第18話 雪山に行こうっ★
「透ったら、真っ白!」
泉が鮮やかに滑り下りてくる。
視界は真っ白。
雪景色だ。
湯沢にあるホテルを経営している友人がいるから行っておいで、そう泉のじい様に誘われて来ていた。
真実と浅川さんも来ていたが二人はスキーにもスノーボードにも興味がないようだ。
ホテルに残るという二人をおいてスキー場に来たのはいいんだけど…。
泉は何度も来ているのか慣れたものだ。
以外にスパルタな泉に朝から教えられ何とか滑れるようになる。
「透、次あっちのリフトに乗ろうか」
…泉は元気だ。
「…泉、ちょっと休んでるから一回滑ってきなよ。」
そう声をかけると
「そう?じゃあ、行ってくるね」
そう言いながらリフトに乗って行った。
…助かった…。
正直足がガクガクだ。
教えられるとおりにしたいけど立って滑るだけで精いっぱい。
ボードを足から外し、椅子に座る。
…。
…。
…。
ヤバい。もう滑りたくない…。
足が限界だ…。
そんな自分を横目に泉が粉雪を飛ばしながらすっと滑り下りてきた。
まさに雪上の妖精だ。
ってもう来ちゃったの…。
「泉…早いよ…。」
「さ、行こっか。」
泉は笑いながら手を引く。
「あ、いやでも足が…。」
「どんどん滑らないと上達しないぞ」
泉に引っ張られながらリフト乗り場に連れていかれた。
★
夕方…。
部屋に帰り死んだ。
いや、もうすでに死んでいたが…。
転びまくったせいか、すでに筋肉痛が始まったのか分からないが体中が痛い。
「透…大丈夫?」
心配して顔を覗き込んでくる泉。
「おうって透…。大変だったな…。」
「楽しかった~?」
部屋に真実と浅川さんが来ていた。
隣の部屋は真実と浅川さんが泊る部屋だった。
「ねえ、水野さん、夕食の前に温泉行こう」
「…でも…。」
泉が心配してくれている…。
これ以上泉に情けない姿を見せるわけには…。
「泉、先に行ってお風呂入っておいで。少し休んだらオレも行くから…。
そう声かけすると二人は温泉に行った。
真実と二人になる。
「…泉案外スパルタなんだな…。嫌いじゃないけど…。」
「…だろ。お前、立てるか?風呂行ってマッサージしといた方がいいぞ。明日動けなくなる。」
「明日…?」
「そう。明日もやるんだろ?」
真実が手を貸してくれる。
エレベーターを待ちながら真実に言う。
「なあ、真実お願いが…。」
「無理だな」
言う前に真実に拒否される。
「あああ、もう無理だよ~!!」
真実に泣きつく。
周りにいた女の子たちが笑っていた。
「お前恥ずかしいだろ。離れろ」
真実に言われたがうまく歩けそうになかった。
どこからこられたんですか~?
お二人ですか~?
などと女の子たちに質問攻めにあいながらエレベーターを降りた。
温泉の前に行く。
男女で別れた入り口の近くで泉と浅川さんが男に捕まっていた。
「ねえ、お姉さんたち二人でしょ?どこからきたの?部屋に遊びに行っていい?」
浅川さんは
「ワルい!イケメン以外興味ないから、残念ね~」
などと言って突き放そうとしているがさっぱり通じないらしい。
「きみ、ほんっと可愛いね。浴衣がすっごい色っぽい…。」
そう言いながら泉の肩に触れようとする。
「俺たちの連れに何か用か?」
真実が颯爽と泉達と男の間に割って入る。
透も遅れながら泉を引き寄せながら男たちを睨む。
男たちはひるんで去って行った。
「水野さん大丈夫?怖くなかった?」
誰よりも早く浅川さんが泉に声をかける。
「えっ?うん。少しびっくりした。」
泉は微笑んだ。
「もう二人だけで行動するなよ。」
真実は浅川さんの体を抱き寄せる。
「うん。ありがと★」
真実と温泉に浸かる。
熱い湯が身に染みる。
「真実カッコいいよな…。」
そう言いながら腕を揉む。
身体中が痛い…。
「そんなことないよ。」
真実を見る。
目が合うと困ったように笑った。
「浅川を誰にもとられたくないだけだ。」
…だよな。俺だって誰にも泉をやるもんか。
ふくらはぎをぎゅっと揉む。
真実と露天風呂に移動する。
肌が引きちぎれそうなほど寒い。
露天風呂からは真っ白な雪山と降り続く雪しか見えない。
湯は熱いけど出ると死ぬほど寒かった。
隣の女湯から声が聞こえてくる。
「水野さんおっぱい綺麗ね~。ちょっと触っていい?」
「ああんっ、浅川さんだって同じの持ってるでしょっ揉まないでっいやんっ!」
パシャパシャと水音が響く。
「水野さんおっぱいすごい柔らかい。あ、もうちょっと揉ませて…。」
「ダメですったら、乳首立っちゃう」
更に水音。
「水野さんこっち来て…ほらっ」
「ちょっ、あさかわさん舐めないでっ」
「おい!あさかわっ!!」
真実が立ち上がる。
「お…!!」
少し元気になってしまっている真実。
もちろんそんな会話聞かされた俺だって元気になっている。
★
風呂から上がる。
部屋に戻ると浅川さんと泉が部屋で酒を呑んでいる。
既に出来上がっているのかお風呂で騒いでいたからかはわからないが二人とも真っ赤だ。
お風呂に入ったら体が軽くなった。
これなら明日もいけるかもしれない。
四人で楽しく夕食をとった。
一緒に泉と寝たいと騒いでいる浅川さんを真実が部屋に連れて帰る。
泉は呑んで浅川さんと騒いで疲れたのか布団に入るなりうとうとしていた。
「泉、寝ちゃっていいよ。」
泉の横に敷かれた布団に入りながら泉の頭を撫でる。
「んん…でもせっかくお泊りで来てるのに・・・もうちょっと起きてたい。」
起きあがろうとする泉。
「いいから…。無理して起きてる必要なんかないよ。」
毛布を掛けなおして背中を撫でていると泉は寝たようだ。
電気を消して目を閉じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます