第46話 薬は良薬?毒薬?調査(3)(サンジュリアン視点)
2人の間にしばらく沈黙が流れた後、静かにヒューリスティが話し始めた。
「薄い青なので死に至る毒ではないでしょう。ですが、2、3個飲めば別です。何個飲む処方でしたか?」
「特に説明はなかったが………2粒あった」
「そうですか。2粒飲んだ場合致死量に至るかは成分を詳しく調査しないとわかりません。ですが2、3日くらいは昏睡状態になるかと」
ヒューリスティは淡々と俺に説明してきた。
「ま、待ってくれ。薬の端っこしか削ってないじゃないか。真ん中の成分も入れたら違う結果になるんじゃないか?」
「何言ってるんですか。端だろうがなんだろうが、毒が混ざっていたことに変わりはありません」
「そりゃ、そうだけどさ。でも………」
「まぁいいでしょう。毒の成分を詳しく調査するには、全て粉状にした方が早いですから」
そう言いヒューリスティは、棚から皮袋を取り出し残っていた黒い玉を入れた。そして俺に金槌を手渡した。
「??」
「粉々にしてください」
「え?」
「金槌で叩くんですよ、私はあまり力仕事は向きませんから」
「え、いや、魔法とかで出来ないん?」
「爆発させて粉々にすることも出来ますが、一部焼けてしまうかもしれません。なので、このやり方が1番です」
「わかったよ。やりゃいんだろ」
俺は金槌を構え、皮袋の上からガンガン打ちつけた。
けれども、かなり硬いようでなかなか手応えが無くならなかった。
「けっこうな力で叩いているんだがダメだ」
「サンジュ……貴方もう少し騎士団の訓練を真面目にやった方が良いのではないですか?」
ヒューリスティが残念な子を見る目で俺を見てきた。
悔しくなり更にガンガン打ち付けたが、どうやっても壊れそうにない。
「はぁー。もうダメだ。手が痛くなってきた。少し休憩させてくれ」
「だらしないですね」
そう言いながらヒューリスティは皮袋を取り中を覗き込んでいた。
覗き込んだ後、ヒューリスティの顔が驚きに変わっていた。
「どうしたんだ?ヒュー」
「これは………手で割れる物じゃないですね」
どういうことだ?俺はわからなくて、ヒューリスティから皮袋を奪い取り中を覗いた。覗いたら透明なビー玉のようなものがあるだけだった。
俺は皮袋から玉を摘み上げ取り出した。
「あんなに叩いたのにキレイな玉のままなのな」
俺は不思議に思いながらも、取り出した玉をライトにかざしながら見てみた。そうしたらほんの少し淡くオレンジ色に光輝いているように見えた。
「綺麗だな」
俺は素直に感想を漏らしていた。
「えぇ、本当に。まさか、毒の殻の中にこんなものが隠れているなんて誰も思いませんよ」
「ん?これは毒じゃないのか?」
「いえ。毒か薬かはまだわかりません。ただとても貴重な毒か薬ということだけはわかります」
「なんだそれは」
「それは魔法玉です。魔法玉には2種類あります。薬草で薬の素を作り、増強魔法をかけて作る物。そしてもう一つは、魔力を結晶化させて作る物です。基本的に我が国で魔法玉と呼ばれる物は前者ですが、今貴方が手にしているのは魔力の結晶です」
「え?そんな貴重なもんなん?」
「ええ。私は初めて見ました」
「ほぉえー。そ、それで、これが何かどうやって調べればいいんだ?」
「………実物を見たのは初めてでして。確か魔法陣が魔法玉の中に浮かんでいるからそれを読み解けば分かるはずです。ただ、文献は読んだことありますが、魔法陣を全て覚えているわけではないので………」
「よし!手分けして確認しようぜ」
「え、ええ。ただ、魔法陣を確認する方法から探しましょう………」
「………お前、魔法師団長の息子だから任せろとかなんとか言ってたけど。お前もまだまだだな」
俺はニヤニヤしながらヒューリスティをひやかしながらも、毒じゃないかもしれないと心が軽くなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます