第3話:主人公は俺だ
彼こそがこの物語の主人公にして、間違って転生させられた男。
あの魂は今ここにいる明山平死郎として生きていたのだ。
明山平死郎18歳。俺はこいつになった。
なったというよりは憑依したの方が正しいかもしれない。
いや、やはり転生だろうか?
──とにかく、こいつの周りの人には記憶喪失だと嘘をついて誤魔化しての生活。
正直、こいつにはかわいそうなことをしたと思っている。
こいつの人生を後から来た俺が奪ってしまったのだから………。
しかし、あの女神が勝手にしたことだ。文句ならあの女神に言ってもらおう。
……という事なので、俺はこの世界を楽しむことにした。
これから始まる楽しい異世界ライフ。
でも、人と付喪神の世界は、俺が想像していた異世界とはかけ離れていた。
普通に人間界と同じような生活なのだ。
つまり、学校も仕事もある。ちなみに通貨は日本円だった。
お偉いさんが日本人なのだろうか?
まぁ、別に異世界だからって、そこまで認識するつもりはない。
でも、現実の世界と同じような生活なら俺もまだよかった。
ここは町から出たら、付喪神に襲われるし、恐ろしい魔王軍もいる世界。
平和とは程遠い最悪の世界、それがこの異世界なのだ。
──────────────────
俺はそんな事を考えていたのだが、どうやらバイオンには違うことを考えているように見えたらしい。
「まさか、戦うのが怖くなって、私から逃げる手立てを考えているのですか?
せっかく私に勇気を持って挑んできたというのに………。
ですが、私は売られた喧嘩は買う男です。あなたを逃がすことは決してないですよ」
「はぁ?」
常に上から目線のバイオンに俺は少しイラっとしていた。
なんだ? この変な奴は?
人の睡眠時間を邪魔しておいてこの偉そうな態度。
すごいムカつく。睡眠不足のイライラもあるかもしれないが、俺はすごく怒っていた。
でも、そんなことは露知らず、バイオンは更に一人で喋り始める。
「まぁ、ここで殺されてもあなたにもいい教訓となったじゃないですか。一時のテンションに身を任せるとこうなるって事ですよ」
まったく違うんだけどな……。こいつはただ戦いたいだけだろう。
そもそも、こんな魔王と自分を自称している奴が、こんな町中に来るはずもない。かりに魔王だとしてもなんで町中に魔王が1人で進軍してくるのだろうか?
だが、そんな奴だから………とは言っても、俺は煽られるのが好きではない。
そのため彼の発言を聞いた事により少しイラッときたので、
「お前こそ、さっきから何にもしてこないじゃないか?
俺はさっさとお前を倒して、二度寝の準備といかないといけないんだよ!!
お前のために使う時間なんて本来は無いんだよ!!
雑音を取り払うためなんだ。だから、さっさと来やがれ!!」
あいつの言う通り一時のテンションに身を任せてしまった。
煽りを煽り返してしまったのだ。
「ん?
いいでしょう。では、お望み通り殺して差し上げますよ!」
もちろん、バイオンは少しイラついた声を出しながら、殺気を漂わせている。
はぁ、俺はなんてバカなことを言ってしまったんだろうか。
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