第8話大惨事の朝
各路線の電車を複数同時に爆発させ多くの人を爆殺する計画・「トレイン・ボム」。
この計画は爆弾作りのプロ・珠美とドルクスが中心になって、着実に進行していった。
刹那は計画を進めている珠美とドルクスの様子を見に来た、ところがそこにドルクスの姿はなく、珠美と見慣れない三人が爆弾作りの作業をしていた。
「あっ、刹那さん。どうしたの?」
「ちょっと様子を見に来ただけよ、それよりその三人は誰?」
「ああ、ドルクスが連れてきた爆弾作りのエキスパート。私の助手として制作を手伝っているんだ。ほら、刹那さんにあいさつしな。」
三人は作業を止めて刹那にあいさつすると、すぐに作業を再開した。
「今五十個ほど制作したから、すぐにでもどこかの路線を爆破できるよ。」
「もうそこまで進んでいるとは・・・、それでドルクスはどこなの?」
「ああ、別に考えている計画があるからその準備をしているって。」
「ええっ!!また私に隠して何かしようとしているの~、なんか怖い・・。」
刹那はデスペラード・ダークフリーデンでパラリンピック選考会会場を爆破しようとしていたことをドルクスが隠していた事実を知ってから、ドルクスに対してすさまじい危機感を持つようになった。
自分もいつかドルクスの作戦に利用されて死んでしまう・・・、元々自分が死ぬことは望んでいたが、理想通りに死ねないのはいやだ。
「まあ、刹那が不安になるのもわかるよ。ドルクスってさ、どこかつかみどこがなくて食えない奴って感じがするからね。何かこういう人が、一番陰謀が得意なんだよ。でも仕事はかなりできると思うよ、大量に爆弾の材料と頼りになる助手を三人も用意してくれたから。それに私の知らない爆弾の作り方も教えてくれたし、一応は仲間になって良かったと思っているよ。」
珠美は刹那の気持ちを読み取って、自分の意見を言った。
「うん・・・そうだね。」
刹那はとりあえず納得して、ドルクスを受け入れることにした。
そしてお昼時になって刹那がお昼ごはんを食べていると、同じくお昼ごはんを食べているドルクスを見つけた。
珠美をサポートをした後に自分の計画をしようとしているドルクスが気になってしょうがない刹那は、ドルクスに何をしていたのか直接たずねることにした。
「ねえ、ドルクス。ちょっといい?」
「ん?どうしたんだ、刹那?」
「あなた、珠美のことかなりサポートしたそうじゃない。」
「ああ、おれなりにできることをしたまでだが、どこか足りないのか?」
「そうじゃないの、その後あなたは一人で何かしようとしていたでしょ?一体何をしようとしているの?」
「まだ準備中だけど、内容を知りたいか?」
「うん、どんなのか知りたい。」
刹那は真面目な顔で言った、ドルクスは静かにため息をついた。
「この『トレイン・ボム』と同時進行でやることがある、それはアゴノのことについてだ。あいつらどうもお前の親戚に頼まれてお前を追っているようだ、そこでこれ以上邪魔させないように、策を考えている。」
「それなら私に考えがあるんだけど・・。」
「ん?刹那、何か考えがあるのか?」
ドルクスが刹那の顔をのぞきこんだ。
「私の筆記で手紙を書いて、アゴノに依頼した者のところに送るの。そこであいつらを指定した場所へ誘き寄せて、一網打尽にしてしまうのよ。」
「手紙か・・・。なるほど、面白いことを考えるな。」
ドルクスは刹那の作戦をやってみる気になった。
するとドルクスのところに、シュウくんがやってきた。
「ドルクス、あいつらが偵察に来たよ!!」
「なんですって、偵察!?」
「ほう、やはり来たか。それでどうした?」
「すぐに追い返せたけど、ここを特定されたみたいです。」
「ふん、気にすることはない。あいつらなら、すぐにわかって当然のことだ。」
「でも、それならまたここに来るということじゃない?」
「それなら、迎撃すればいい。シュウ、翌日から防衛を開始するぞ。」
「はい、わかりました。」
そしてシュウは去っていった。
「それよりも、刹那が提案した作戦をやるぞ。手紙を書いてくれ。」
「うん、わかったわ。」
そして刹那は手紙を書き始めた。
翌日、愛知県小牧市某所にある秘密基地。
そこに一本の電話がかかってきた、電話を受けたアゴノは卓也からこんな話を聞いた。
「ライフから手紙がきたんだ、私と一緒に会いにきてほしい。」
アゴノは電話を切ると、下僕であるボーとガーを連れて卓也の家へと向かっていった。
「すいません、手紙を聞いたと知ってうかがいに来ました。」
「ありがとう、あがってくれ。」
リビングに通されたアゴノとボーとガー、そして卓也はアゴノに封筒を渡した。
「この手紙は、今朝家の郵便受けに入っていたんだ。住所を見たら、ここからすぐ近い所に住んでいることがわかったんだ。」
封筒には消印と切手があったが、アゴノは封筒を見て違和感を感じた。
「とにかく、手紙を読んでみよう。」
アゴノは封筒を開けて手紙を読んだ。
{卓也さん、多彩さん。こんにちわ、義馬ライフです。今まで心配をかけて、本当にごめんなさい。私はあれからある家族に拾われて、高校を卒業するまでに育ててもらいました。そして外出中にあなた達の姿をよく見かけるようになりました、あなたたちが私の親戚だと知ったのはつい最近で、まさかこんな近くにいたなんて思いませんでした。電話番号を記しておきますので、ご連絡待っています。二人に会えることを、心よりお待ちしています。}
手紙の差出人の名前の上の方に、連絡先が書かれていた。
そしてアゴノが手紙を読み終えると、多彩が言った。
「私はすぐにライフに会いたい・・・、どうかその一部始終に立ち会ってください。」
「そしてライフのことを、どうか私たちと暮らせるように説得してください。」
卓也と多彩はアゴノに頭を下げた、ところアゴノは卓也と多彩に冷酷な口調で言った。
「残念ながら、会いに行かない方がいい。」
「なぜです!?」
「そうだよ、アゴノ様!会わせてあげようよ!」
拓也とボーはアゴノに言った、アゴノは冷静に言った。
「この封筒に書かれた住所はこの家の住所と同じ、それほど近くに住んでいて顔を何度も見ているのに、なぜこの手紙を渡してきたのか?・・・それは、この手紙が拓也と多彩を誘い出すエサだからだ。」
「エサ・・・、てことはライフの目的は一体何なの?」
「いや、この罠をしかけたのはライフではなく、・・・ドルクスだ。」
「ドルクス・・・、一体何者なんだ?」
拓也がたずねると、アゴノに代わってボーとガーが答えた。
「それは凶悪で非情な、アゴノ様の宿敵なのです。」
「彼は目的のためなら、人の命や倫理観すら切り捨てる、生きる悪魔のような男です。」
呆然とする拓也と多彩、拓也はアゴノにたずねた。
「この二人が言っているのは本当か?」
「もちろんです、この手紙がドルクスの罠と仮定したとき、目的はあなたたちの排除です。ドルクスはこの関係にすでに気づいていて、拓也と多彩を殺すことで私がドルクスに近づく大義名分を失くそうとしているのです。」
「だが、そのドルクスはなぜ刹那と関わっているんだ?」
再び拓也がアゴノにたずねた。
「彼は闇を持つ人に関わるのを好む傾向がある、おそらく刹那の心の闇につけこんだのでしょう。私から忠告します、今ライフには会わない方がいい。」
アゴノは二人に言った、しかし身震いする拓也と多彩はアゴノに言った。
「アゴノさん・・・身勝手を言って申し訳ない、私と多彩はそれでもライフに会いたいのです。どうか会わせてください!!」
「お願いします、私たちを引き止めないでください。」
土下座して懇願する二人に、アゴノは優しい顔になって言った。
「わかりました、そこまで言うのなら私はもう言いません。ですが、私からの忠告をどうか胸に刻んでください。」
そしてアゴノはボーとガーを連れて、秘密基地へと帰っていった。
そして翌日、アゴノが基地の中で仕事をしていると、ヒカリが新聞を持ってあわただしくやってきた。
「アゴノ様!この号外を読んでください!」
アゴノはヒカリから新聞を受け取ると、その記事に驚き目が釘付けになった。
『今朝、横浜線・小田急江ノ島線など四つの路線で同時爆弾テロ発生。犠牲者は千人を超え、神奈川の鉄道は大混乱、大惨事の通勤ラッシュとなった』
アゴノは悔しく顔を歪ませてつぶやいた。
「おのれ、ドルクス・・・」
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