第17話生きたい
日本から飛行機で数時間、ハワイにあるキラウエア火山にやってきた刹那とドルクスたちは、火口へと降りて行った。数百から数千度もある灼熱のエリアだが、ドルクスの用意した防護服を着ているので大火傷をすることなく平然と歩くことができる。
「ねえ、そのラブァー・モンスターが封印されている『灼熱の紅玉』はどこにあるの?」
「この先の奥のほうだ、もっと先に行かないとたどりつけないぞ。」
「もう、歩き疲れたよ・・・」
「文句を言うなシュウ、歩くのがいやなら置いていくぞ。」
そして一行は奥へ奥へと進んでいき、そしてついに『灼熱の紅玉』がある場所へと到着した。
「これだ、これが『灼熱の紅玉』だ!』
「なんだかとても熱いっす、防護服を着ているのに!」
「ええ・・・、それにしてもすごくきれいだわ。」
それは鮮明な赤色でその中のには、マグマが血管のように細く枝分かれしたくだの中をながれこんでいた。
すでにこの付近はとんでもなく高い温度になっている。防護服がなければ即死してしまうのは確実だ。
「ねえ、ドルクス。これから灼熱の紅玉を一体どうするの?」
「このハンマーを使って砕く、このハンマーはあらゆる封印を解くことができる伝説のハンマーだ。」
そのハンマーは見た目がすごそうに見えるが、大きさは普段使っているハンマーと変わらない。
果たして灼熱の紅玉を破壊することはできるのか・・・?
「それじゃあ、行くぞ!!」
ドルクスは思いっきりハンマーを灼熱の紅玉に向かって叩きつけた。
すると灼熱の紅玉に大きなヒビが入って、それが全体に広がっていき、そして砕け散った。
「さあ、来るぞ!!」
砕け散った灼熱の紅玉からマグマが一気に噴き出した、刹那とドルクスたちは反射的に後ろに下がった。
そしてマグマは三メートルくらいの大きさはある人型の姿になった。
『ふわぁ~っ、やっと封印が解けたか・・・。ん?お前たちはだれだ?」
「おれはドルクス、そして刹那とシュウとドンマとフヌガだ。お前の封印を解いたのはおれだ。」
『そうか・・・、それにしてもこんなとこによく来れたな。お前はどうして私の封印を解いたんだ?』
「それはお前の持つ力が欲しいからだ。お前はマグマの力を持ち、さらにはマグマの中を移動して地球のありとあらゆる火山から姿を現すことができる。その業火の力でおれと暴れないか?」
『暴れるか・・・、封印されて幾年がたったせいでその言葉がうれしく思う。だがわたしには、アースライゴンに復讐しなければならない使命があるんだ。あやつめ、私を封印しおって・・・。』
「アースライゴンが憎いのか、それは丁度いい。私の宿敵はアースライゴンと深く関わっている。もしかしたら一緒にいるところに遭遇できる、おれの仲間になってくれるのならな。」
『あいつに会えるのか!?ウォー――ッ!!』
ラヴァー・モンスターが怒りで体を震わせると、辺りに地震が発生した。
「うわあ!!揺れる揺れる!!崩れちゃうわよ!!」
「気持ちはわかった、だが封印が解けたばかりでは力が弱い。今はここで力を蓄えるがいい。それとお前にこれをやろう。」
ドルクスはラヴァー・モンスターに黒い結晶の塊を渡した。
「これはダーク・パワー・ストームの結晶だ。これを取り込めば、お前はさらに強くなることができる。」
『おお・・・、ものすごい力を感じる。これなら、アースライゴンに勝つことができる!!』
「それじゃあおれたちは一度ここから出るが、近いうちにまた会いにくることを約束しよう。」
『ああ、私もだ。』
そしてドルクスと刹那とシュウたちは、ラヴァー・モンスターと別れた。
一方、雷太は長ケ之君の思いでの写真を撮るためにヒカリたちの作戦に協力していた。
今日は長ケ之くんの学校は休み、長ケ之くんには友だちに事前に声をかけておいて、遊撃隊と一緒に旅行に行くという内容で、名古屋駅に集合するように伝えておいた。
「おーい、長ケ之!!」
「あ、
「まさか遊撃隊と契約していたなんてすげえよ!!」
「そんな・・・、お母さんがしてくれただけだよ。」
「それで、連れてってくれるんだろ?ニコランドに。」
ニコランドは世界的に有名なブロック・ニコブロックのテーマパークである。
「うん、遊撃隊の力でね。」
「それじゃあ、早速レッツゴー!!」
そして三人はアゴノと雷太と一緒に、ニコランドへと向かって行った。
名古屋駅からニコランドへは電車で三十分、あおなみ線に乗って金城ふ頭駅へ向かいそこからは徒歩七分で到着できる。
「うわあ、ここがニコランド・・・!!」
「テレビで見た事あるけど、現地で見ると迫力があるな。」
三人は初めて来たニコランドに目を輝かせた。
そしてチケットを購入して入った三人は、思いっきりアトラクションを楽しんだ。
雷太も三人と一緒にニコランドで遊んだ、スパイという使命を一時忘れて。
「こんな楽しい気分になれたのは、いつ以来だっただろうか・・・」
雷太は自分の思いでのページを一枚ずつめくったが、思い出は見つからない。
そしていよいよ写真撮影の時が来た、アゴノが寛人と俱塩に何かを言っている。
「二人とも、知っていると思うが長ケ之くんは二人とは違う高校に行く。」
「うん、長ケ之からすでに聞いているよ。あいつ陸上得意だし、自分から高校推薦していたから。」
「そうか、でも彼は本心はずっと友だちでいたいと思っている。二人と離れることを嫌がっていたよ。だけど陸上も極めたい、彼はどっちを取るか迷っていた。」
「やっぱりな・・・、最近すごく暗かったし。」
「だから私は彼の心に踏ん切りをつけるために今回の旅行を計画した、その集大成に協力してくれないか?」
アゴノはその集大成について二人に説明し、二人はそれを受け入れた。
そしていよいよ写真撮影の時が来た、長ケ之は寛人と俱塩の間に並んでいる。
「よし、それじゃあ行くぞ~・・・はい、チーズ!」
アゴノが長ケ之のスマホを持って写真を撮った。
「長ケ之、この写真を見て見ろ。」
「どれどれ・・・、これって!!」
その写真を見た長ケ之はおどろいた、そこには「陸上、ガンバレ!!」と書かれた札を持った寛人と俱塩が映っていた。
「ふふふ、おどろいたか?アゴノに頼まれて、やったんだ。長ケ之、お前これからも陸上がんばれよ・・・。」
「寛人くん・・・。」
「落ち込んでいた時に声かけられなくてごめんな、だけどおれたちはずっとお前の友だちだ。」
「俱塩・・・、ありがとう。」
長ケ之は目から涙がにじみ出た、アゴノと雷太はそれを見守っていた。
そして長ケ之くんの依頼を終えてから一週間が過ぎたころ、雷太はアゴノに呼び出されアゴノの部屋にやってきた。
「雷太、いや来馬。そろそろ私の下僕にならないか?」
「は?何を言っているんだ?」
「私は今までお前の心を観察してきた、そして刹那とあんなことがしてみたいと心なしに思いだしたんじゃないか?それにお前のスパイとしての活動、最近おろそかになってきたんじゃないか?」
「うっ・・・。」
雷太は図星で何も言えなかった・・・、雷太は長ケ之くんの依頼を終えてから遊撃隊への価値観が少しずつ変わってきていたのだ。最初はただ自分たちを邪魔する部隊だと思っていたが、よくよく見て見ると人情的でいつも他の人のことを考え、最善の望みを叶えてあげているとても優しい印象を受けた。そう思うと敵対意識が狂いだし、スパイとしての役目がおろそかになっていた。
「お前の中で価値観が変わりつつあるのは確かだ、私は刹那を排除するつもりは無い。むしろ刹那は生かした方が価値があると信じている。」
「えっ?刹那の価値がわかるのか?」
「ああ、まともな思考なら殺すのがとても惜しくなる存在だ。しかもドルクスに利用されて、最悪なことになっている。何がなんでもまともに戻してあげないとな。」
「でも、刹那さんはまともな気で多くの人を殺して世界につくそうとしています。それを変えるのは難しいですよ。」
「でも刹那を変えないと、これから一緒にいられないぞ。お前はこれからも刹那と『生きたい』と思っているんじゃないか?」
雷太は本心をアゴノに言うべきか、意地でも言わないか迷っていた。
そんな時だった、空の上で雷が鳴り出した。
「うわあ!!雷だ!!今日は晴れるって天気予報で言っていたのに・・・。」
「・・・あの方が来たか。これは、ただ事じゃないぞ。」
そう言ってアゴノは秘密基地の屋上へと向かっていった。
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