本当の味方

読天文之

第1話私がライフを捨てた時

今日の太陽が昇った、それは今日という特別な日を祝福する光だった。

「さて、今日はいよいよ楽しい爆発の日。これで何人死ぬのか、楽しみだよ。」

十八歳の大人まで間もない少女は、カーテンを開けた朝日に笑みを浮かべた。

服を着替えてみんなを起こしに古い階段を降りていく、彼女がいるのは自分の家ではなく何年か前に空き家になった家だ。

「おーい、もう朝だよ。」

リビングと思われる部屋で雑魚寝していた、五人を起こした。

「もう、朝か・・・。」

「そうだよ、今日は老人ホーム『木の山』を爆破する日だよ。」

「そうだったね、準備は抜かり無くやっているよ。」

「よし、それじゃあ朝ごはんを食べたら始めるとしましょう。」

彼女に続くように五人は目覚めて、動き出した。

そもそもこの六人は同じ目的を持ち、彼女を中心に団結したチームである。リーダーの彼女の名は、一刀刹那いっとうせつな。黒いショートヘアーの可憐な少女だ。後の五人は松野太一まつのたいち来馬直己らいばなおき矢沢やざわオリオンの男三人と、秋谷里織あきやさおり珠美たまみカーリーの女二人だ。

それぞれ年齢は異なるが、これまで対立もなく刹那の下で仲良くやっている。

そしてこの六人の同じ目的というのは、

(全人類を滅ぼすこと)

というのである・・・。

ではどうしてこんなことをしているのか、それは刹那の唯一無二とも言える不運な境遇が関係している。

それは刹那が「義馬ライフ」という本名で呼ばれていたころにさかのぼる。















それはライフがまだ六歳のころのこと。

ライフは六歳まで、温かい心を持った両親の元で幸せに育てられた。

ライフはこの時が来るまで、この安らかな生活がずっと続くと思っていた。

だけどその両親は、燃え盛る炎によってうばわれてしまった。

連続放火魔によってライフの家は炎に包まれ、消防隊に救助されたライフは奇跡的に助かった。

しかし助けられたライフは、それを奇跡とは思わなかった。

ライフの心は両親を失った悲しい気持ちが、なみなみとたまっていたのだ。

両親を失ったライフは、父方の親戚の家に預けられたのだが・・・。

「おい!これは弟にゆずらなきゃダメだろ、一応あんたがお姉ちゃんなんだからね。」

「あんたねえ、テストの点がいいのはいいけど、そんなにいいなら弟の勉強相手をしなさい。お姉ちゃんなんだから、それくらい当然のことよ。」

このように預けられた親戚の家には四歳の息子がいたのだが、親戚は我が子ばかりを可愛がり、ライフのことをはっきりと邪魔者扱いしていた。

ライフは女の子らしい服もあまり着せてもらえず、食事もあまり与えられない、いわばネグレクト状態だった。

「どうして私はこうなったの?パパとママはどうしていなくなったの?私はどうして辛い気持ちでいるんだろう・・・?」

ライフは疑問と息苦しさで、心がつぶされそうになっていた。

そしてその心は闇を膨らませ、それはどんどん巨大になっていった。

そしてライフが八歳の頃、友だちがおらず弟とも遊べないライフが見出した遊びというのは・・・、生きものを殺すことだった。

最初は公園に行ってアリやダンゴムシを見つけて踏みつぶす程度だったが、やがてそれだけでは満足ができずさらに大きな生き物を殺したい気持ちになっていった。

そしてライフには丁度いい当てがあった、それは学校で飼っているウサギだった。

学校の用務員の人がウサギの飼育に詳しく、ウサギに与えていいエサと与えてはダメなエサを教えてもらっていた。

そして夏休み中のウサギ飼育担当を自分から引き受けた、そして家からお菓子をいくつか持ってきてはそれをウサギに与えた。そして与え始めてから三日後、一匹の白いウサギが死んだ。

「ハハハ・・・、アハハハ!死んだ・・・、ウサギが死んだ!!キャハハハ!!」

ライフはお菓子をもらったかのように喜んだ・・・、いや殺しに成功したことがライフにとってお菓子をもらうのと同じになっていた。

そしてライフは同じ要領で二匹目のウサギも殺したが、立て続けにウサギ二匹が死んだことに疑問を持った用務員の人がやんわりながらもライフに疑いを持った。

何とか疑いを解くことができたが、これ以上したらバレるとライフは直感した。

そうなると他の獲物を探さなくてはならない、そして幸運にも他の獲物はすぐに見つかった、それは家の周りにいるノラネコだった。

家の裏の路地に煮干しやサバの缶詰などのエサを置いてノラネコを集め、物陰からトンカチを持っておそいかかるという遊びを思いついた。

ハンティングのようなスリルと、トンカチをノラネコにぶつけられた時の快感が気持ちよかった。

ライフの育て親はライフに関心がないのが幸運で、ライフが煮干しやサバの缶詰をくすねていることにも気づかなかった。

だからライフは、このノラネコ殺しの遊びを続けることができた。

しかしノラネコはすばっしこいので、殺せる確率は低い。

ライフはこの遊びをすぐに止めて、もっとノラネコを確実に殺せる方法を模索した。

そしてライフは口の中にに入れさせるだけで相手を殺せる方法・・・、毒殺という方法を思いついた。

毒物として利用したのはトイレや食器の洗剤、サバの缶詰の中身をあらかじめつぶしておき、その中に洗剤を入れて混ぜ合わせた。

そしてそれを食べたノラネコはもだえ苦しんで死んでいった・・・。

「すぐに殺せた・・・。どうしてもっと早く気づかなかったんだろう、こんな簡単な方法があることに・・・。」

だがこの快楽も長くは続かなかった。

近所でノラネコが死んでいることに気が付いた住人が警察に通報し、捜査の結果としてライフがノラネコを殺していることがバレてしまったのだ。

ライフは両親から激しい怒りを買ってしまった・・・、怒られた気持ちはライフの憎悪の気持ちを大きくさせていった。

そして両親はライフがもう勝手なことをしないように、学校の日以外の時間は家から一歩も出させることはなかった・・・。

そしてライフは、両親に復讐するためにおそるべき計画を立てた。

そのためにライフは大人しく反省したそぶりをしながら、計画のために虎視眈々と動いていた。

そしてしばらく時が流れて、ついに計画を行う日が来た。ライフは必要なものが入ったリュックサックを背負って、ライターと缶ビールと新聞紙を用意した。

時刻は家族が寝静まった午前一時半、物音を立てないように動いて玄関のドアのカギを開けた。

そしてリビングにいって机の上に新聞紙を広げると、その上にビールをこぼした。

「よし・・・、後は火をつけるだけ。」

ライフはライターを取り出すと火を付けた。

そしてそのライターを、ビールの染みこんだ新聞紙の上に落とした。

ライターについた小さな火は燃え上がり天井まで火の柱が上った。

しかしライフはその姿を見ることはなく、すばやく玄関のドアを開けて外に出ると、ダッシュした。

これこそがライフの企てた計画・・・、憎い両親を殺して解放されるという目的で立てられたシナリオだった。

「これで、くそったれな二人とはおさらばだ!私が受けた苦しみを、全身で感じるがいいわ。」

それからライフはひたすら走っていった。

そして彼女は駅に行って電車に乗って、住んでいた町から去っていった。

駅から降りると当てもなく歩いていたところを警察に保護されて、それから児童養護施設に入ることになった。

そして彼女は自らの名前を一刀刹那に改名した。彼女のライフは十三歳にして、失われたのだった。








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