第15話 決着、ボルケーノドラゴンとの死闘

「さぁー、ドラゴンめ。どんな攻撃を……。って、あぁああ!」


 ナルが驚愕の声をあげて、一段高いところにいるボルケーノドラゴンを見上げた。


 ボルケーノドラゴンは大きく開けた口から炎のブレスを吐き出したのだ。

 僕たちに向けて広範囲の炎攻撃が襲いかかる。


 ――くっ、これは躱せない……!


 僕は咄嗟に【スキルブレイク】を使用し、迫りくる炎に向けて斬撃を放つ。


 シルバーダガーが捉えると炎は二手に分かれ、僕たちの後ろにある岩盤の壁面に直撃した。


 岩盤は音を立てて崩れ、火が僕たちの周りを囲うように燃え盛っている。


 ――グォルアアアアア!


 なぜ炎がかき消されたのか解せないといった様子のボルケーノドラゴンは怒り狂ったように雄叫びをあげていた。


 先程からのワイバーンと連戦になる上に、辺りを炎に囲まれての環境下だ。

 いつもより体力の消耗が激しい。


「二撃目が来るぞ!」


 ボルケーノドラゴンは両方の前足を振り上げたかと思うと、そのまま力任せに地面へと叩きつけた。

 途端、叩きつけられた地面が深くえぐれ、岩盤を削りながら衝撃波がこちらにやって来る。


 ――くそっ! 物理的な攻撃は【スキルブレイク】じゃ打ち消せない!


 僕はルアの前に駆け寄り衝撃波をガードするが、掘り起こされた岩盤に足を取られる。


「リジル! ルアお姉ちゃん!」


 ルアとともに後方へと押し出され、えぐれた岩盤が檻のように僕たちの周りを囲ってしまった。


「ルア、無事か……?」

「は、はい。リジル様が庇ってくれたおかげで……」


 何とか攻勢を凌いだは良いものの、前方を岩の檻に囲まれ、身動きが取れない状態になってしまった。

 しかも先程ボルケーノドラゴンが放ったブレスが飛び火したのか、背後からは炎が迫ってくる。


 ――くっ、どうしたら……。


 そこで僕は右手の甲に浮かんだスキル一覧を一瞥し、思い当たる。


===========

・命中率上昇(範囲中)

・スキルブレイク

・物質破壊

===========


 ――そうだ、【物質破壊】のスキルを使えば……!


 僕はルアからバトルアクスを受け取り、【物質破壊】のスキルで前方の岩盤に向けて振り払う。


「ハァッ!」


 バトルアクスが命中した岩盤の山は音も立てずに消滅し、僕はルアの手を引いて炎から脱出することができた。


「よかった! 無事だった!」


 外にいたナルと合流し、ルアから受け取った回復薬をすぐさま飲み干して態勢を立て直す。


 次はこちらから仕掛けたいところだったが、先程の攻撃でボルケーノドラゴンの周辺は壁のように岩で覆われ、天然の防御壁となっていた。


 このままではドラゴン種の核がある胸部は狙えない。


 炎に囲まれた中でこの暑さだ。

 なるべく次の攻撃で決着を付けたい。


 とすれば……、


「ナル、頼みがある。僕を乗せて、ボルケーノドラゴンを囲う岩壁に突進してくれないか?」

「ええ!? そんなことしたら仲良く壁にぶつかっちゃうよ?」

「大丈夫、僕に策がある。ルア、投擲用の槍とショートソードを渡してくれ」

「は、はい」


 僕は右手に投擲用のジャベリン、左手にショートソードを構え、ナルの背にまたがる。


「じゃあいくよ!」


 ナルの掛け声で、ボルケーノドラゴンへと一直線に向かっていく。


 ボルケーノドラゴンが岩壁の上から炎のブレスを放ってくるが、それを【スキルブレイク】で弾く。


 そして射程距離に入ったところで、僕は【物質破壊】のスキルを乗せてジャベリンを岩壁に投げつけた。


 ジャベリンの切っ先が触れると、その周辺の壁が消滅し、ボルケーノドラゴンの胸部がむき出しになる。


「ナル、今だ! 突っ込め!」

「りょーかい!!」


 僕はナルに騎乗した状態で【命中率上昇】のスキルを使用し、ボルケーノドラゴンに向けてクリティカル攻撃を叩き込む。


 ――グギャァアアアアアア!!


 捉えた一撃は、確かに核である魔石を砕く手応えがあり、ボルケーノドラゴンは一際大きな咆哮とともに地響きをあげて倒れ込んだ。


「やったあ! さっすがリジル! ちょーつよい!」

「リジル様! やりましたね!」


「よかった。二人とも、怪我はない?」


 僕たちはお互いに健闘を称え合いながら、笑顔を交わす。


 と、そこでルアが何かに気付いたように声をあげた。


「リジル様、見てください。あれ、ヒールストーンじゃないですか?」


 ルアの指差す方を見ると、賢者アンバスが見せたものと同じ、緑色の石があった。

 ボルケーノドラゴンの背に隠れていて見えなかったが、辺り一面に転がっていて幻想的な光景だった。


 これでファーリス村の人たちも、獣人の村の人たちも助けることができそうだ。


 紆余曲折はあったが、こうして僕たちは大量のヒールストーンを入手することができることができたのだった。

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