第3話私の闇に味方する者
ドルクスが鋭くもどこか印象的な視線を向けるその先にいたのは、アゴノというドルクスによく似たサイボーグだった。
ただよくわかるちがいはある。頭のクワガタのアゴが、ヒラタクワガタではなくノコギリクワガタのように茶色くギザギザしていた。
ドルクスとアゴノは互いに目を合わせながらしゃべりだした。
「ドルクス、お前がどうしてここにいる?」
「ふっ、ぼくはこの一刀刹那さんに興味があってね。そういう君も同じクチか?」
「私はただ人が無差別に殺されるのを、あらかじめ阻止しにきただけだ。そのためにも、義馬ライフをとらえなくてはならない。」
「ふーん、相変わらずの偽善者だね。君が守ろうとしている人たちの中には、どうしようもないクズな人もいるというのに・・・。そういう人たちを排除している刹那さんの方が立派だよ。」
「・・・つまらんな、そういう考え方。」
「御託はここまで、それはそうと刹那の仲間を捕らえにいったデカンクラッシュとヒカリが、しくじったそうだよ。おれの仲間によってな。」
ドルクスは静かに笑いながら言った、アゴノは何か言おうとしたが少し黙り込んだ後、ドルクスに言った。
「どうやらその通りのようだ、撤収するとしよう。だか、最後に義馬ライフに伝えておく。」
アゴノは鋭い視線を刹那に向けた。刹那はその眼差しに顔をひきつらせた。
『本当はすぐにでも討伐したいところだけど、私は君を生かすように命じられた。だから私は君を追いかけ、そして惨殺を阻止する。それが定めなのだからな。』
「待って!どうして、私の本名知っているの?どうして邪魔をするの!?」
しかしアゴノはライフの質問を無視して、グリムディーンとアリゲーターナイトに撤収を命じた。
「仕方ねえ、またの楽しみにするか。」
「承知しました。ワイバーン、行くぞ」
そしてアゴノとグリムディーンとワイバーンに乗ったアリゲーターナイトは、その場から去っていった。
そしてドルクスと一緒にいた刹那と松野と珠美の三人は、それからドルクスの仲間が手引きしてくれたことで、来馬と矢沢と秋谷と合流することができた。
来馬たちを手引きしてくれたのは、シュウという少年だった。
「それにしても君たちには、本当に助けられたわ。ありがとう。」
「なあに、どうということはないっすよ!なあ、ドルクスさん。」
軽い気持ちで言うシュウに、ドルクスはため息をついた。
「それで、どうして爆弾が爆発しなかったんだろう?」
「うーん、ちゃんと爆発するかテストは何度もしたんだけどね・・・。」
珠美は首をかしげた。
「やっぱり予想通りだったな・・・。」
「予想通りってどういうこと?」
「遊撃隊はお前たちを監視して、爆弾のことを『木の山』に報告していたんだ。」
「うそでしょ!?どこかで見られていたというの?」
「ああ、そのようだ。そして前日の内に、木の山の施設の人全員を外へとに避難させて、当日に施設の人に化けて爆弾を受け取って処理したというシナリオだ。」
「なるほど・・・、上手くやってくれましたということね。」
珠美は憎々し気な顔をした。
「それで来馬たちはどうやって逃げてきたんだ?」
「あの時、トラ男みたいなやつと天使みたいなやつが現れておそわれたんだけどな、そこにこのシュウくんが仲間と一緒に助けに来てくれたおかげで助かった。」
「デカンクラッシュとヒカリか・・・、追い払うの大変だったろ?」
「はい、本当に大変だったよ・・・。」
シュウはとても眠そうに言った。
「とにかく、おれたちを助けてくれてありがとな。だけどこのことは、絶対に誰にも言ってはダメだ。もし話たら、二人には消えてもらうからな。」
来馬はドルクスとシュウに、鋭い視線を向けた。
「その必要はない、なぜなら私は君たちの仲間になるのだからな。」
「はあ!?おれたちの仲間になるというのか?」
「ああ、あんたらの思想には共感している。それにアゴノら遊撃隊は、再びあんたらの前に現れる。そうなった時に対抗できるのは、このおれだけだ。」
ドルクスは頼りになることを見せつける顔になった。
刹那はドルクスの目を見た、瞳の中にモヤモヤした濃霧のような闇が満ちていた。しかもドルクスはそれが全身からあふれるオーラからも感じられ、刹那は思わずゾゾと体が震えた。
「確かに君の言う通りだね、私もアゴノはとてもおそろしい驚異になると思ったわ。わかった、あなたを仲間に迎え入れるわ。」
「いいのか、刹那?」
「いいのよ、あの人の目・・・。私にとても似ているわ。」
そして刹那は、ドルクスが自分以上にすごい人だと一目置くようになった。
それから刹那はある場所に電話をした後、仲間たちに言った。
「みんな、もうあの空き家には戻れなくなってしまった。だからまたホテル生活になるのでよろしくたのむ。」
「まあ、いいよ。空き家ってタダだけど、いろいろ不便だからね。」
秋谷が言った。
「それで、
「ついにやる時がきましたか・・・。」
「ふーん、パラリンピック選考会を爆発させるのか・・・。面白いじゃないか!その計画、全力でサポートしてもらうよ。」
「それで今回は、各々宿泊して午前十時に、神奈川駅に集合。いいわね?」
刹那はみんなに言うと、みんなはうなずいた。
そしてそれぞれの宿泊先を目指して別行動になった。
「それじゃあ、刹那。おれたちも行こうか。」
来馬が刹那に向かって言った、刹那は顔をあからめてうなずいた。
刹那と来馬は出会ってから互いに心をよせあって、今は互いに恋人としてつきあっている。
二人がつきあっていることは仲間全員が黙認しており、そして二人は静かに相思相愛だったのだ。
そして刹那と来馬はともに泊まる場所を探しに歩いていった。
「なあ、刹那。おれたちの目的が最後の時を迎えた時の約束を覚えている?」
「ええ、もちろん・・・。互いに愛を告白して、二人で死ぬことよね。」
「そうだ。ところで、刹那は死んだら生まれ変わりたいと思っているか?」
「生まれ変わる?アハハ、そんなわけないわよ!!生きていてもいいことなんて何もないんだから、むしろ死んだ方が幸せに決まっているわ。」
「そうだよな、おれも刹那と同じように暗い人生歩んできたし、あー早く死にたいっつーの。」
「そうだけど、その前にみんなを殺して幸せにしてあげようよ。」
「そうだな、おれたちは意味のあることをしているからな。」
そして二人は夜の街へと消えていった。
そして翌日の午前九時四十分、刹那と来馬が神奈川駅に行くとすでに珠美とドルクスが待っていた。
「お、ドルクス!もう来ていたのか・・・。」
「ああ、誰よりも早く来たぞ。」
「そうよ、五分前に私が来たけどすでにドルクスがいたわ。」
珠美が言った。
「そっか、それじゃあみんなが来るまで何か話そうよ。」
刹那が言うとドルクスが手を上げて言った。
「それじゃあ、信とは何者なのか教えてくれよ。おれはどんなやつなのかよく知らないからな。」
「信さんね、彼は障がい者なの。しかも重い障がいでね、生まれつき両手両足がないのよ。だけどエンジニアの才能があって、特にこの計画には人一倍協力してくれるんだ。」
「ふーん、なるほどなあ。でもさあ、両手両足がないのに、どうやってエンジニアの仕事してるんだ?」
「まあ、企画を立てることくらいしかできないけどね。だけど彼は自分で会社を持っていて、社長をしているんだよ。」
「ふーん、それなりに人望はあるんだ。」
ドルクスはふーんと言った。
そして話しているうちに残りのメンバーが集合したので、刹那はみんなを引き連れて改札口へと向かった。
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