第10話駆け引き
同じ日の少し前、東京都丸ノ内線丸ノ内駅。
そこにはシュウと秋谷が電車が来るのを待っていた。
「それにしても、ドルクスって本当に急に思いつくよね。東京だけじゃなくて静岡にも爆弾を仕掛けるなんて。」
「まあ、いつものことなんだけどね。」
するとシュウの表情が鋭くなった、視線が辺りを見回っている。
「どうしたのシュウ?」
「逃げるぞ、遊撃隊だ。」
「え!?見つかったの!!」
「しかも四人・・・、多勢に無勢だっつーの!!」
シュウは秋谷の手を引いてホームから出た。
するとシュウと秋谷の後ろからアマジャーとゴブリノが追いかけてきた、階段をのぼりながらシュウが拳銃でけん制する。
「シュウ!!そして刹那の仲間!!今日は逃がさないわよ!!」
「捕まるかよ、このへなちょこ部隊に!!」
「へなちょこ・・・、ずいぶんと言ってくれるじゃないか。」
すると階段の上からナイラとヒュミノがやって来たので、シュウと秋谷は階段の真ん中で挟み撃ちになってしまった。
「クソッ!!マジで最悪なんだけど・・・。」
「さあ、爆弾を渡して投降しなさい!!」
「ねえ、この爆弾であいつらを脅そうよ。遊撃隊はそう簡単に、他の者たちを巻き込めないはずだ」
秋谷がシュウに小声でつぶやいた、しかしシュウはその提案を拒否した。
「あいつらは爆弾でくたばるほどやわじゃない、いざとなったら突っ込んでくるような連中だからな。」
「それじゃあ、どうするのよ・・・」
「・・・一か八かあれをやるぞ・・・」
シュウは秋谷の耳に囁いた、上と下から敵がジリジリと迫ってくる。
「ダーク・ショック!!」
突然衝撃波が発生して、敵と周りの人たちは飛ばされないように地面に伏せたり、柱などに捕まりだした。
だが衝撃波の無いエリアが一本道に続いている、秋谷はそのエリアを走り出して遊撃隊から逃れるという作戦だったが・・・。
「キャッ!!ヘビー―――ッ!!」
「逃がさないよ!!」
ヒュミノがヘビを生やして秋谷の体を拘束した、ヒュドラとメドゥーサの子どもであるヒュミノの得意技である。
さらにそこへアマジャーが飛びかかって拘束した。
「ダメだったか!!助けるぞ!!」
「そうはいかないんだよな!!」
ナイラとゴブリノがシュウを攻撃した、間一髪でかわせたものの目の前に立ちはだかる。
秋谷を救助するにしても、四対一では分が悪すぎる。
ゴブリノはなんとかなるとして、ナイラはアリゲーターナイトの弟子であるが故にそれ相応の強さがある。できれば窮地の時には相手にしたくない。
シュウの答えはすぐに出た、シュウは秋谷を見捨てて一人逃走した。
「あっ、待て!!」
「捕まってたまるかよ!!」
シュウは全力で走り抜けて、ナイラとゴブリノをまくことができた。
「なんとか逃げきれた・・・、だけど秋谷を捕らえられたことについて、後でドルクスからガミガミ言われそうだ・・・。」
シュウは不発になった爆弾を見てつぶやいた。
そして戻ってきたシュウは、やはり爆破作戦に失敗したことと秋谷が遊撃隊に捕らえられたことについて、刹那たちから責められた。
「何しているのですか!!作戦が失敗しただけならいいけど、秋谷を助けずに逃げるなんてよくないわ!!」
「そうだ、そうだ!!見捨てるなんて、酷い!!」
しかしそんな中、ドルクスは刹那たちとは違うことを言った。
「シュウは爆弾を不発させたのは良くなかったけど、当然の決断をしたと言える。」
「当然の決断って・・・、秋谷を見捨てたというこということがか?」
「そうだ、作戦にアクシデントは付き物だ。そこから逃れるために、時としては仲間を犠牲にしないといけないのは当然のことだ。」
「でも、秋谷はやっぱり仲間だから・・・。」
「はぁ・・・・・、人を殺すことを目的としていながら仲間を大事にするとは・・、本当に甘いな。」
ドルクスの声が低くなり、氷点下の如く冷たい威圧感を放ちだした。
「なっ・・・、甘いってどういうことよ?」
「いいか?仲間というのは、駒であり道具だ。おれがシュウを利用し、シュウもまたおれを利用する。そこに情や優しさの入る余地はない、助け合うのは今後も利用するために互いに借りを作くるからだ。これは全ての組織に通じることである。」
刹那はドルクスの論理がよくわからなかった。
「意味が分からないわ、互いに利用するために協力するなんて・・・。」
「刹那、お前は自分の理想のために多くの仲間を利用している。そして仲間もまた、自分の居場所とやるべき事を得るために刹那を利用している。意味がわからない事はない、信頼とは利害関係が生み出すものにすぎない。」
刹那と仲間たちはドルクスに何も言い返せなかった、それはドルクスの言うことが今の自分達と当てはまっているからだ。
「わかった、もういいわ。」
刹那はシュウを責めるのを止めた。
「それじゃあ、私が提案した新たな作戦を教えよう。」
「え!もう作戦を考えたのか!?」
来馬はアゴノの顔をのぞきこんだ。
「これぞ、多くの人を殺しながらパニックを与える作戦・・・。『デストロイゴールタワー計画』だ。」
「デストロイゴールタワー計画・・・、どんな計画なの?」
「いくつかの建物を爆発させて、そのラストに東京スカイツリーを爆発させる計画だ。」
「東京スカイツリーだって・・・、そんなものを爆発させるなんて、いくら私たちでも不可能よ!!」
刹那はドルクスの計画が、自分たちのできる範囲を大幅に超えていると思った。
「おれたちの力なら、造作の無いことだ。刹那さんには計画に必要な人材の手配をしていただきたい。」
ドルクスは不敵な笑みを浮かべながら言った。
「ドルクス・・・、あなたは一体何なの?どうしてそんな計画が実行できる確信と力があるの?」
刹那はドルクスにたずねた、ドルクスは真実の断片を言った。
「おれとシュウたちは、未来人だ。そして宿敵のアゴノも、未来人だ。」
「未来人・・・?」
刹那と仲間たちは呆然とした、そしてドルクスはしゃべりだした。
「おれとシュウたちは、2400年の未来からアゴノを追うためにこの時代にやってきた。
2400年の未来では『ダーク・サイエンス』という崇高なる組織が絶対的な支配をしていて、多くの人々がその支配を受け入れてくらしていた。だが、一部の人々が『ダーク・サイエンス』の支配を拒み、レジスタンスをしたことで自分たちが平和に暮らせる国を作り上げた。それがアゴノの生まれた『創造平和研究所』という組織だ。やつらは平和を唱っていながら、我々に対してことごとく反抗する巨大な反社会的組織だ。おれはなんとしてでも、『創造平和研究所』を潰さなければならないと思っている。』
ドルクスはこぶしを握りしめた。
刹那たちは信じられないものを見た顔になった。
「じゃあ、あたしに教えた爆弾の技術も未来のものなの?」
「ああ、そうだ。」
珠美の問いにドルクスは答えた。
「じゃあ、東京スカイツリーを爆破するのも簡単ということか・・・。」
「当然だ、だがアゴノを倒すのはそう簡単にはいかない。アゴノはあらゆる手を使って、おれたちを退けてきた。だからアゴノを本気で相手にするなら、これまでの駆け引きでは全く通用しない。だから容赦のない駆け引きが必要なんだ。」
ドルクスの言葉には一語一句に力が入っていた、刹那たちはその迫力と覚悟につばを飲み込んだ。
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