第15話 初めての昼食
昼食は侍従によって庭園に用意されていた。
この学園は貴族だけの学園なためセキュリティは万全だが、侍従や護衛騎士を自由に連れてきても良いことになっている。そのため、身の回りのことは全てその者たちに任せられる。ただ、生徒同士の交流に侍従や侍女がいると取りにくいという風潮もあり連れてこない者も多い。
俺はあまり交流を考えていないため普段通り連れているが、本当は交流して側近候補を見つけたほうが良いのかもしれない………まぁ、面倒な輩が多いのも事実だからおいおいにしよう。
ディアナ嬢は本当は連れてこない予定だったようだが、俺が公爵に付けるよう提案した。だれ恋では付けられていなかったためヒロインに意地悪してようが止められなかったし、もしかしたら濡れ衣であろうが証明もされなかった。今回は助言も出来る護衛を兼ねた侍女を伴ってもらっている。
「初めて食事を共にするな」
俺は庭園に用意された椅子に座った後、そう口にした。
「そうですね。6歳のときからティータイムか庭園散策でしたものね」
微笑みながらディアナ嬢が答えた。
長い年月の付き合いだが、共にした時間は社交界で出会う知人くらいの時間しか共有していない。
「私はナティアグループに入ろうと思うが、ディアナ嬢はどのグループに入るか決めたか?」
俺が"ディアナ嬢"と口にした時、ディアナ嬢はふと寂しそうな顔になったがすぐに元通り笑顔になり、
「私はロデルナグループに入ろうと思います」
と言った。俺はディアナ嬢の表情の変化には気付かず、
「そうか………。私と同じグループに興味ないか?」と返した。
「殿下と同じグループに入ったら、成果を挙げられませんわ。私も殿下の婚約者として成果を挙げ、妃としての立場を確固たるものにしたいと考えておりますの」
俺は、"殿下"と呼ばれたことに寂しく思ったが、気にしないことにし話を続けた。
「確かに、同じグループだと成果を挙げたら全部私の手柄にしてしまうかもしれないからな」
俺はにこやかに笑いながらそう言った。親しく話したいと思えば思うほどひきつった笑顔になるのは気のせいか……。心なしかディアナ嬢も張り付いた笑顔に見えてきた…。
馬車の中やエスコート中の方が、自然に会話ができた気がする。やはり面と向かって話すのは緊張するな。
「ロデルナで決まりなら、午後の紹介説明は不要だな?学園後と伝えたが、これから市場へ行かないか?実はロデルナの市場に行こうと思っていたんだ」
「あら、さっそく視察できるなんて幸運ですわ」と言ってくれたため、昼食を切り上げ平民服に着替え、正門で落ち合うことにした。
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