最終章 内乱勃発!
第91話 イヴァン、計画実行直前に差し掛かる
「馬鹿にしやがって!!!」
私は机の上の書類や本を全て押しのけた。
冷静じゃないのは理解している。
動揺し、イラつき、不安になっている。
「イヴァン様!」
部屋の扉を急いで開いた私の手下。
その者の襟元を掴み、せかすように言葉を吐かせた。
「手回しは出来たか!」
使者は唾を詰まらせたのか、少しむせながらも完了したことを報告した。
よし、協力する貴族たちによって罪を全てクロノスになすりつけることに成功したぞ。
危ないところであった。
カエサルの悪政を大義名分に、私が王になる!
その為には徹底して汚れてはいけない。
「それと、クロノス様がお呼びのようです」
仕方ない、言ってやるか。
計画の最終段階に奴は必要だからな。
◆◇◆◇◆
汚い所だなここは。
牢屋というが、牛舎や豚小屋と大差ない。
門番に賄賂を渡し、クロノスのいる格子へたどり着く。
「おい、生きてるか?」
「あん? あ……イヴァンこのやろう! お前のせいで死刑になっちまったじゃねぇか!」
「唾を飛ばしながら騒ぐな。落ち着け」
私は懐から取り出した酒の入った小樽を格子の中へ投げた。
それを不貞腐れながら受け取った彼は、先ほどよりは多少大人しくなる。
「ちぇっ! それで、計画はいつやるんだよ! まさか、俺を見殺しにするとか言い出さねぇよな?」
樽の蓋を口につけ、ぷはぁーと息を漏らした後そう口にした。
私はそんな彼に向かい、ニヤリと口角を上げた。
「安心しろ。計画の準備は完了した。後は決行日を定めるだけだ」
「いいねぇ。やっと本気で暴れられるって訳だ」
「あぁ、この国の王に相応しいのは誰か……国中に知らしめてやろう」
◆◇◆◇◆
牢屋を後にした私は、馬車に揺らされながら流れていく風景を眺めた。
ついにこの私が、王になれる。
あぁ、どんなに嬉しいことか。
ぼーっと、景色を見ていると湖に差し掛かった。
魚を捕らえた鳥が飛翔している場面に遭遇する。
ハハハ!
あの鳥は私だな。
カエサルという魚が飛び跳ねた所をうまく狙いおった。
……!?
しかし、鳥は魚を捕まえると飛行速度を落とした。
その隙を狙ったのか、大きな口を開いた巨大な魚が鳥を捕食した。
漁夫の利、というやつか。
うーむ。
私はそれが他人事に思えなかった。
カリナ含めた3人の不穏分子の存在。
金髪の女は始末したも同然として、カリナとシュンか。
いくら強いとはいえ、計画が実行されれば成す術もないはず。
だが、落ち着かない。
何か手はないものか。
あれらと対抗しても遜色ない実力を持つ者、そして利用できる弱みがある……!?
フハハ!
いるではないか、才のある勇者族のあいつが。
たしかあいつの隣にでかい女がいつもいたな。
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