第9話:試験開始!!黒帝黒という女。
もうダメだ終わった……。
俺は椅子に座っていた。
全身の力が抜けて今にも倒れそうだった。
全身が焦りで震えて、汗が大量に出てくる。
頭の中を駆け巡る感情は諦めと焦り。
この受験は当日結果が分かるようになっているのだ。
どんどん呼ばれ教室を出ていく合格者達。
残され不安になりながら呼ばれるのを待つ俺。
こうなった原因は試験開始前にさかのぼる。
あらすじ
この世界に住んでいる明山平死郎に転移した主人公の俺は、ひょんなことから知り合った英彦と共にもう一度免許を取るために試験を受けることになったのだが………。
あっ、さかのぼりすぎた。
では今度こそ試験開始前から見ていきましょう。
試験当日。
俺達は試験会場である付喪連盟に来ていた。
建物の中はなんというか近代的な立派なそんな感じな建物である。
つまり、立派過ぎて表現できないのだ。
英彦もそのすごさに驚いている様子である。
そういえば、風の噂で聞いたのだが、こういう近代的な技術は数市という所のものらしい。
俺はてっきり、飲み屋みたいな所で情報収集して依頼をこなすような仕事だと思っていたが、ここまでとは思っていなかった。
「英彦。付喪連盟って凄いな」
「俺も初めて中に入りましたが、実際に見てみるとすごいですねー」
俺達が付喪連盟に感心していると、後ろの方に人だかりができていた。
「やったわ。間に合ったのよ。途中で変な奴らいたけど何とか間に合ったわ~」
その中心には一人の女の子が遅刻しなかったことに喜び、自らを自画自賛してはしゃいでいる。
髪の毛は黒色の長髪で、可愛い美少女的な感じの顔。
なので、今日試験を受けに来た者達の前に絶世の美女が姿を見せたということになる。
「あの………消ゴムをあげます。使ってください」
「おい、抜け駆けするな。なぁ、お嬢さん試験後に俺とお茶しない?」
「あなたのために今作りました。セーターです受け取ってください。」
彼らは試験を受けに来たことも忘れて、彼女にナンパをしたり、プレゼントをあげたりと好き放題。
顔がいいやつはうらやましいもんだな……と思いながら俺は英彦とその少女を気づかれないように睨み付ける。
「あーごめんなさいね。試験後は用事があるし、荷物がいっぱいなの。」
そう言って、彼女を囲んでいる者達からの要望をすべて断りながら少女は歩いてくる。
しかもその女の子はこちらに向かって来たのだ。
俺の周りには英彦以外誰もいない。
………というかその女の子の周りを取り囲んで見守るような仕草をしているのが数人いるからである。
その数人の囲みをこえてこっちに来ているということは?
英彦の知り合いだろうか?
きっとそうだ!!
それに俺には見覚えがない女の子。
女の子は俺達の前に立ち、キラキラ黒く光る目でこちらを見て一言。
「明山じゃない。元気にしてた?
まさかあなたもここに来ているなんてね〜」
もう一度言おう。俺はこんな美少女知らない。
先程まで少女を囲んでいた皆は驚いていた。
こんな美少女と何で知り合いなんだァァ……ということを思っているんだろうか?
分かる。マジで俺もなんでこいつは俺の事を知っているんだ!?
って状態なんだ。
もちろん、俺はこんな美少女を知らない。おそらく明山の知り合いだろう。
俺はいつも通り記憶がない設定を使って説明した。すると、その女の子も案の定理解してくれたみたいで。
「えっーと、私の名前は『黒帝(こくてい)黒(くろ)』。
名字がすごいなんて言われるのはちょっと嫌なので黒ちゃん 黒さん とでも呼んでね。
あなたとは知り合いというか…………友達…………。えっと~~。そう仕事仲間というような関係だったわ。」
そんなに無理して考えてくれなくてもいいのだが。
黒がそう答えたことで、英彦が少し可哀想な物を見るような目でこっちを見てきた。
やめてくれそんな目で俺を見ないで~。正直そんな目で見るのはやめてほしい。最終的に仕事仲間として認識された俺を見ないでくれ。
その時だった。
館内にアナウンスが流れ始めたのだ。
「あーあーマイクのテスト中マイクの………えっ!?
これ流れてます?
あっ、そうなの………。本当に?」
自信がないのだろうか? もっと自信をもってハキハキとしゃべってほしいな……なんて俺は考えていると。その声の主は咳払いをして、
「受験者の皆様に連絡します。受験者は試験場所に集まってください。
10分後に筆記テストを開始いたしますので遅刻しないように場所を確認して来て下さい。場所は………」
アナウンスが流れた途端に走り出す受験者達。
ただ突っ立っているのは俺だけだった。
みんなに置いていかれた。
俺にはなぜ皆が走り出したのかさっぱりわからない。
だが走らないといけない雰囲気であるのは確かだ。
ならば、彼らに着いていくしかない!!
狭い廊下を沢山の人が押されながら走っている。
先に進めば進むほど、他の場所から来た受験者が加わってどんどん走りづらくなっていく。
そんな中で押されながらも英彦を見つけた俺は、
「これはどういう事なんだよ。何で皆いきなり走り出しているんだ?」
「明山さんこの状況はですね。この試験の毎年恒例行事である。10分前着席です」
10分前着席、懐かしい響きだ。元の世界の学校を思い出す。
テスト前とかはよく、チャイムがなっても廊下で友達と話をしていて先生に怒られたもんだ。
「この10分前着席に間に合わないと失格になってしまうんですよ。
毎年の受験者は減ってきていますが、それでも今年は1万人以上の受験者がいるそうです。
こうなるのはあたりまえなんですよ」
もう前からも後ろからも押されて身動きが取れない。
「つまりもう試験は始まっているということなのか?
冗談じゃないこんなとこで終わってたまるか!!」
押されながらも前に進む。
足を止めたら最後、失格になってしまう。
とにかく前に、前に………。
「筆記テスト開始まで残り4分。」
アナウンスの声が響き渡る。
何とか間に合った。
もう体力の限界だ。
この調子で本当にこの世界無事に生きていけるのだろうか?
最近その事ばかり考えるようになってしまった。
「それもすべてあの綺麗な女の人のせいだ。次会ったら慰謝料ガッポリ請求してやる」
………と小声で愚痴をこぼす。
なぜ小声かというと、今は筆記テスト中だからである。
テスト中は集中しろと言われるだろうがこの問題では無理だ。
すべてマーク式のテストだからまだいい方だが、その問題の答えがさっぱり分からないのだ。
この世界の法律、歴史、八虐に遭遇した時の最も適切な手段、ルイトボルト教の神話問題など様々な問題が出題されている。
「知らねぇよ。そもそも八虐ってなんだよ………?」
これはもう仕方ない、分からない事なのだから。
せめて、すべての解答欄を埋めておこう。
すべての解答欄を埋め終わると時間が10分余った。
あとはもう神頼みである。
そして冒頭へ。
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