第43話 主君からの通信 (騎士団長視点)
サンジュリアンが去ってからほどなくして、通信具が淡く光りだした。私は若干億劫に思いながらも通信具に手をかざし通信を受け入れた。
「手に入れたか?」
「いえ」
「そうか………息子相手だと騎士団長もかたなしだな」
「申し訳ございません。意外にも息子は立ち直りが早く………ちゃんと精神的に追い詰めて判断を鈍らせてから問いかけたのですが」
「まぁ良い。お前のことだ。今手に入れなくても問題ないと判断したのだろう。で、これからどうするのだ?」
「息子は騎士達が使っている薬師のところに行くか、もしくは、私を避けるため、魔法師団の薬師を頼るか、どちらかかと。息子の幼馴染である魔法師団所属のヒューリスティには密偵を送り込んでいるため抜かりはございません」
「そうか……しかし、私は今回はレイモンド側なんだがな。そうお前の息子に素直に伝え、薬を渡させられんか」
「貴方様が前王妃様の味方など誰が信じましょう」
私は皮肉を込めた口調で返答した。
軽く笑った声が聞こえた後、
「エンフィーネは美しい女だった。帝国との同盟に必要だったとはいえ、愛のない結婚をさせて良い女ではなかった。同盟時の条件に第二王妃を娶らないとあったにも関わらず、早々に破った私を帝国から守ってもくれた。だから、今回エンフィーネが犯した罪が明らかになることだけは避けたい………心して任務を遂行しろ」
「御意」
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