第9話拡散する爆弾魔
午前七時十分、神奈川県の横須賀線にある横須賀駅。
ホームでは来馬と秋谷が、電車が来るのを待っていた。
来馬が缶コーヒーを飲んでいると、秋谷が喋り出した。
「ねえ、刹那さんとは最近どうなの?」
「な、なんだよ唐突に!!今はそんなこと話している場合じゃないだろ?」
来馬は秋谷から目をそらして缶コーヒーを飲んだ、来馬の顔はほんのり赤くなっていた。
「ふふ~ん、やっぱり好きなんだ。もしかして最後は二人で抱き合って、ガス毒で自殺したりして。」
「そんな死に方はしねえよ、死ぬなら苦しまずに一瞬で終わらせられたらいいな。」
「なるほどね、でも熱愛もほどほどにしたほうがいいわよ。いざ死ぬときに、心残りになって死ねなくなるわよ。」
秋谷の忠告を来馬は無視した、愛し合っているからこそ二人で死を受け入れられると来馬は思っているのだ。
「まあ、あたしたちは元々いろんな理由でこの社会から見捨てられた者たちだ。社会から受け入れられた者からすれば、ただのゴミと変わらないんだ。だからどうなろうと、誰とも関係ないんだよ。」
秋谷がつぶやくとアナウンスが流れた、そして電車がホームに停まった。
「行くぞ、秋谷。」
「はーい。」
来馬と秋谷は電車に乗りこむと、多くの人をかき分けて持ってきたカバンを網棚の上に置いた。
「こんなに人が乗っているのに、網棚って案外がら空きなんだね。」
通勤ラッシュ時、車内は芋を洗うという慣用句の通りの状態になっていたが、多くの人たちは荷物を自分で持っているので、網棚はほぼ意味が無い状態だ。
そして来馬と秋谷は次の駅に着くと、網棚にカバンを置いたまま電車から降りた。
「ふぅ・・・、通勤ラッシュはやっぱり辛いわね。」
「でもこれで、設置完了だ。」
そう、来馬と秋谷は爆弾を設置するために電車に乗りこんだのだ。
そして来馬は駅の公衆電話に「爆弾を仕掛けた」と連絡を入れた。
そして爆発事件が起きたのは、それから二分後のことだった・・・。
神奈川県鉄道同時爆弾テロ事件、この事件は新聞の号外・テレビのニュース速報・ネットニュースを通じて、日本全国の人々に巨大な衝撃を与えた。
小牧市某所にある秘密基地ではアゴノとテグー教授と下僕たちが集まって、今後のドルクスと刹那たちに対してどうしていくかを話し合った。
「さて、今後のドルクス討伐作戦について話合おう。」
「はい、彼は相変わらず刹那たちと接触して行動を共にしています。このままでは、神奈川県鉄道同時爆弾テロと同じことが起きてしまうでしょう。」
「しかも今回は鉄道だからね、建物と違って未然に防ぐこと自体がとても難しいよ。下僕を常時車内に乗せて見回らせるのも現実的ではないし・・・。」
教授が言った。
すると電話が鳴りだした、アゴノが受話器を取る。
「もしもし、野木さんですか?」
「やあ、アゴノ君。今、神奈川県で取材してきたところだよ。」
電話の声は
「そうか、それで取材はどうだった?」
「うん、一応の情報は集まったよ。教授と下僕たちもそこにいるでしょ?スピーカーフォンにしてよ、今から教えてあげるから。」
アゴノは電話をスピーカーフォンにした。
「今私は新横浜駅にいるけど、駅は多くの人たちで混雑していた。今も電車は動ごいていなくて、多くの人たちが影響を受けている。横浜線の電車で爆弾が仕掛けられたのは、二号車両の網棚の上だということがわかった。詳細は追って報告するけど、今はこれだけしか報告できない。」
「ありがとう、引き続きよろしくお願いします。」
「じゃあまたね。」
野木からの電話はここで切れた。
「現地はかなりまずいことになっていましたね・・・。」
「それよりも問題はこれ以上の爆弾テロを止めさせることだ、未然に防ぐことが難しいのなら、実力行使に出るしかない。」
「そうだ、そうだ!これ以上の犠牲者を出してはいけない!!」
デカンクラッシュが強く主張した。
すると教授が何か思い出したのか、パソコンを操作するとみんなに言った。
「そういえば、ネットでこんなもの見つけたんだけど。」
教授がパソコンの画面をアゴノと下僕たちに見せた。
「これは・・・、どうも団体の関連サイトのようだ。」
「刹那たちのことについて何かわからないかなと思っていたら、ここを見つけたんだ。見つけたときにパスワードがかかっていたから、特定の人じゃないと見れないようになっているんだ。こちらの方法で解除したから、閲覧できるようにした。」
「どうもこのサイトは刹那たちの組織に勧誘することを目的に作られたようだ、活動報告と予定もあるぞ。」
「どうやら次は東京をやるとある。それなら東京でやつらを止めてみせる。」
アゴノの目が鋭く光り、下僕たちと教授は真剣な表情になった。
そして午後七時二十分、刹那はみんなを集めて次の爆破作戦について作戦会議を開いた。
「次は東京の路線を爆発させる、予定候補は五つ、銀座線・日比谷線・丸の内線・武蔵野線・中央線。各路線に爆弾を仕掛けるのは一人ずつ、この作戦が上手くいけば二千人を殺すことができると推測されるわ。」
「ちよっといいか?」
ここでドルクスが手を上げた。
「何でしょうか、ドルクス?」
「せっかく爆弾がまだまだあるんだ、東京以外にも仕掛けようぜ。」
「仕掛けるのはいいとして、どこに仕掛けますか?」
「静岡県はどうだ?東京と同じで神奈川から近い。どの路線に仕掛けるかは、すでに決めてある。」
「どこに仕掛けるの?」
「遠州鉄道・静岡鉄道・東海道線、この三つにしぼった。仕掛けるのは、おれと来馬と松野とおれの仲間の三人、合計六人でやる。」
「なるほど・・・、でもどうして東京以外にも仕掛けようと思ったの?」
「それはその方がより広く活動していると、世間にアピールできるからだ。その方が遊撃隊もビックリするぜ。」
「確かにそうね、東京だけじゃ物足りないものね。」
そして会議の結果、東京と静岡の路線をそれぞれ爆破させることにしたのだった。
そして翌日、静岡県東海鉄道静岡駅。
ドルクスと来馬は爆弾の入ったカバンを持って、電車が来るのを待っていた。
「なあ、ドルクス。一ついいか?」
「なんだ?」
「昨日、静岡県の鉄道も爆破しようと提案してきたことだけど、何か隠してある理由とかないよな?」
来馬は疑りそうにドルクスの顔をのぞきこんだ。
ドルクスは静かに答えた。
「見つけたんだよ、あなたたちのホームページを。」
「ホームページってあれのことか?でもそれとどう関係があるんだ?」
来馬はさらに追求してきたが、ここでアナウンスが聞こえたので、舌打ちをして話を止めた。
そしてドルクスと来馬は電車に乗り込んで、昨日と同じように爆弾の入ったカバンを網棚の上に置いて、そして次の駅で電車から降りた。
「なあ、話を続けてもいいか?」
「ああ、あの話だな。実は組織のホームページを見たら、不正アクセスの痕跡を見つけたんだ。つまり何者かが、このホームページを見て我々を妨害してくる可能性がある。」
「それってまさか・・・・」
すると来馬のスマホが鳴った、来馬が出ると刹那の大きな声が聞こえた。
「東京丸ノ内線で、秋谷が遊撃隊に捕まった!」
来馬は驚きのあまり呆然としていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます