第21話 最近妻の帰りが遅い…。
二月に入る。
今日も泉から帰るのが遅くなると連絡があった。
「なあ、すずしろ今日も泉帰るの遅くなるってよ。すずしろはもう寝な~。」
すずしろはお気に入りのクッションの上でうとうととしている。
最近泉の帰りが遅い…。
時計を見ると22時過ぎている。
大丈夫かな…。
食事も済ませて帰ると言っていたから何もすることがない。
泉…早く帰って来ないかな…。
すずしろは気持ちよさそうに眠っている。
泉が帰って来たのは23時過ぎだった。
「泉、お帰り。」
「ただいま。ごめんね、遅くなって。」
泉がスーツを脱いだスーツをハンガーにかける。
「遅くまでお疲れ様。」
そう言うと泉は少し困った様な顔をする。
「うん…。」
着替えとタオルを渡す。
「ありがと。」
泉が通り過ぎていく瞬間、甘い匂いがした。
「ん…泉なんか甘そうな匂いするね。」
そう言うと泉がますます困った顔をした。
「そう…かな。」
★
「すず~、今日も泉帰るの遅くなるんだって~」
すずしろとねこじゃらしで遊ぶ。
最近すずしろは狩りが少しだけうまくなった。
じっと狙って…パンチ!
猫じゃらしにパンチが当たる…事がある。
ドアの鍵が開く音がする。
泉が帰って来た!
すずしろと玄関に向かった。
「いずみっ、お帰り」
「ただいま。すずしろもたたいま」
泉はにこにこ笑っていた。
泉が脱いだスーツをハンガーに…。
いつもと違う泉の匂いがする…。
……。
タオルを渡す。
「ありがとっ」
泉はお風呂に入る。
……。
★
「すずしろ~。今日も泉遅いんだって~。」
ご飯を食べるすずしろ。
たくさん食べて大きくなれよ。
頭を撫でるとすずしろは気持ちよさそうに目を閉じる。
泉から携帯にメールが入る。
…今晩は実家に泊まるそうだ。
分かった、とだけ返信して携帯を閉じる。
ため息をつきながら目を閉じる。
…泉のご飯を作ることと一緒にご飯を食べることが出来ないなんて…。
つまらなかった。
…俺…泉に飽きられちゃったかな…。
不安で眠れずに、どうせ寝られないならとパソコンを開く。
イヤなことを考えてしまう位なら仕事をしよう。
結局朝まで眠れずに、朝が来ても眠れなかった。
★
土曜日…。
昼間真実から連絡が来る。
今日は泉から夕方頃に帰ると連絡が来ていた。
時間があったので真実と外で会うことになった。
「…泉と一緒じゃない…のか?」
顔を見るなり真実が言う。
「ん…なんか昨日実家に泊まるって連絡来たけど…。」
「そうか…」
何か考えている真実。
「今週仕事忙しいんだってな。泉なんかずっと帰るの22時過ぎでさ…」
「?」
真実が怪訝な顔をした。
「忙しいって…あいつらずっと定時で帰ってるぜ。俺が18時前に行くと帰った後だし…。」
「!!??」
「何か浅川もずっと自分の家帰ってんだよな…。」
「シンジ…どうしよう。オレ…泉に棄てられちゃうよ…。」
「は?」
呆れ顔の真実と別れて家に戻る。
そろそろ泉帰るだろうか。
…。
…。
帰るとすずしろが待っていた。
遊んで欲しいと猫じゃらしを持ってくる。
気を紛らわそうとすずしろと遊ぶ。
泉は実家にいるのか、浅川さんの家にいるのか…。
男じゃ無いだけマシなのか…。
泉、俺より浅川さんの事のが良くなったんじゃあ…。
勝手に不安になってくる。
★
「…る!…とおるってば…!」
強く揺さぶられて起こされる。
「……?あ…、お帰り…いずみ」
泉が泣きそうな顔をしている。
「ん…大丈夫か!どうしたの?」
泉の泣き出しそうな顔に驚き飛び起きる。
「え、なになに!?いずみ??」
泉はほっとしたような顔で泣き出してしまった。
「もう、透帰ってきたら倒れてるんだもんっ!!」
ふと周りを見渡すといつの間にかにすずしろが持ってきたのかおもちゃが散乱している。
…どうやらすずしろと遊んでいるうちに寝落ちたらしい。
…昨日寝れなかったし…。
泉の涙が収まるまで抱きしめて背中を撫でる。
泉…可愛い…。
離したくない…。
思い切り泉を抱きしめ泉の肩に頭を押し付ける。
「なあ、いずみ…他の奴の事…好きになってもいいけど…お願いだから俺の事捨てないで…。泉がいないとダメなんだ…。」
泉の顔に触れる。
「俺何番目でもいいから。泉のそばにいさせて…?」
「…?透?」
「俺泉がいないともう生きてられないんだ…。」
「ちょっと…透、何?」
「透、何言ってるのか分からないからちゃんと説明して?」
ソファーに座らされ泉に聞かれる。
「…だって最近帰るの遅くなってるのって、浅川さんといるんじゃないの?昨日だって…浅川さんの家で…。」
「え?浅川さん?ああ、まあそうだけど。昨日は実家で泊まったよ。浅川さんもいたけど。」
「泉…浅川さんのが良くなったんじゃないのか?真実に聞いたら最近仕事終わると浅川さんと帰るって…。」
泉が何か考えている。
「それに、この前は泉風呂入って帰ってきてただろ…。匂い違った。スノボ行ったとき泉浅川さんに…。だから浅川さんのが良くなったんだろうって…。」
泉は赤くなりながらため息をつく。
「私は今でも透の事が好きだし、浅川さん真実の事大好きだよ。」
泉は立ち上がる。
テーブルの上に置いてあった箱を渡してきた。
「?これ…。」
「開けてみて」
箱を開ける。
箱の中にはかわいらしい猫をモチーフにしたシュークリーム。
「可愛いね…。」
「本当は明日渡そうと思ったんだけど、この流れで黙ってられないし…。」
泉を見上げる。
「ヴァレンタインでしょ、明日。」
「へっ?」
カレンダーを見る。
確かに明日は…。
「浅川さんが真実に何かあげたいっていうから…。まあ、私も透に何かしたかったし。」
泉が照れたように笑う。
「二人で練習したのよね。仕事終わってから。真実あんまり甘いと食べないからこれぐらいがいいんじゃないかって。でもシュー生地うまく膨らまなくって…。結局最後はお母さんに見てもらいながら完成させたの。浅川さんと一緒に。」
「…」
「この前は小麦の袋開けるときに失敗して粉だらけにしちゃってお風呂借りたの。」
「誤解…解けた?」
泉は顔を覗き込んでくる。
「うん…ゴメン…あとありがとう…。」
泉に抱きしめられる。
「透、安心して。私が透を捨てるなんてこと無いから。絶対。」
泉にキスされた。
「んんっ!もうっ!今週ずっと透といれなかったから透成分が足らないっ!!一緒にお風呂入ろっ!今日は寝かさないんだからっ!!」
泉に手を引かれて立たされる。
泉の作ったシュークリームを大事に冷蔵庫にしまう。
…泉とお風呂っ!!
慌てて着替えを取りに部屋に行く。
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