第42話 騎士団長への疑い(サンジュリアン視点)
驚愕の事実ばかりを突きつけられ混乱し沈黙を決め込んでいたが、心の中では悪態をつきまくっていた。
"なんだよ、後継者として認めないって。父上が勝手に俺のこと引き取ったくせに"
"レイモンドの側近になってもいいって今更なんだよ。てか、俺を後継者から外せば俺が孤児の生まれだろうが父上には関係ないってか!?"
"薬を使って側近に返り咲けって、なんだよ。薬が毒薬なら隠滅して感謝されるかもしれないけど………"
と、ここまで心の中で考えギクリとした。
"なんで薬のこと知ってるんだ?"
"落ち着け。もしかしたらこれは罠かもしれない"
そう思った矢先、父上が口を開き、手を差し出してきた。
「私が何の薬か調べてやるから、渡しなさい」
全身から脂汗が出るような嫌な緊張が身体を駆け巡った。
"考えろ。父上は何を考えてる?"
父上は俺の父である前に、家の中でも国王第一主義だった。国王はレイモンドと表立って敵対してはいないが、レイモンドの味方ではない。
「薬とは何のことですか、父上」
「何を言っている。今日教会から預かっただろ?」
"父上はおそらく、この薬を毒薬だと思ってる………毒薬だったら………レイモンドに不利だ"
「何を言っているか分かりません。それにそもそも私がもし預かっていたとしても何故知っているのです?」
俺は当然の疑問を口にした。
「私は騎士団を統率している団長だぞ。密偵ぐらいいくらでもいる。さぁ、強情張らずに渡すんだ。それはお前が思ってるよりも重要なものなんだ。確実に調査してからお前が使えばいい」
父上はさも当然の要求のように言ってきた。
「何のことだかわかりません」
俺は父上の目を見て凄んでみせた。
父上はフッと笑ったかのように見えた後、
「混乱の中でも惑わされないお前は凄いよ」
父上は追及を諦めたようで、もう立ち去れ、というような手振りをした。
俺は父上の部屋を出たところで、ハァーっと息を吐き、脂汗がヒンヤリ冷えていくのを感じた。
"父上は本気で俺から奪う気はないみたいだが、時間がない。国王派、いや、王妃派にもう薬のことがバレている。薬を早急に調査して決着をつけなければレイモンドに迷惑がかかる"
俺はレイモンドに今回の件を頼んだことは間違いだったことに気付いた。レイモンドを動かすということは、周りの敵対派も動くことに他ならなかった。
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