第4話障害と卑屈
神奈川駅に集まった刹那たちは、タクシーに乗って鎌倉へと向かっていった。
「このタクシーは、信が予約したのか?」
ドルクスが刹那に聞いた。
「そうだよ、昨日の電話でタクシーを頼んでおいたんだ。さらに会社も私たちのために使ってもいいって言っているんだ。」
「かなり手を入れ込んでいるなあ、ありがたい話だけどな。」
そしてタクシーは横浜駅から約一時間かけて、信の会社に到着した。
十五階建てのビル全てが会社で、両手両足の無い人間がここまで成り上がれないほどの金持ちになっているようだ。
刹那の顔パスで会社の中へ入っていき、エレベーターで十階にある社長室へと向かっていった。
「刹那です、例の計画についておうかがいに来ました。」
刹那がドアをノックすると、「どうぞ」という声がした。
刹那たちが入ると、そこには車椅子に乗った両手両足の無い男・
秘書である男に車椅子を押してもらっている信の姿があった。
「刹那、よく来てくれたね。さあ、計画について話し合おう。」
「その前に計画に協力してくれる仲間を紹介するね。」
刹那は信にみんなを紹介した。
「そして新入りのドルクスよ、よろしくね。」
「ドルクスです。信社長、今日からよろしくお願いします。」
「はあ・・・、かなり変わった姿をしているね。特にその頭のアゴ・・・。」
「ああ、自分はサイボーグなもんでね。」
「サイボーグ!?これ、本物なの?」
信はまじまじとドルクスを見つめた。
「ええ、前回の作戦中にかなりまずいアクシデントが起こったけど、彼のおかげで助かったわ。それに、私たちをつけねらうものたちが現れたのよ。」
「何!?それは一体どういう奴らだ?」
「それがアゴ刃遊撃隊という組織で、私たちを妨害して捕まえにくるのよ。それに組織の力も強くて、私たちでは何もできなかったわ・・・。」
「そんな奴らが・・・。ということは、今回の爆破作戦も妨害されるかもしれんなあ。」
「そこは大丈夫、このドルクスくんが何とかしてくれるわよ。」
「任せてください、信社長。」
「うん、頼りにしているよ。それでは作戦の会議を始めよう。それじゃあ、地下一階へ。」
そして信と刹那たちは、階段で会社の地下一階へと降りていった。
そこは会社のトップシークレットで、地下一階の存在を知っているのは社長と秘書だけである。
そこはあらゆる機械を開発できる道具やコンピューターなどの器具がそろっていて、まさに研究室だった。
「私はここでいろんな機械やプログラムを発明してきた、たとえ両手両足の無いこの私でもね。」
「すげえ、本格的だぜ。」
「それじゃあ、改めて作戦会議を始めましょう。」
そして刹那たちと信は、パラリンピック選手選考会爆破計画について綿密な作戦を立てていったのだった。
その日の午後8時、この日は信の会社で泊まることにした。そして社長室で信がプログラムの点検をしていると、ドアをノックする音がした。
「誰ですか?」
「ドルクスです、入ってもいいですか?」
「どうぞ」と信が言うと、ドルクスが入ってきた。
そして信に近づいて話し出した。
「失礼しするぜ。それにしてもパラリンピック選考会を潰すとは・・・、あなたはパラリンピックに、かなりの恨みがあるようで。」
ドルクスはなれなれしい感じで信に近づいた、すると信は真顔で答えた。
「それはちがう、私はパラリンピックが実に愚かなことだと思っているんだ。」
「ふーん、面白いね。どうしてパラリンピックが愚かだと思うんだい?」
ドルクスがたずねると、信は自分の過去を話し出した。
「私は生まれた時から他人には当たり前にある両手両足がなかった・・・、そのせいで子ども時代は『壊れた人形』というあだ名で呼ばれていた。だから私は誰とも関わらず、将来の夢も持てなかった。この会社の社長になってからまだ三年しか経っていない、私は今までの人生の中で暗い時代がほとんどだった。そうしているうちに、他人に対して自分がとても劣っていると思い込み、それが強い嫉妬と憤怒に変わっていった。そんな私は特にパラリンピックの選手が許せなかった・・・、彼は障害を背負いながらもそれと向き合って努力する姿がきれいに見えている。だがそれは愚かなことだ、常人よりも生きるハンデを背負っているにも関わらず、あえて常人でも厳しい挑戦をしようなどと愚行の極みである。だからパラリンピックの選考会を潰すことにより、障害者たちに現実を思い知らせてやるのだ。」
ドルクスは信の言葉の一字一句に、卑屈な気持ちが込められているのを感じた。
だがドルクスはこういう気持ちには、だれよりも共感できた。
「わかるよ、その気持ち。信は誰よりも酷い障害を背負っている、それなのにパラリンピックの選手どもは信よりはマシながらも障害を背負っているのに、あんたとは違って自分にない希望を持っている。すごく許せないよな?絶望に突き落としたくなるよな?」
「ああ、本当にそうだよ。」
「そんな信にいいものをあげるよ。」
そう言ってドルクスは信に、紫色のたまご型の何かを手渡した。
「これは一体・・・?」
「それはドラゴン型ロボットシステムスーツ・デスペラード・ダークフリーデンだ。」
「デスペラード・ダークフリーデン・・・?」
「だがこれにはまだ動作のプログラムができていない、それは信さんに任せようと思う。つまりこれは、あんたのプログラム次第で強くすることができるんだ。どうですか、これが欲しくありませんか?」
ドルクスは信に強い視線を向けた。
そして信はデスペラード・ダークフリーデンに、自分の得意な技術で自分をとても強く補う力があると思い、デスペラード・ダークフリーデンが欲しくなった。
「それを、私にくれないか?」
「くれないか?そんな頼みかたじゃ、あげることはできないなあ。これは強力だけどそれに伴うリスクもある、最悪の場合はどうなるか・・・。それでも欲しいなら、本気で受け取る気にならないと。」
「そうか・・・、じゃあそれを私にください!この通りだ!!」
信は頭を下げて強くお願いした。
「いいだろう、ではお前の顔を認証させてもらう。」
ドルクスはデスペラード・ダークフリーデンを信の顔に向けた、するとデスペラード・ダークフリーデンは信の顔を認証した。
「これでもうお前のものだ、好きにプログラムするといい。後一つ言うことがある、このデスペラード・ダークフリーデンのことは誰にも言うなよ。」
「どうしてですか?」
「これは計画で使う最終兵器だ、秘密にしておいたほうがいい。」
そしてドルクスは社長室を後にした、信はそれからデスペラード・ダークフリーデンのプログラミングを始めた。
同じ頃、愛知県小牧市の某所にある遊撃隊の秘密基地。
アゴノのところに、一組の男女がやってきていた。
男は
ライフが放火した直後、ライフを引き取った両親とその息子は無事だったが、その両親がかつてライフをネグレクトしていたことが警察の捜査でわかり、急きょライフはべつの親戚に引き取られることになったが、その時に失踪してしまったので警察に捜索を頼んだが見つからず、遊撃隊にライフの捜索を依頼したのだ。
そして今夜、アゴノは拓也と多彩にライフの現状を報告するのだった。
「落ちついて聞いてください。今回、義馬ライフを発見しました。」
「本当ですか!?」
拓也と多彩は、アゴノの顔をまじまじと見つめた。
「ですが彼女は
「そんなバカな!!」
「ウソではありません、彼女は仲間を引き連れて各地で爆発テロを引き起こそうとしています。このまま野放しにすれば、多大な死者と被害がでてしまいます。」
「そんな・・・、どうしてこんなことに?」
多彩は頭を抱えて困惑した。
「もしや、あいつらからのネグレクトで心を病んでしまったのかもしれない。アゴノ、どうかライフにこれ以上の罪をさせないで欲しい。」
拓也はアゴノに懇願した。
「わかりました、あなたの気持ちに私は同情します。」
アゴノは拓也は握手して、これからのがんばりを誓った。
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