第14話 決戦、ボルケーノドラゴン
「ボルケーノドラゴン、ですか?」
僕の質問にバグーは頷く。
「ああ。普通は火山にしか生息しないと言われる凶暴凶悪なモンスターだ。そいつが近くの……、ほら、あそこに山が見えんだろ? そのボルケーノドラゴンが住み着いちまったおかげでここいら一帯はウソのように暖かくなっちまった」
そういえば不思議に思っていた。
獣人の里は寒冷地だと聞いてきたのに、ファーリス村とさして変わらない気温だったのだ。
バグーの続けた話を聞くと、ボルケーノドラゴンが山に居座ってからというもの、周辺の気候に異常が生じてしまったらしい。
「そんな……。ボルケーノドラゴンと言えば災害級に指定されるモンスターじゃないですか」
「ああ、その通りだ。ヒールストーンはあの山で採れてたんだがな、今はボルケーノドラゴンがいることで近づくことすらできねぇ」
ボルケーノドラゴンは魔王の残滓の影響を受けて、元より強力なドラゴン種が変化したモンスターだと言われている。
住み着いた土地の気候を変化させてしまうほどの力だ。
近くに住む村を攻撃することも珍しくないとも言われているため、このままでは獣人の里に被害が出てしまう可能性もあるだろう。
「それならやっつけちゃおうよ、リジル!」
僕も考え始めていたことをナルが声に出して叫んだ。
「ナル。おめぇは確かに、獣人の中でも最強の存在であるフェンリルの血を継いでいる。ただな、いくらワイバーンを圧倒したからって言っても、そのブロンズランクのニイちゃんとじゃあ危険過ぎる」
「大丈夫だよ、リーダー! リジルはナルにもよゆーで勝っちゃったんだから」
「……は? それ本当か? だってそのニイちゃんの紋章は欠落紋だろう? どうやってそんな紋章で……」
いくつもの疑問符を抱えているバグーに対し、ナルはまたも元気な声で応じる。
「安心して、リジルはちょー強いから! ちょっくら行って、やっつけてきちゃうよ!」
***
バグーから受け取った地図を元に山に入ると、そこは凄い暑さだった。
何もしなくても汗が吹き出てきて、装備したショートソードが熱を持つほどだ。
「ナル、暑いのにがて……」
「だ、大丈夫ですか? ナルちゃん」
先程までの元気と勢いはどこへやら、ナルは山に入るなりぐったりとした様子だった。
まあ、寒い地域で生まれ育ってきたのだから無理もないかもしれないが。
道中、何度かモンスターを撃退したが、確かに異常が発生しているのだろう。
レッドウルフにフレアスライムなど、寒冷地ではまず出没しないモンスターばかりだった。
そして、そろそろ山の中腹に差し掛かろうかという時、
――グルグァアアアアア!
ドラゴンの咆哮が聞こえてくる。
獣人の里で聞いた時とは違い、怒気と殺気を孕んだ叫びだった。
まるで山への侵入者である僕たちに対して威嚇するかのような咆哮だ。
「す、凄い威圧感ですね、リジル様」
「ああ。ルアは戦闘が始まったらなるべく後方に位置してサポートしてくれ。前衛は僕とナルで務める」
「はい、分かりました!」
「おっけー! 任せとけ!」
ルアの【収納魔法】で所持している装備品やアイテム、戦術の最終確認を行った。
僕とルア、ナルは頷き合い、山に君臨する脅威と相対するため、先へと進んでいく。
そして――、
――グルォアアアアアアアア!
その脅威はそこにいた。
ボルケーノドラゴンは凄まじい熱気を帯びていて、燃え盛る炎をその体に纏っていた。
ジャイアントオークの時などとは比較にならない攻撃性を肌で感じる。
周りには、ワイバーンが1、2、3……7匹か。
ボルケーノドラゴンが従えているのだろう。
ボルケーノドラゴン自体にはもちろんだが、空中から突進してくるワイバーンにも注意を払う必要がありそうだ。
「リジル様、来ます!」
ルアの声を背中で受けて、僕はショートソードを構える。
最初に仕掛けてきたのは1匹のワイバーンだった。
僕はワイバーンの突進を躱しつつ、【命中率上昇】のスキルを使用して初級剣技のソードバッシュを放つ。
ショートソードが俊敏なワイバーンを捉え、撃退することに成功した。
が、一息つく間もなく、残りのワイバーンが滑空してきた。
「ルア! 短剣を頼む!」
「はい、リジル様!」
僕はルアが【収納魔法】から取り出した2本のシルバーダガーを受け取る。
ショートソードと装備を入れ替え、深く腰を落として双剣の構えを取った。
「ハァアアアア!!」
――短剣専用の中級剣技、スネークバイト。
僕は先に突進してきたワイバーンに初撃を見舞うと、返す二撃目で次のワイバーンを突き上げる。
三撃目、四撃目、五撃目と放ち、襲いかかるワイバーンを迎撃した。
通常は剣よりも攻撃力の劣る短剣だが、クリティカル攻撃が繰り出せるのであれば話は別だ。
【命中率上昇】スキルのおかげで、動きの激しいスネークバイトを繰り出す最中でも、その一撃一撃を確実にワイバーンの核へと叩き込むことができた。
「とぉりゃー!」
残る一匹のワイバーンはフェンリル化したナルが、かぎ爪の付いた横払いの一撃で仕留める。
無事、ボルケーノドラゴンの周りにいたワイバーンは全て撃退できたようだ。
「さぁて、次はいよいよ大ボスのお出ましだね」
僕はナルの声を受けて、咆哮するボルケーノドラゴンと対峙し、構えを取った――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます