒に行こうね!」

 「まあ次は…な」

 真実と約束をした。


 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る