第101話 シュン、依頼を受ける

「えー!? シュンさん神様だったんですか、なんか人と違うなぁって思ってたんですよね」


「ミリアさん、人と違うってそんな……」


「あ、そういう意味じゃなくて。

なんていうか、いざというとき頼りになるところとか。

不意に見せる顔とかが他の人よりその……何言ってるんだろ私」


「シュンさん、ミリアさんはあなたのことがす……んぐっ」


 カリナさんが何かを言いかけると、ミリアさんは慌てふためいた様子で彼女を取り押さえた。


「まぁ、こっちの話はいいので続きどうぞ~」


 ミリアさん、もしかして俺のこと......なんて勘違いか。

単純に俺(シュン)の魔法が他の人と異質だからそういったのだろう。


「で、半神っていうのは本当なんですか}」


「あー、面倒くせぇ。この話を説明するには魔法の起源から言わないといけねんだったわ」


「魔法の起源? それって浮遊するマナを人間が取り込んだからじゃないんですか」


「それは違う。いいか、長いからよく聞けよ」


 それから、テッタさんはわかりやすく魔法の歴史を説明してくれた。

なんでも、俺たちの住むこの世界は更に上位に存在する世界によって創られたのだという。

それを仮に天界と名付けたテッタさんは、天界からこの世界に落とされた何かが魔法となったのだとか。

そして落とされた何かの近辺にいた人間たちは、後に優れた魔法を扱う勇者族と称された。

じゃあ半神とは勇者族のことではないのか?

と、疑問に思ったがあながち間違いでもないようだ。

落とされた何かの周囲100メートル以内にいたもの、つまり直接的にそれを浴びた人たち......それが半神と呼ばれるらしい。

半神は何かの影響力をもろに受けたせいで、魔法が6属性に発展していっても変わらなかった。


「でも仰々しい名称があったって、やっぱり凄くないよ。だって、バスターしか撃てないですよ?」


「まぁ、理解せずやっていたらそうだろうな。

さっきも言ったが、この世界には魔法だけではなく科学がある。

お前らが鉄の棒と呼びこれだって、鉄砲と呼ばれる武器を応用したものだ」


 鉄砲、ただの小さな炎弾が凄まじいスピードと威力に変化していた。

そうか、俺に足りないのはバスターに対する理解力なんだ。

言われてみるまで、理屈的にバスターのことを考えたことがなかった。


「テッタさん、俺ってもしかしてもっと強くなれる?」


「それは知らん、ていうか素材集めについてなんだが」


 あ、そうだった。

説明してもらうんじゃなく、お礼をするんだった。

これじゃ、説明してくれた分返すものが更に大きくなってしまう。


「で、何を持ってくればいいんですか? オークの骨とかですか?」


 テッタさんは奥の部屋から戻ってくると、地図を手渡した。

書かれているのはここより更に北西にぽつんと浮かぶ島だった。


「その島の中央にある湖の底に、バハムート呼ばれる海竜の鱗を取ってきて欲しいんだ」


「え、竜ってあの?」


「うん! カエサル王が自身の力の衰退を嘆いてあってな。補うために剣自体にパワーが必要なんだ」


「その海竜の鱗はそれほどの素材ということですか?」


「あぁ、なんたって半神だから」


「え? それってもしかしてとんでもなく強いんじゃ……」


「うん! 全盛期のカエサル王と同格ぐらいの力はある」


「無理ですよそんな竜を退治するなんて」


「退治じゃない、鱗を取るだけだ」


「ほぼ同じじゃないですか! むしろ、倒すより難しいかもしれないし」


「はぁ、お礼してくれるんじゃないのかシュン君や」


「え!? えぇ、そんな」


 1人でそんな化け物と戦って、鱗を取るなんて無理だ。

でも、このファンキーなお爺さんの実験台になるのも怖い。

どうしまものかぁ。

悩む俺の肩をポンと誰かが叩いた。


「シュンさん! 私たちもお供しますよ!」


「そうです! 微力ですがこのカリナ、お助けします」


「2人とも、なんでそんなやる気に満ち溢れてるのさ」


 竜ってだけでクソ強いのに、半神でもあるんだぞ?

それを理解できない2人ではないはずなのに。

2人はテッタさんの方へ視線を少し向けた後、俺を彼から遠ざけた。

2人に連れられ、彼から数メートル離れたところで立ち止まる。


「シュンさん、ここらへんにお顔持ってきてください」


 ミリアさんは部屋の角に俺を誘導し、顔を接近させた。

ほのかに漂う彼女の匂いが、若干気恥ずかしさを持たせる。


「いいですか、テッタさんは半日後にもう一度投薬が必要と言いましたよね?」


「え、うん」


「なので、それまでに機嫌を損ねたら投薬してもらえないかもしれません。て、カリナさんがさっき教えてくれました」


 そ、そうだったぁ。

お礼をしなきゃいけないけど、それ以上に彼の頼みをこれ以上断ったらダメだ。

俺を研究することができず、かなり落ち込んでいたのに鱗も取ってこないじゃなぁ。


「わかったよミリアさん、もう俺に選択肢はないんだね。とほほ」


 俺は運んできた時より朗らかな表情になったシュエリーを見た。

仕方ない、運んできた時の状況に比べたら断然マシなのだから。

後は俺が、頑張ればいいだけ。


「わかりました。テッタさん、俺たち3人でバハムートの鱗を入手してみせます!」

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