EP2 鍵と潮

 海を望む小さな家に男女が一組。


「……私はもう死にかけだというのに、貴方はここに来て20年。私の方が若かったのに、私が先に老けてしまうなんて」


 床についた老女はそう呟く。


「貴方は一体何者だったの? もしよろしければ教えてくださる?」


「貴女はあと数分でその生涯を終え、その魂は月へと帰ります」


 青年は老女の問いかけには答えない。


「…………これを」


 代わりに青年が老女の手を握る。そこには鍵があった。


「………………貴方は」


「えぇ。ですからまたすぐに会えますよ」



 窓の向こうでは潮が引き始めていた。


 

 青年が鍵を天へと掲げると彼の背中から3対の翼が顕れ、純白のそれは急速に暗転する。


 少年はもはや翼に純白が欠片も残っていないことを確認すると、夜の闇へと飛び去っていった。






 月の支配者にして死を司る者。彼の名は─────────




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る