第19話相反する恋人の心
刹那に情報を流していた雷太はドルクスの予想通り、アゴノの下僕たちにとりおさえられていた。
「離せ!刹那に伝えなきゃいけないことがあるんだ。」
「ふーん、やはり気が変わったようだね。」
アゴノはやれやれな表情で雷太に歩みよった。
「やっぱり、まだ刹那のために尽くすつもりでいるんだな。」
「ああ、そうだよ!!ラブァー・モンスターを討伐する話だけど、刹那たちの計画だから話が変わった。協力することは撤回する。」
「そうか・・・、どうあっても刹那の味方なんだね。」
アゴノはそう言うと、スクリーンを出して何かを映し出した。
そこに映っていたのは、雷太と刹那がなかむつまじく野原にすわって景色をながめている光景だった。
「これは何かの幻か!!そんなもの見せたって、何の意味もないぞ!!」
雷太はあくまでもアゴノには屈しないつもりだが、アゴノは雷太に優しく説明した。
「これはお前と刹那がちゃんとした心を取り戻した時の未来だ、二人とも仲が良さそうでお似合いじゃないか。」
アゴノが言うと、雷太の顔が赤くなって何もアゴノに言えなくなった。
そして次にアゴノが見せたのは、刹那と雷太の黒く変わり果てた死体だった。しかも体がバラバラにされていて、どれがだれのどの部分なのかわからなくなってしまった。
「これはお前と刹那が変わることなく、今のままで突き進んだ結果の未来だ。あきらかに利用価値がなくなって、残酷に燃やされた状態になっている。」
「でも、一緒に死んでいるじゃないか、これだよ!これがおれの追い求めていたものだ」
「はあ・・・、それで一緒に死んだ後はどうするんだ?」
「死んだ後?そりゃ、ぼくと刹那がこの世のものではなくなるだかだよ。」
「それはそうだ、私が聞きたいのは死んだ後にお前と刹那に何かいいことがあるかということだ。」
「いいことなんてないよ・・・。」
雷太が低い声でつぶやいた。そして目に涙を浮かべると、泣きながら言った。
「死んだらいいことなんかないって、解っているんだよ!!でもおれと刹那は、生きていたときに幸せだと一度も感じたことがないんだよ!だから死ぬことを幸せと思って今日までがんばってきたんだ!だから、おれと刹那が死ぬのを邪魔しないでよ!」
「お前・・・、こうなったら解らせてやるしかない。死ぬことがどれだけ苦しいことか思い知らせてやる。」
そしてアゴノは雷太に暗示をかけたのだった・・・。
雷太の目に映ったのは、海中だった・・・。
深い海の底へと沈んでいく、そうすると体中に水圧がかかって苦しくなる。
「あがっ・・・ぐぐ・・・・ぐるじい!!」
そして水圧に耐えられず、全身の骨が破壊された。
だがおかしいところがあった・・・、これだけの激痛を受けているにも関わらず、自分自身は死んでいないのだ。
「これはどうなって・・・・、ゔあああああ!!」
そして断末魔の果てに雷太は海の底へと沈んでいった・・・。
かと思ったが、次に雷太の目の前に映ったのは炎だった。
「熱い!!熱い!!なんだここは!!」
炎が雷太の全身を包み込む。ここは葬儀場の焼却炉の中か、キャンプファイヤーの組み立てられた木の中か、はたまた火事になった家の中か・・・。
とにかく例えがいくらでもある状態だ。そしてこれが現世にある現象で、一番地獄を表現していた。
「全身が熱い!!熱くて苦しい・・・!!」
全身が炭になっていくのがわかる、そして雷太は炎に倒れたのだった。
かと思ったが、次は普通の部屋に雷太はいた。
「あれ・・・?さっきまで焼かれていたと思っていたのに、どうしてこんなところにいるんだ?」
そして目の前のテーブルには、雷太の大好物であるドーナツが置かれていた。
「美味そうだな、いただきます。」
雷太はドーナツを一つ食べた、すると激しい苦しみに襲われた。
「うぐっ・・・、何だこれは・・・どたにもぐうるじい・・・。」
おそらく食べたドーナツに強力な毒が含まれていた・・・、そうとしか考えられなかった。
「あががが・・・・。」
そして雷太は口から泡を出して倒れた。
そして雷太は悪夢から解放された、そして目の前にはアゴノがいた。
「あれ?おれは何を・・・、というより今までのは?」
「それは私の術で体感させた、死の恐怖だ。
水にしろ炎にしろ毒にしろ、死には激しい苦しみがつきものだ。そんな死に方を刹那と一緒にするというのか?」
雷太はアゴノに言われてうつむいた。
「楽に死ぬ方法は・・・、無いのですか?」
雷太は小声でアゴノに訊ねた、そしてアゴノはこう答えた。
「・・・ある。それは今を生き抜くことを重ねるのだ!」
「今を生き抜くことを重ねる・・・?」
「そうだ、死に急いでも構わないがその先には本当に幸せや楽はない。幸せや楽というのは生きてこそ実感するのだ。そしてそれを噛みしめながら、ゆっくりと生き絶える・・。これが私の知る楽な死に方というものだ。」
「生き続けるこそ、楽な死というものが存在する・・・。」
雷太の心の闇に一筋の閃光が走った、そしてそれは雷太の心を照らす大きな光になったのだ。
「もし今ここで、お前と刹那を一緒に殺してやると私が言ったら、どうするんだ?」
「それは・・・、止めてください。おれは刹那とまだまだ生きていたいです。」
雷太はアゴノに言った、そしてアゴノは満足そうに言った。
「よし、それでいい。それじゃあ、改めて私に協力してくれるか?」
アゴノは雷太に手を差しのべた、雷太はアゴノの手をつかんで握手をした。
ドルクスから与えられたダーク・パワーストームの力をとりこみ、ラブァー・モンスターは急激にパワーアップしていった。
そのため世界的に火山の噴火が加速、火山灰や溶岩や熱風による被害が多数報告されていた。
「よし、そろそろ頃合いだな。キラウエア火山へ行くぞ。」
ドルクスは刹那とシュウと一緒に拠点からキラウエア火山へと向かっていった。
そして現地へ到着すると、そこはすっかり様子が変わっていた。火山全体が溶岩で満ちていて、ふもとの木々や人の住んでいた家は全て消去されてしまった。それでも溶岩はなおも溢れ続けている。
「すごい!もうこれほどまでの力になっていたんだ!」
「うへぇ、こりゃ世界にの一つが終わったようだ。」
「これはいいぞ!これなら、遊撃隊に対抗できる!!」
そしてドルクスは火山の火口付近に近づいた、ラブァー・モンスターが顔を出した。
『来たか、ドルクス!お前が与えた力はすごいぞ、封印される前よりも力がみなぎっている!!これなら世界中を溶岩で満たすことも容易い、ハハハハハ!!』
「そうか、そうか。それはいい、これでこそおれが力を与えたかいがあるというものだ。だが、アースライゴンにはアゴノという強い味方がいる。やっつけないと、アースライゴンに勝つことができないぞ!」
『フン!!アゴノかだれだか知らないが、そんな奴はアースライゴンごと焼き払ってくれる!!』
ラブァー・モンスターは雄叫びを上げた、マグマが更に熱を増していく。
「これはまさに終焉の炎・・・!!これなら全ての人類を殺せる!そして私と来馬の理想が叶うわ・・・!!」
刹那は喜びに満ちた笑みを浮かべた、この時すでに来馬がアゴノの味方になっていたとは、刹那は思うことも無かった。
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