第10話 初参りとっ★

 …結局夜通しでエッチしちゃったな…。


 隣でぐったりと眠っている泉の頭を撫でる。


 泉が可愛過ぎて、愛おし過ぎて…。


 昨日は夕飯も食べずに泉を抱き続けて、そのまま年越し、朝方までエッチしてしまった。


 エッチ納めもエッチ初めもしちゃったな…。


 まだ泉と繋がったままの自身をゆっくり抜く。


 「んっ…。」


 

 泉が起きたらまずはお風呂だな…。


 何度も抱いたせいで泉を汚してしまった。


 そう思いながら枕元の時計を眺める。


 …まだ5時過ぎだ。


 …もう一回寝るか。


 泉をそっと抱きしめながら眠りにつく。





 

 「透っ!!招き猫がたくさん売ってるねっ!」


 隣を歩く泉が嬉しそうに声を上げる。


 「泉、転ばないように気をつけてね。」


 泉の手を握る。


 


 川越にある喜多院に来ていた。


 ここでは毎年一月三日にダルマ市が開催されている。


 今日はまだ元旦だったが既にダルマやら招き猫やらを売る店や食べ物を売る屋台やらで賑わっていた。


 なるべく人混みににらない時間を選んで来たつもりだったが流石に元旦は仕方なかった。


 人混みは苦手だった。


 軽いめまいを覚えながらも隣にいる泉を楽しませたいと意識を保つ。


 「とりあえず先にお詣り済ませよう。」


 参拝客の列に並んで順番を待つ。


 「あれっ…誰だろう。ちょっとごめんね。」


 泉がポケットに手を入れて携帯電話を取り出す。


 「…もしもし?」



 泉が誰かと話し出す。

 

 泉が転ばないように肩を抱きながら列の流れに乗って前に進む。


 「透…真実も今ここに来てるみたい。」


 通話を終えた泉がそう言った。


 「…そうなんだ。偶然だね。こっちくるって?」


 「うん。お詣り終わったら合流しようって。」


 …それなら年始の挨拶も今日できるな。


 …しかし真実1人で来たんだろうか…。



 

 そう思いながら気づけば透達の順番が来た。


 

 賽銭箱の前に泉と立ち、参拝する。


 願うことは毎年同じだ。


 …今年も泉と元気で過ごせますようにっ!!



 切実にお願いして隣に立っている泉を横目で見る。


 …今日も相変わらず綺麗で可愛い…。


 参拝を済ませて顔を上げた泉が振り向いてしまい目が合った。


 ドキドキしながら何とか微笑む。


 


 真実と合流する前にお守りが欲しいと言われて販売所に向かう。


 「透はちょっとここで待ってて?」


 人混みが苦手なのを察してくれた泉がスッと販売所の中に入っていった。


 数分後嬉しそうにお守りを買った泉が戻ってくる。


 「今年はお揃いのにしたんだっ」


 泉に小さな紙袋を渡された。


 「ありがとう。大事にするよ。」


 そっと紙袋ごと泉を抱きしめる。



 っとその瞬間背中に鈍い痛みと衝撃が走った。


 「っ!?」


 「お前ら公共の場で何やってんだよ?」


 …聞き慣れたこの声。


 「シンジっ…。」


 「ようっ!今年も宜しくなっ!」


 痛みに耐えながら振り向くとイケメンメガネ…泉に似た真実が握った拳を摩りながら爽やかに挨拶をする。


 「っ今年も宜しくってグーで殴ったの!?」


 泉の前だ…情けない姿は見せたくないっ…でも物凄い痛かった…。


 「透…大丈夫?」


 泉が殴られた背中を摩ってくれる。


 …ああ、泉は優しいしやっぱり可愛いな…。


 思わず心配そうな顔の泉に見惚れてしまう。


 そんなオレを見て真実がため息を吐いた。


 「…相変わらずみたいだな。」


 「…まあね。」


 


 「水野さんっ!今年も宜しくねっ★」


 ふっと横から泉を奪われて驚いてしまう。


 …長い黒髪の…浅川さん。


 こともあろうか泉を抱きしめながら新年の挨拶をしだす。


 「っ…!!」


 思わず泉を取り返そうとして気づく。



 「…真実…浅川さんと一緒に来たの?それとも浅川さんと一緒にいたの?」


 「ん…まあ…それとも…の方だな。」


 真実が照れたように笑う。


 「…浅川さんと付き合ってたんだ?」


 「…最近だけどな。」


 …驚いた。けど良かった。


 ずっと一緒にいて見ていたが真実の側に寄ってくる女の子は沢山いたけれど、真実と一緒にいる女の子はいなかった。


 楽しそうに泉と浅川さんを見る真実はとても優しい顔をしていた。


 

 「やっぱり兄妹揃って美人ねえ…。」


 浅川さんが泉を抱きしめながら笑う。


 「…浅川さん、そろそろ泉を返してもらってもいい?」


 浅川さんに睨まれる。


 「透クンってば私の水野さんといつの間にか結婚しちゃったくせにケチくさいこと言わないでよ。もう透クンなんて水野さんにフラれちゃえば良かったのにっ!」


 …とんでもないことを言い出す。


 「…。」


 「…悪い…悪気は無いんだと思うぞ。」


 真実がすかさずフォローしてくれる。

 

 浅川さん…何て恐ろしい子っ…。


 泉を連れて歩き出してしまった浅川さんの後を男2人でついていく。


 …困ったような顔で時々振り返る泉と、泉を独占できたと得意げな浅川さん…。


 くそう!正月早々に…。


 浅川さんめっ!



 こうなったら仕返しだ。


 「シンジっ!」


 隣を歩く真実の腕に抱きつく。


 「なんだよっお前までっ!」


 なぜか真実は赤くなるが構うものか!


 「今日は男2人で仲良くっつ?!」


 「やだっ透っ!」


 泉が浅川さんを振り切って抱きついてくる。


 …あ、イヤ浅川さんを妬かせようと思ったんだけど…。


 泉には効果的面だっだようであっさり泉奪還は成功した。



 「…もう、2人揃って透クンの事好きねえ…。」


 諦めたように笑う浅川さん。


 「お前はオレで我慢しとけ。」


 そんな浅川さんの隣に立つ真実。


 …2人揃って美男美女…良くお似合いのカップルだと思った。




 


 

 



 

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