第14話 妻を奪われエッチできないのがツライ

 風邪が治り体調も戻った…。


 すずしろもすっかり家に慣れたようだ。


 猫じゃらしですずしろと遊ぶ。


 猫じゃらしを必死に追いかけるすずしろ。


 「元気になって良かったな。」


 あごの下を撫でてやると気持ちよさそうに喉を鳴らす。


 「すずしろ、たっぷり遊んでやるから…今日こそ早く寝るんだぞ…。」


 

 風邪が治ってからはや一週間…。


 すずしろに泉を奪われ続けていた。


 泉はすずしろ、すずしろっと猫可愛がりするし、すずしろもすずしろで泉が仕事から帰るなりぴったりくっつく。


 …俺だって泉にくっつきたい…のに。

 

 風邪が治ってからと言われ、体調が完全に戻ってからと言われ…。


 …かれこれ一週間もしてない…。

 

 今日は金曜。


 明日休みの泉。


 …今日はチャンスのはずだ。


 透はすずしろが疲れ果て寝るのを期待してすずしろと遊び続けた。


 

 ★


 「…とおる、こんなところで寝たらまた風邪ひくよ…。」


 仕事から帰った泉に起こされてしまった。


 「んん…泉…お帰り」


 「ほんと仲良しね」


 泉は微笑んだ。


 「えっ?何が…?」


 起き上がろうとして気づく。


 すずしろがお腹の上で眠っている。


 …どうりで暖かったはずだ。


 すやすやと寝るすずしろ。


 「いいな。すずしろは。」


 泉が言う。


 「透とずっと一緒にいれて」


 そういいながらすずしろを撫でる。

 

 「…いずみ…」


 思わず泉の肩を引き寄せてキスしようとした。


 泉も目を閉じる。


 唇が触れようとした瞬間、


 ニャーッ!!


 …すずしろが起きた。


 「…はあ。」


 すずしろに邪魔されてしまい何となくキスできる雰囲気ではなくなってしまう。


 がっかりしていると泉が笑いながらキスしてくれた。


 …いずみ。


 やっぱいいなあ…。


 幸せだ。





  ★



 

 二人でお風呂に入ってしまうとすずしろは淋しいのか大声で呼鳴きする。


 まあ、こんな小さなうちに親と離れてしまったのだから仕方なかった。

 

 泉と交代でお風呂に入る。


 泉がお風呂に入っている間、またすずしろを寝かせる作戦にでる。



 激しいボール遊び。


 これならさすがのすずしろも疲れ果てて寝るはず。


 

 泉は透の作戦など知る由もなく、お風呂から上がると


 「すずしろ、良かったね。たくさん遊んで貰えたね」


 などと言っている。


 泉と入れ替わりで風呂にはいる。


 あれだけ遊んだのだからすずしろも疲れただろう。


 今日こそは‥。


 意気込んで風呂から出る。


 ‥静かだ‥。


 ‥嫌な予感しかしない。


 髪を乾かしリビングに行く。



 

 脱力した‥。


 今度は泉がすずしろと一緒に眠っていた‥。


 

 泉の胸の上で気持ち良さそうに眠るすずしろ。幸せそうに眠っている。


 「‥はあぁ‥」


 がっかりした‥。


 でもがっかりしながらも泉が幸せそうに眠っているのを見るのは幸せだ。


 「お疲れ様。」


 透は泉の頭を撫で、抱き上げた。


 泉の寝室へ運びベッドに寝かせてその横に寝転がる。

 

 …明日こそ…


 闘志を燃やしながら眠りについた。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る