第10話:仮面武士・駒ヶ回斗

 筆記テストが終わりしばらく経つと、

どうやらテストの採点が終わったみたいだ。

合格者が次々と奥の部屋へ呼ばれて教室を出ていく。

まだ呼ばれたのは数人だ。大丈夫……!!

もしもこのまま呼ばれなかったとしても主人公補正というもので合格はできる。

自分にそう言い聞かせて不安を無くすつもりだ。

俺が不安になりながらも、呼ばれるのをじっと待っていた。

こればかりは、焦ってもしょうがない事なのだから。


「次、明山平死郎。」


「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


俺は思わず叫んでしまった。




 見事合格した俺は奥の部屋へ向かう。

すると、扉の前には警備員が2人立っていた。

おそらく侵入者を入れないためだろう。そして、俺が入ったと同時に部屋の鍵を閉めてしまった。

さすがに厳重に警備しすぎではなかろうか?

そう思いながら通らされた部屋を見てみると、すでに何人もの合格者が壁にもたれ掛かったり立っていたりしている。

奥の方にも扉があるのだが、外から鍵がかかっているみたいで誰一人この場から出ることはできないようだ。


「マジかよ。もしかして合格者が全員呼ばれるまでここで待機するのか…。」


試験だけで終わりかと思っていたのに、まだ何かあるのだろうか?

こんな監禁状態では不安になってしまうじゃないか!!


「あっ、明山さんじゃないですか」


その時、ふと聞き覚えのある声がした。

俺の元へ駆け寄ってくる二人。英彦と黒である。

どうやら、二人は俺が来る前にもう仲良くなっているようだ。

正直、人とすぐに仲良くなれる人は羨ましい。

元の世界でそんなことができたらよかったのにと思ってしまう。




 「明山さんも無事に合格できたみたいで安心しましたよ」


「ああ、何とかなるもんだな。そういえば英彦、何で俺らはこんなとこにいるんだ? 任命式でもやるのか?」


「明山さん何言ってるんですか? 試験はこれからですよ」


「はぁ?」


英彦が何を言っているのか俺にはよく分からない。試験はまだある? 筆記試験は終わったのにまだ試験を続けることになるのか。正直、もう合格したんだから帰りたい。


「あら明山見てないの? チラシの裏に書いてあるでしょ。

ほら試験内容は二つよ」


そう言って、黒が見せてきたチラシの裏には、確かに試験内容が二つ書かれていた。

そこには気になることが………。


「なぁ、この二つ目の試験内容に書かれている。

スライム試験ってなんだよ」


「やっぱり知らなかったのね明山。スライム試験って言うのはね」


黒によってスライム試験の内容が説明されようとしていたその時!!

時入ってきた方と反対側のドアの鍵が開いた。


「いや実際にルール説明を聞いた方が早いわね。」


「はっ? ちょっとせめて説明だけでも………。」


一旦話を聞こうと思ったのだが、予想以上に黒が引っ張る力がすごいので立ち止まることができない。

しかし、そんな中であることに気づく。


「お前あれだな。意外と筋肉質なんだな」


俺は力尽きた。




 目覚めると俺は広い場所に横たわっていた。

うっすらとしか見えてなかった視界もだんだんはっきりと見えるほどに回復している。でも、なんだか少しだけ頭が痛い。殴られたのだろうか?


「俺はいったい何を………」


「よかった明山生きてるわ。」


二人が心配そうに俺を見つめていた。


「明山さんは移動するときに転けてしまって、後ろから来る人々に三十秒間踏まれ続けてたんですよ。」


「三十秒!?」


「そうよ。三十秒間も踏まれ続けてもうペッチャンコ、まるで干物のようにペラってなってたわ。」


「干物!?」


ギャグマンガなどで見るあの状態、それに俺がなったって言うのだろうか?


「でも偶然あそこにいる仮面を被った人が空気入れの付喪神を連れてきてくれたからあなたは助かったのよ。」


空気入れで戻ったのか。そんなのあり得な…………。

いや、ここは俺の所の常識は通じない異世界。こんなこともあたりまえなのだろう。

そんなことより俺は命の恩人に礼を言わなければ。

そう思って辺りを見渡すと、一人の男が目に入った。




 その男は二本角の生えた仮面をしており、顔は目以外は仮面で隠れている。

まるで日本の鬼みたいな仮面をしている。手には日本刀らしき物を持っている。きっと剣士的な戦い方をするのだろう。

男には明らかに幾多の戦場を駆け抜けて来たような凄みがあった。


「あの~先程は助けていただきありがとうございました」


「そんなお礼などいらん。それにしても久しぶりに会うな。明山。どうした?

そんなキョトンとした顔をして、俺のことを忘れたか?

ほら中学生の時に同級生だった。『駒ヶ回斗』だよ。読みはこまが かいと。まさか…ほんとに忘れちまったのか?」


駒々お前もか………。




 「………という訳で紹介するよ。俺の中学の時の同級生であった(らしい)。駒々回斗だ。」


結局先程のように記憶がないということを説明して、二人に紹介した。


「お初にお目にかかる。駒々だ」


すると、誰もが彼に1つの質問しかしない。


「駒々さんは何で仮面を着けてるんですか?」


どうやら皆は駒々に興味があるようだ。


「それは顔を隠すためだ」


「いやそれは知ってます。

聞きたいのはどうして仮面を着けてるのかってことです」


「確かにそれは気になるわね」


すると、駒々は真剣な顔をして、


「お前達世の中には知らない方がいいこともあるんだぞ」


………と言ってきた。

顔を見られたくない理由でもあるのだろうか?


「あっ、そういえば皆さんスライム試験が始まりますよ」


「そうだった始まってしまう。急ぐぞ!!」


そう言って俺たちが向かった先には大勢の人が並んでいる。俺達はすぐにその後ろの方に並ぶ。前の方は見えなかったが、どうやらルール説明が始まったようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る