第6話解っていた答に

放課後になり、宇佐美が教室を訪れ、私の前で立ち止まり、気まずそうに両手の指先を合わせ、口を開いた。

「由夏......話があるから、来てくれない?」

「う、うん......手当て──」

私は彼女の左頬が赤く腫れていて、心配で訊ねた。

「大丈夫」

教室の騒がしさにかき消されそうな声で返した彼女。

彼女が教室を出ていくのを追い掛け、彼女の隣を歩かず、二歩ほど後ろをついていく。


私達は屋上へと続く階段を上がりきり、屋上に出られる扉の前に到着した。ドアノブに手を掛けて屋上に出ていく彼女の後ろをついていく。


屋上の中央に差し掛かったところで彼女が立ち止まり、振り向いて私を見据えた。

彼女の唇が小さく震えていて、震えが止まらないままで「由夏ぁ、っっう、ごめん、ね......」と謝られた。


「冷たい態度とって、ごめん。あのとき、急に......由夏──」

「私こそっっ、無理やっ、りぃっ......迫ってごめん。嫌がってるのに抑えられなくて......──くんが居ても、蛍のことがまだ諦められないよっっ!蛍と手を繋ぎたい、蛍を抱き締めたいし抱き締められたいっ!キスだってしたい──こんな私だけど、やっぱり無理......かなぁっ、ぁぁぁっ......」

抑えられなくった感情が──想いが溢れだし、のように想いの丈を喉が潰れるような声で彼女に伝えた。


「......由夏とはで居たい、その......恋人って、いうのは、やっぱり受け、入れられない......ごめん。由夏とは気が合うし、一緒にいて楽しいけど......愛されてるって感じる、けどっ。由夏のことが嫌いって言ってるんじゃなくて......ごめん。こんな私でも友達で居てくれるって言ってくれるなら──」

「友達で良いからぁぁっっ!今までみたいに隣で笑っててほしいぃっっ、頼ってほしい、頼りたいときに頷いて手を貸してほしいっ!好きな趣味を語りたいしっ、プールや海とかにも一緒に行きたいよぉーっ!そんな関係で良いからっっ!今までみたいに一緒に居てぇっっ、お願いっっ!蛍ぅぅぅーっ!」

涙や鼻水をたらしたぐちゃぐちゃの顔になりながら、彼女──宇佐美蛍に懇願した。

咳き込み、むせるほどの声をあげて、その場に泣き崩れた私。


私に駆け寄って、抱き締めながら、片手で背中を擦り、温かい言葉で慰めてくれる彼女。


肌に伝わる彼女の体温を感じながら、泣き続けた私だった。




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