第16話 妻の実家にご挨拶★

 「透、今週帰ってきなさいって…。」

 

 会社から帰るなり泉が嘆きだす。 


 ・・・カレンダーを見る。


 ああ、もうそんな時期か…。


 毎年この時期に泉の実家に集まって食事会をしていた。

 

 「ああ・・・。そっか、わかったよ★」


 泉のスーツを脱がせながら返事をする。


 「分かったって…。透…。」


 恨めしそうに泉に見つめられる。


 泉のこの表情も一年ぶりだ。


 タオルを持ち泉と風呂に向かう。


 こんなときは接待風呂だ!!




 ウキウキしながら泉の服を脱がせる。


 自分もさっと服を脱ぎ捨てる。


 「ほら。おいでっ…」


 泉を座らせ髪を洗ってやる。


 丁寧に髪を洗いそのままゆっくりと頭皮のマッサージ。


 「う…んっ…透気持ちいい…。」


 泉はうっとりと目を閉じる。


 髪を洗いタオルを巻く。


 次は体だ。

 

 たっぷりと泡をつけて泡立てた手で泉の腕や背中を洗う。


 ついでに肩や背中のマッサージ。


 …泉肩こってるな…。


 いよいよ一番のお楽しみ…っと思ったが


 「前は自分でやるから…。」


 そう言われてしまった。


 しかしそんなことで諦めるわけにはいかない。


 「いいから任せて」


 泉の柔らかなおっぱいにも泡をたくさんつけて揉む…いや、洗う。


 あまりいやらしくならないように…でも時々乳首にも触りたいっ…。


 ちょこちょこ乳首をくすぐる。


 「ちょっ、透。」


 怒られてしまった。


 真面目に真面目に…。


 

 何とか平常心を保ちながらお風呂を上がる。


 「もうっ…透のせいで疲れた…。」

 

 そんなことを言いながらも泉が笑ってくれた。


 泉を風呂の中でくすぐりまくったせいで笑い疲れたようだ。


 

 ★



 土曜日

 

 「泉、お義父さんとお義母さんに渡すのこれでいいかな?」


 水野家に持っていくお土産を泉に見せる。


 「何だって大丈夫だよ…。透の顔見るだけで二人とも喜んでるんだから…。」


 泉は少しうんざりしたように言う。


 「って泉…何でまだパジャマ??ほら、着替えて…この前来てたあの服の方がいいよっ」


 「自分の家に帰るだけなんだからいつもの服でいいよ。無駄に汚したくないし。」


 そういいながら泉が本当にいつもの服を着だす。


 「ああ!!泉どうして…あの服の方が絶対泉が可愛く見えるから!!」


 泉が着ようとしていた服を取り上げ洗濯機に投げ込んだ。


 「これ今日洗うから!もうあの服着ろってっ」


 「…。」


 泉は心底嫌がるように渡した服を着てくれた。


 

 ★


 「お邪魔しますっ★」


 「…ただいま…」


 水野家の玄関をくぐる。


 泉の両親はにこにこと迎え入れてくれた。


 「今年もよろしくお願いします。お義母さん、お義父さん」


 「透くん。今年もよろしくね。まあ、泉かわいらしい服着て。…透くんの趣味でしょ?」


 「ええ。まあ。泉せっかくかわいいのにこういうの嫌がるんで。」


 「さあさあ、こんなところじゃなんだから早く中に入って…透くんも今日は呑んでいってね。」


 などと話しながら中に入った。


 大広間に通される。


 既に真実が来ている。


 「よう…。」


 真実は少しげんなりとしている。


 「真実…もう済んだの?」


 恐る恐る泉が聞く。


 「ああ…。」


 真実が疲れたようにため息をついた。



 

 「それはそうと泉」


 お義母さんが泉に話しかける。


 真実がそっと離れてこっちに来る。


 「今年も最悪だぜ…。」 


 真実もほぼ泉と同じ表情をしている。




 「透君、真実もちょっといいか?」


 お義父さんだ…。

 

 泉はお義母さんに任せてお義父さんについていく。


 「いや、私たちももう歳だしねえ…分かるだろ。そろそろ孫の顔が見たいんだよ。それでどうなんだ?」


 …直球できた。


 「そういうのは…自然に任せるのが一番かと…。泉もまだ仕事したいみたいですし…。」


 お義父さんは少しがっかりしたような顔。


 「そうは言うけどな、泉だっていつまでも若くない。少しでも若いうちに子供を産んで…。」


 …子供かあ…泉に似ればとてもかわいい子になるだろうなあ…。


 ついニヤニヤしてしまう。


 「いいですね…泉に似た子なんて…女の子二人ぐらい…でも男の子もいいなぁ。」


 妄想を口に出す。


 お義父さんも嬉しそうに話しに乗ってくる。

 「だろ!いいよなあ…。」


 お義父さんも妄想に浸りだす。


 「おじいちゃんなんて呼ばれたら…。」


 透は解放された。


 次は真実だ。


 「ったく泉はまだ結婚してるから時間の問題とはいえ、真実お前はなあ…。誰か付き合ってるお嬢さんとかいないのか?…お前昔から浮いた話とかないからな…。


 真実はどうでるのか…。


 浅川さんのこと…。


 「いるよ…付き合ってる奴なら…。」


 あっさりそう言った。


 お義父さんはすごく驚いていた。


 真実は続ける。


 「結婚も…したいと思ってる…。もちろん彼女がOKしてくれればの話だけど。」


 …。


 真実を見る。


 真実やっぱり浅川さんのこと言ってるんだよな…。


 「もしうまくいったら…連れてくるから…受け入れてやってください。お願いします…。」


 真実がお義父さんに頭を下げた。


 「真実…。」


 お義父さんはにっこり笑う。


 「お前が選んだのならいい子なんだろう。連れてきなさい。」


 そう言いながら真実の肩を叩いた。


 真実はほっとしたように笑った。


 「そういうことならもう言うことなんてない。呑むか!」

 


 ★




 一方泉はだいぶお義母さんに絞られたようだ。


 帰り道ぐったりしながら愚痴っていた。


 「子供子供って…そんなに好きならまた自分たちで作ればいいのにもう、毎回毎回…。」


 泉の頭を撫でる。


 「お疲れ様。でもさ、泉に似た子なら俺もたくさんほしいよ。絶対可愛いだろうし。」


 「透…。」


 「だから、今じゃなくてもいいからいつか俺の子産んでね?」


 泉が照れたように微笑んだ。


 

 

 「ところでさ、今日じい様今日いなかったな。」


 「…そういえば。いなかったね。お母さん以上にうるさいのに」


 「…だよな。結婚したとたんに早く子供作れって…。」


 泉はわらった。


 「おじいちゃん透の事大好きみたいだよ。いつも言ってるもん。元気かって。透が書いた本も全部買ってるみたいだし」


 「そうなの?初めて知った。」


 泉は透の手に触れる。 


 「多分私と同じくらい透ファンだと思うな…。」

 

  泉と手を繋いで家に帰る。


 「ねえせっかくだからこのままご飯食べて帰ろうよ?」


 泉にそう聞くと嬉しそうに泉はうなづいてくれた。


 「…どうしよっか?透は何がいい?」


 2人で夕暮れ時の街を歩く。


 空には星が輝き始めていた。

 

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