第22話 ディアナ嬢に会えない
ディアナ嬢と気まずいまま別れてしまったためなんとか挽回しようと思っていたが、あの日から授業でしか会えていない。登校も選択科目を取らない俺はディアナ嬢と合わなくなってしまった。
"ディアも不要だと思うが………勉強好きなのか?"
学園に通ったらディアナ嬢と一緒にいる時間が増えると思ったのにビックリするほど会わない。それもそのはずで魔法学とダンス以外一緒じゃないからだ。
ほとんどの学生は家庭教師に習っていても最後の学期末テストに備えて選択科目も取るらしいが、俺は取らなかった。自慢ではないが家庭教師から習ったことは全て頭に入っているし、前世の記憶もあるため授業を受けること自体が苦痛だった。
"でもこれならディアと一緒に選択科目とればよかったなぁ"
そんなことを考えながら暇潰しにと公務を手に取ったら、そこにロデルナの貧困について陳情があがっていた。
領主ではなく直接王宮にあげてくる辺り、領民が本当に困っていることがうかがえる。
"領主は誰だったか……"
資料を手に取ると、領主の名前は空欄で代理名になんとヒロインの養子先であるドレスデン男爵の名前があった。
どうりでロデルナでヒロインを良く見かけるわけだ。
資料によるとドレスデン男爵の兄がロデルナを治めていたが、兄が早くに亡くなったらしい。兄の嫡男はまだ幼かったため代理人としてドレスデン男爵が治めている。
ただ、ドレスデン男爵は有能ではなかった。領地2つの掛け持ちは苦労なのだろう。ロデルナの領地は管理されていないに等しい。
"嫡男は何歳だ?"
俺は資料をめくると一つ年上であり、ロデルナの領地代理プロジェクトリーダーに今年なったことがわかった。
"リーダーじゃなくて、もう継げよ"
確か乙女ゲームで、ロデルナはサンジュリアンルートだった。ヒロインはルート選択した攻略対象と同じプロジェクトに入るため、ヒロインがサンジュリアンを選んだ場合、ヒロインは治癒魔法を使って孤児や病人達を救い、ロデルナの人々に聖女様と慕われた。その一方、第一王子は陳情書を揉み消したことを弾劾された。
おそらく乙女ゲームの俺は、ロデルナの孤児院で伝染病にかかった母上を思い出すため、ロデルナに公務でも関わりたくなかったのだろう。あと、本当はロデルナで市場が出来た際、ゲームで伝染病が流行る可能性を知っていたにも関わらず母上に警告出来なかった自分を悔いてもいたのだろう。
前世を思い出した俺は、少し客観視できるため仕方なかったのだと気持ちを落ち着けることができるが………。
そんなトラウマよりもゲームと同様にディアナ嬢が「聖女を虐めるディアナ」と言われないようサンジュリアンルートを潰そうと思う。
幸いディアナ嬢はゲームと違いロデルナの領地代理グループに入ったため是非孤児対策に乗り出してもらおう。
"この陳情書を持って、ロデルナ領地代理グループに遊びに行くか"
俺は良いことを思い付いたという顔で揚々と執務室を後にした。
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