第7話不自然な様子の宇佐美

7月に入り、全教科の期末テストを無事終えた金曜日の放課後──昼前のこと。

とめられていた部活動が再開されて、テストから解放された生徒の大半が部活動へと意識が切り替わっていた。


一応ではあるが、私も部活に所属しているが活動の予定はなく、宇佐美と下校したいのはやまやまではあるけれど、部活か恋人のどちらかで断られることは必然であり、下校は一人と腹をくくっていた。


椅子から立ちあがり、教室を出ようと扉へと足を向けたところで宇佐美が教室を訪れ、二人で下校しようと誘ってきた。

「由夏、良かったら一緒に帰らない?」

「えっ?う、うん......」


校舎を抜け、宇佐美と並んで下校していた。彼女と下校というのは久しぶりだった。

「蛍、静かだけどどうしたの?」

私は無言の彼女に遠慮がちに訊ねた。

「あっええっと......」

「私に関係のある何かだったりするの?」

「ええっと、明日って来れる?家に」

「うん、大丈夫。蛍こそお邪魔しても良いの?」

「うん、由夏に伝えたいことがあって......」

俯きながら、ぽつりぽつりと返す彼女が心配で仕方がない。


会話が途切れ、二人の間に沈黙が続き、彼女と別れる際、あまりの暗さに彼女に声を掛けることすら憚られた。

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