第24話 ディアと東屋で密会
庭園の奥まった所にある白い東屋にディアを連れていった。
「ここに座ろう」
東屋はベンチしかないためディアの隣に座った。いつもは机と椅子があり対面だったが、今日はかなり距離が近い。
"やはりベンチの東屋にして正解だったな"
俺は久しぶりにディアに会え、近くに座れたことで幸せな気分だった。このまま愛を囁くか?とか思ったがロデルナの対応方法を教えてやらないとな、と思い直し話し始めた。
「実は、ロデルナについて話があってな」
俺はロデルナの陳情書を見せながら、
「ロデルナは現在領主不在だ。代理人はいるが管理能力がなく放置されている。現状、ロデルナを支配しているのは教会だ」
俺はロデルナについて淡々と話した。
「ロデルナは四年前から領主不在により領地は荒れ民は飢えていった。衛生面も整っていないため病気にかかりやすい。医者もいないため、大人でも感染症で命を落とす者が多く、年々孤児も増えていった。教会はさすがに運営する孤児院に孤児を養っておけず、苦肉の策で孤児の年長者に教会のそばで屋台を切り盛りさせ、生計を立てさせた」
俺はここで言葉を区切り、この間ロデルナ市場を見てどう思ったか聞いてみた。
「市場を見てどう思った?」
「活気がありました。ただとても小さい屋台が軒を連ねていて、衛生的にはあまりよくないな、と思いました。値段は驚くほど安かったです」
「そうだ。値段が驚くほど安いから孤児が開いても民は買い、援助してやろうという気になる。そしてそんなことを繰り返していたら本当の市場に成長したというわけだ」
そう言い言葉を続けた。
「孤児たちはある程度稼げるようになると教会にお金を寄付し、教会はそれで新しい孤児たちを養っていった。こうして、教会と孤児と市場が密接に連携するようになり、現在ロデルナ市場を支配しているのは教会だ。市民も市場で生計を立てる者が出てきており領主に納める税金も教会に一部寄付と言う形で領主には上納していない。………領主に渡してもろくな政策を打たないから、教会のご機嫌をうかがった方が利益があるのだろう」
俺はここでディアの手をとり握った。
「教会を手なずけろ」
「えっ?」
急に手を握られたこと、そして、よくわからないことを言われたためディアは動揺していた。
「二年前、ロデルナで伝染病が流行った際、宰相が多額の金を教会に寄付している」
ディアはハッとした顔をし、俺が言いたいことを理解したようだ。俺はディアの耳に口を近づけ、誰にも聞かれないよう囁いた。ここで誰かが見ていたら、きっと愛を囁いているかのように見える態度でこう続けた。
「ディア、教会内に必ず当時のことを覚えている奴がいる。探しだしてくれ。幸いなことに教会幹部の娘が不治の病に侵されている。治癒魔法の使い手は送ることが出来るから必要になったら言ってくれ」
俺はそれだけ伝えると身を離した。
「ロデルナを良くするためには、教会と上手くやった後、適切な領主を据え孤児対策に乗り出すことだ。次期領主はロデルナグループのリーダーだ。本人は隠しているがな。親を早くに亡くしているため領主教育など受けていないのだろう。だが、まだ誰にも染まっていないともいう。領主につけ私たちの味方にしてくれ」
俺はロデルナの陳情書を持っていき、ロデルナは孤児であえいでるから孤児対策すればいいよ、と伝えるつもりだったが、ついでにお願いしようと思っていた母上暗殺で手助けした者を探してくれ、という方が主旨になってしまう伝え方になってしまったな、と思った。が、まぁ、孤児対策した方がいいよ、とは伝わったと思うから良しとしよう。
話を終え、ディアに席を立つよう促し別れた。
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