第2話遊撃隊参上

刹那たち六人は、老人ホーム『木の山』を爆破する作戦を決行した。

時刻は午前十一時になったころだ、刹那のスマホに現地にいる来馬から電話がかかった。

『こちら来馬、今木の山に荷物を全て入れたところだ。』

「OK、爆弾はちゃんと中に入れたよね?」

『ああ、ちゃんと入れたよ。あいつら何の疑いもせずに受け取ったからな。』

今回『木の山』を爆破する爆弾は、炊飯器を改造したものだ。見た目は炊飯器だが、中は爆弾の作りになっている。

『木の山』には「いらない家電製品を譲りたい」という話をつけてある、そして爆弾になった炊飯器を送りつけて、遠隔操作で爆弾を爆破させるのだ。

「それじゃあ、早速爆発といきますか。」

『ああ、愚かな人類に天誅を』

最後に来馬が言ったのは、刹那が考えた合言葉である。

通話を切った刹那は、今度は秋谷に電話を入れた。

「もしもし、来馬から準備完了の連絡が来たわ。映像映して。」

「了解しました。」

そして刹那のパソコンに『木の山』の映像が映し出された。これから『木の山』が爆発する映像を、リアルタイムで動画に撮影するところだ。

「ああ、これでまた人間がいなくなって、この世界がまた少しよくなるわ・・・。」

刹那は教会でやるように祈った。

午前十一時十一分、それが爆弾を爆発させる時間だ。

「爆発まで、残り三分・・・。待ち遠しいわね。」

刹那はこの爆発で多くの人を殺すことで、世の中を良くしているという狂った思考の元で酔いしれていた。

そして爆発まで一分を切った、時計の秒針・デジタル時計の秒数が一秒ずつ進んでいる。

そして十秒前、九・八・七・六・五・四・三・二・一・ドカーン・・・・、となるはずだった。

ところが、『木の山』は崩れ落ちることなく平然と建っている。

「あれ?ちょっと、崩れてないけど・・・。」

刹那は信じられなくて、慌てて来馬に電話をかけた。

「もしもし!!爆発していないけど、どうなっているの!?」

『いや、それが遠隔操作も反応しないんだよ・・・。もしかして、設計にミスがあったんじゃないのか?』

「珠美さんの爆弾にミスなんて・・・」

すると来馬のスマホから、大きな音がした。

「どうしたの来馬!?」

『何かが襲ってきたんだ!!何だ、このトラみたいなやつは・・・うわぁーーっ!』

来馬のスマホは急に切れた、すると刹那のすぐ近くからも大きな音が聞こえた。

「刹那さん、ここから逃げましょう!!」

松野は突然ドアを開けて、刹那に言った。

「え!?ここにも敵が!!」

するとドスドスと大きな足音が聞こえた、松野は刹那を後ろへ回して腰にさした刀を抜いた。

そして刹那と松野の前に、RPGゲームから出てきたかのようなゴブリンとオークが現れた。

「さあ、追い詰めたぞ義馬ライフ」

「大人しくするんだよ!!」

ゴブリンとオークは鎧を装着しており、明らかにこちらを攻撃しようとしている。

しかも刹那の本名まで知っている・・・、このモンスター二人は一体何者なんだ?

「刹那さま、この松野が必ずお助けいたします。」

「・・・どうする?おれたち悪者みたいだぜ。」

「仕方ないだろ、ボスの命令なんだから。」

ゴブリンとオークが二人だけでこそこそ話し合っている。

その隙をついて松野が刀を振りかざして突撃した、しかしそれに気づいたゴブリンが剣を振って松野の攻撃を押し返した。

「ぐあっ・・・」

「おっと危ない、それじゃあ捕獲と行こうか!」

ゴブリンとオークが刹那と松野を捕獲しようとした時だった、突然現れた一人の少年がゴブリンとオークを、手を出しただけで吹っ飛ばした。

その少年は背中から機械の腕が生えていて、頭にはヒラタクワガタの大きなアゴが生えていて、その瞳は闇に満ちていた。

「大丈夫かい?一刀刹那さん。」

「あ・・・、あなたは?」

「自己紹介は、こいつらを殺した後だ。」

吹っ飛ばしたゴブリンとオークが、戦闘態勢で歩いてきた。

「ドルクス・・・、こりや面倒なやつと会ってしまったな。」

「この力、ボスと同じくらい大きい。」

どうやらこの少年はドルクスというようだ、ドルクスはまるでスーパーマンのような素早く華麗な動きで、ゴブリンとオークを圧倒していた。

「グラビトン・スピン・キック!!」

ドルクスの攻撃がオークの腹にヒット、オークはかなりのダメージを受けて立ち上がれない。

「オーガス、大丈夫か!?」

「うぐぐ・・・」

「さて、とどめと行こう・・・」

ドルクスが攻撃をしようとしたが、ドルクスは何かの気配を感じた。

「おい、刹那。どうやら悪魔がやってくるようだ。そいつと一緒に離れろ。」

「えっ、悪魔・・・?」

すると刹那をめがけて黒い何かが襲いかかった、ドルクスは黒い何かの攻撃を防ぐとそのままはね飛ばした。

刹那と松野は何も言わずにその場から逃げていった。

「やはりお前か、グリムディーン。」

「よりによってお前が来るか、ドルクス。でもちょうどいい、バトル不足で退屈していたからな。」

グリムディーンは漆黒の剣を抜くと、狂気に満ちた笑みを浮かべた。

「戦う前に部下の心配はないのか?」

言われたグリムディーンは、ケガをしたオーガスに気づいた。

「チッ・・・・、ゴブリノ!オーガスを連れて離れろ、こいつはおれがぶっ倒す!」

「わかりました、隊長!!」

ゴブリノはオーガスを連れて撤収した。

「ふーん、アゴノくん無しでやるんだ。」

「ああ、おれはサシでの勝負が好みなんだよ。」

そしてドルクスとグリムディーンは、お互いに激しく戦った。









廃墟の裏口に逃げ出した刹那と松野は、珠美と合流して外へ逃げようとしたが、ここでさらなる敵にはばまれた。

「ここから先は通しませんよ。」

その敵の姿はまさにドラゴンナイトだが、頭がワニそのもので、スマートながらもしっかりとした体つきだった。

さらにそのとなりには、相棒と思われるワイバーンもいた。

「あんたたちは、一体何者なの!?」

刹那がドラゴンナイトにたずねた、すると彼はこう答えた。

「我々はアゴ刃遊撃隊、この世を遊び回り時に助ける部隊だ。」

刹那と松野と珠美は、訳がわからない顔をした。

「その遊撃隊は、どうしてあたしを狙うの?」

「それは自分自身が一番わかっているはずだ、義馬ライフ。」

「どういうこと?」

「お前はこれまでに、多くの人々を利用して欺き、そして殺してきた。そんな奴を野放しにしていたら、世の中がつまらなくなるとアゴノ様は言った。だからお前を捕まえに来たのだ。」

「アゴノ様・・・、それはあんたの親玉なの?」

「その先を知りたければ、大人しく捕まってくれないか?」

「それはイヤよ!私には、まだやらなくてはならない使命があるのよ!」

「人を多く殺すことか・・・、それならここで終わらせてくれる!」

ドラゴンナイトは剣を抜いて刹那たちに襲いかかった。

するとドルクスがドラゴンナイトの攻撃を防いだ。

「なっ・・・、ドルクス!?」

「ほう・・・、まさかアリゲーターナイトまで来ていたとは。ということは、もちろんあいつも・・・。」

そしてドルクスを追いかけてグリムディーンがやってきた。

「あ、アリゲーターナイト!!ドルクスはおれの相手だぞ!!」

「おい、今は刹那の捕獲が優先だろ!?」

しかしグリムディーンはかまわずドルクスに攻撃をしかけていった。

「ブラッディ・ソードワン!!」

「ダークネス・ウィップストレート!!」

ドルクスの闇の力に満ちたこぶしが、グリムディーンの胴体にめり込み、グリムディーンはそのままズドーンと落ちた。

「いいぞ、ドルクス!!」

刹那がドルクスを応援した時だった・・・。

『まさか、ドルクスが来ているとはなあ・・・。本当に予想外だな。』

「誰なの、この声は!?」

「来やがったな、・・・アゴノ」

「あっ、ボスだ。」

「アゴノ様!!」

声のする方には、ドルクスとよく似たサイボーグの姿があった。










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